無限シャンプー【後編】
「ポイントは、重力」
彼女は指を立てて言う。
「シャンプーは、液体だけど、かなり粘度がある。イメージしてみて」
ボトルの内部に思いを馳せる。
「ポンプの管の先端は、ボトルの底から少しだけ浮いていて、そこにあるシャンプー液を吸う。これが一回目のポンプ」
にゅっ。
彼女は実際に再現してみせた。
「そして、二回目のポンプ。このとき、ポンプの先に液体はない。なぜなら、先ほど吸い上げてしまって、空間があいているから」
しゅこ。
「ふむふむ?」
「以降はもう出てこない」
しゅこ、しゅこ。
「それで?」
「これが、一日経つとどうでしょう」
彼女は手のひらを逆さにして、シャンプー液が垂れる様を見せた。
「ボトルの内側には、液がまだ少し残っているのよ。ポンプの管の先に無いだけで、その周りには、かき集めれば数回分になるであろう量がまだ残っている」
液はゆっくりと糸を引き、コタツの天板に垂れた。
「一日という時間をかけて、ゆっくりと、管の先の空間へそれが満ちてくる」
彼女は指を一回転させた。
「そして翌日。ズボラな君がポンプを押すと、なんと一回分だけは出てくる、というワケ」
「な、なるほどぉ!」
「なんてことはないでしょう?だからこうやって、ボトルの底をドンと打ち付ければ、一日待たなくても、中身の液が衝撃で底に落ちてきて、また取り出せるというわけ」
しゅこ。
「あれ?」
「ほらね、無限ではないわ」