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三題噺もどき3

リトライ

作者: 狐彪

三題噺もどき―ごひゃくよんじゅうろく。

 


 机に座り、ノートを開く。


 外は酷く雨が降っていて、雷までゴロゴロと言っている。さっきから近くに落ちたり遠くに落ちたりしている。停電にならないのが不思議なくらい。

 こういう時は頭が痛くなって、動くどころじゃなくなるんだけど、今日は不思議と何かの気力が沸いていた。どこにあったんだろうこんなものというくらいに、沸いていた。

「……」

 昨日あんなにだるくて動けなかったのに。

 おかげで写真をばらまいたままにしていたのを母に文句を言われた。その後もイライラとしている母のご機嫌取りをしながら、自分の機嫌も取ったりして何気に疲れた。こういう時に父がいればまだましになるんだが、仕事の都合で帰ってきていない。明後日ぐらいかな。まぁその父も割と気分に左右されるやつなので、頼りにはならない。

「……」

 それでも、朝起きてみればあっけらかんとしているんだから、単純というかなんというか。寝れば忘れると言うわけではなく、マシになるというか、冷静になると言うか。まぁ、気づいた瞬間にふつふつと思いだしはするが、当日よりは落ち着いている。怒りというのは長くは続かないのだ。疲れるし。

「……」

 それでまぁ、どうしてノートを開いたのかという感じだが。

 少し部屋の掃除というか、机の近くに置いてある三段ボックスの整理をしていたんだが。

 その中から、懐かしいものが出てきたもので。

「……」

 水色の背景に白クマのキャラクターが描かれた、B6サイズの罫線ノート。しおり代わりの細いリボンが挟まれていて、そのページを開くと、小さな字で細々と文字が綴られていた。

 それは、いわゆる三つのお題を使って物語を書くと言うやつで。

「……」

 いつからこれを書いていたのか記憶にないのだけど……この字の書き方といい小ささと言い、中学か高校の頃だろう。それから、気まぐれに書いたり書かなかったりで。大学生の頃はあまり記憶がない……あの頃はどちらかというと二次創作というのにはまっていた。それから社会人になって、そういうのをめっきりしなくなったのだけど。

「……」

 こうして、物語を書くのは案外好きだった。

 きっかけは小学校五年生の頃の国語の授業だった。

 教科書に並ぶ写真の中から一枚を選んで、その写真からイメージする物語を書いてみようと言うのがあったのだ。今でもその記憶は思いだせる。猫や桜やカマキリや川を渡る船の写真があったはずだ。授業で書いて、教師に提出してどんな評価をもらったかは記憶にないが、とにかく楽しくて面白かった。気づけば写真全部の物語を書いていたものだ。それだけとても楽しくて、面白くて、わくわくして、将来の夢を小説家なんていったりもした。まぁ、親に否定されて、おかげで路頭に迷うことになったが。それでもどこか諦めきれずにこんな風にノートに書き連ねたりしたんだろう。

 もしかしたら、元々読書が好きだったのも高じたのかもしれない。そのあたりの関連はよくわからない。

「……」

 その後に親の都合で転勤をして、六年生の時の教師にもそんな話をしたことがあった。そうしたら卒業前に一個だけ、書いて読んでもらったことがある。ありがたいことに感想までもらって、あの先生は元気だろうか。とてもいい先生だった。

「……」

 それから中学に上がって、周りの人間の影響を受けだして、二次創作というものにもはまっていって。自分の中で、シチュエーションを考えるのは苦手だったから、そういのを診断できるサイトみたいなものに頼り切ってはいたけど。

 そこが、何とも自分らしいと言うかなんというか。何か基盤になるものやお題というものがないと、書けないのだ。多分、いつまでたってもそれは治らない。

「……」

 しかしこう、眺めてみると。恥ずかしい気分になってくる。

 言葉の選び方が、若いと言うか、幼いと言うか……あの頃に比べればそれなりにひねくれてしまったからこんなきれいな言葉選びはしないという感覚になる。

 このノートに書いてるのは、三題噺というやつだろう。好きで読んでいたライトノベルの中に、そういうのをしているシリーズがあるのだ。それをまねて、自分なりに書いている。まぁルールも多分無視しているので、真似事もいいところだが。

「……」

 文字数とかそんなものも気にしていないんだろう。筆をもって、シャープペンシルをもって、ちまちまと、1ページ分に収まるように書いてある。よくこんな小さな字で書いてたな……というか、この頃の方が字がきれいな気がする。今多分、もっと汚い。

「……」

 なんだか恥ずかしくる反面、いま書いたらどんなものになるんだろうと考えもする。

 きっと全く違う雰囲気のモノになるんだろう。

 こんな、やわやわとした軽いものとか書けない気がする。だからといって、重苦しいものになるのかというと、それ一辺倒でもないんだろう。だからそこはお題によってという感じなんだろう。案外同じ物語ができるかもしれない。

「……」

 ちょうど掃除の切りもいいし、やってみよう。

 とりあえずは、このノートのあまりのページがあるからそこに書いてみよう。

 最初に書いたもののお題はなんだったかな。

「……」

『筆・言葉・コーラ』

 ……コーラって飲んだことないから味の表現とかできないんだが。

 お菓子のコーラ味とかで良いか?













 お題:コーラ・言葉・筆

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