無限シャンプー【前編】
うだるような暑さだ。
まだ五月だというのに。
汗ばんだ身体をすっきり洗い流す。
温かいシャワーでも気持ちがいい。
とはいえ長居は無用。
ポンプ式のシャンプーに手を掛けた。
ーーにゅっ。
勢いよく2プッシュ目。
ーーしゅこっ。
それは随分とエアリーな音だった。
***
今日はやや寒い。
五月は気温差が激しく戸惑う。
そんな日でもシャワーで済ますワイ。
ものぐさレベルは黙っていてもどんどん上がる。
シャンプーに手を伸ばす。
ふいに思い出す。
しまった、昨日の時点でカラになったのだった。
ーーにゅっ。
……はて?
2プッシュ目。
ーーしゅこっ。
これは……。
なぜか一回分出てきた。
まあいいか。
今日のところは御の字だ。
***
いやあ、まさしくルンルン気分だ。
なぜなら彼女が遊びに来ている。
先にシャワー、浴びてくるよ。
相場は「浴びてこいよ」だが、時代は変わるのだ。
ルンルンすぎて独白も意味わからないが。
とりあえずシャンプー。
あ。
しまった。
また、替えるのを忘れていた。
今日はさすがに。
ーーにゅっ。
2プッシュ目。
ーーしゅこっ。
短髪が泡で満たされる。
無言でボトルをまじまじと見る。
何がどうなっている?
とりあえず、出たら謝ろう。
君の分のシャンプーは無いよと……。