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198 帝国軍の蛮行

 帝国士官から情報を搾り取り、その後に再び死んでもらった。後味の悪い結果となってしまったが、今ここで感傷に浸っている時間がもったいない。


「お次は反乱軍とやらの兵士から事情を聞いてみたいが……」


 周囲を見渡すも…………蘇生可能な死体が見当たらない。


 先ほど復活させた男は外傷も少なく、死後経過の時間もギリギリの範囲内だったのだ。


「んー……この場で復活できそうなのは……帝国兵が数名くらいしか残っていないな」

「という事は、戦闘からそこそこ時間が経ってるのかしら?」


 佐瀬も俺の蘇生魔法に時間制限がある事は十分に把握している。それも遺体の状態が悪ければ悪いほど、復活のタイムリミットが早くなるのだ。


 確実な蘇生を望むのなら48時間以内……三日以上経つと……正直、かなり厳しい。


「争いが起こってから三日くらいは経ったって事?」

「そんなもんだろうな。あ、こっちもタイムオーバーだ」


 蘇生魔法を見せたくない藤堂と彼女を遠くに引き連れてくれていたケイヤ。その二人が戻って来る気配を俺の【捜索】スキルが捉えた。


 俺はすぐに変身を解き、矢野一心の姿へと戻る。



「お疲れさん。そっちはどうだった?」

「駄目だな。やはり生き残った者はいない。死体の状態から見て、二、三日は経過していそうだ。それにしても……帝国軍は味方の遺体も弔わないのか。これでは何人かがアンデッド化してしまうぞ」


 溜め息交じりのケイヤの発言に俺はギョッとした。


「げ! 野生のアンデッドかぁ……」


 俺が心底嫌そうな表情を浮かべると、藤堂が尋ねてきた。


「意外ですね。イッシン君はアンデッドが苦手なんですか?」

「うーん……まぁ、そうだなぁ……」


 メッセン古城ダンジョンで少しは耐性が付いたが、それでも好きか嫌いかと問われれば大嫌いだな。


「どうする? 全部火葬しておく?」

「……いや、今は時間が惜しいし、帝国式の埋葬法も分からん。火葬が正解とは限らないしな」


 ちなみにエイルーン王国は火葬式だそうだ。先ほど挙げたように、アンデッド化を防ぐ為にも大半の国が遺体を火葬してから骨を埋葬する方式をとっている。


 それでゾンビ化は防げるのだが、墓地には稀にスケルトンやウィル・オ・ウィスプなどの低級アンデッドが発生してしまうのだとか。


 だが、それでもゾンビの討伐難易度がDなのに対し、スケルトンやウィル・オ・ウィスプはEランクと弱いので、火葬をする価値は十分にあるのだ。



「そちらは何か情報を得られましたか?」


 藤堂が尋ねてきた。


「ああ、ある程度な。先ほどまで辛うじて生き残っていた帝国士官から最低限の話を聞けた。かなり重傷だったのか、すぐに死んでしまったがな」

「そうですか……」

「…………」


 藤堂は少し悲しげな表情を浮かべ、その背後にいるケイヤはすぐ横にある比較的真新しい灰と骨の方に視線を向けたまま無言を貫いていた。


 ケイヤには事前に蘇生魔法を使った尋問を行う旨を伝えてあるので、その帝国士官がどんな末路を辿ったのか、大方想像がついたのだろう。



 俺は二人にも情報を共有し、すぐにエアロカーで反乱軍と帝国軍の後を追う事を提案した。


「もうこの情報だけでも良いんじゃないの?」

「一応、この目で帝国軍を見ておきたいし、反乱軍サイドからも事情を聞いておきたい」


 そこまでしないと完全な情報とは言えないだろう。


「だが、ノコノコ我々が姿を見せれば戦争に巻き込まれないか?」

「巻き込まれるだろうな。だから、俺一人で反乱軍と接触するつもりだ」


 俺と佐瀬は反乱軍の首謀者と思われるワン・ユーハン一派に顔を見られている。


 正確には、俺だけはイッコちゃん姿しか晒していないが男状態での声だけは聞かれている。故に、ワン・ユーハンだけには、俺とイッコちゃんが同一人物であるという事を告げていた。


(今思うと、正体を明かしたのは軽率だったな。……まぁ、今更か)


 救出時、相手を混乱させないようにリーダーであるワン・ユーハンにだけは予め、変装状態である事を伝えていたのだ。


 あの時はまさか、”イッコちゃん”改め”聖女ノーヤ”が爆誕するとは夢にも思わなかったのだ。


 収容所への潜入や囚人の救出時には、こちらも帝国兵に姿を見られないよう【隠れ身の外套】や【変身マフラー】を使って極力対策を施していたから、帝国側も砦を襲った俺たちの存在は知らない筈。


 つまり、ワン・ユーハンだけが聖女ノーヤの正体に辿り着ける可能性があるのだ。


(ワン・ユーハンに会ったら……改めて口止めしておくか)


 もう彼の仲間に俺の正体を話してしまっているかもしれないが……それならばそれで仕方がない。別の対策を取るまでだ。




 エアロカーで西側へ逃げた反乱軍と、それを追う帝国軍の痕跡を追跡していく。すると道中で焼けた村の跡を発見した。


 すぐにエアロカーを着陸させて焼けた村を調査する。


「これは……!?」


 村の建物は全て焼かれ、あちこちに酷い状態の遺体が散乱していた。その殆どが武器を持っていない農民だと思われる。どうやら最近焼き討ちに遭ったようだ。


「まさか……村を略奪したのか!?」

「どうやらそのようだ。しかも、火まで放つとは……」


「「…………っ!」」


 あまりの光景に佐瀬と藤堂は絶句していた。


(これは……反乱軍の仕業か? それとも帝国軍が?)


 どちらにせよ、これから向かう先では面倒事が起きそうな予感がする。



 この村にある死体の状態はかなり酷い。女性は乱暴をされ、男たちも嬲り殺しにされた形跡がある。老若男女、見境が無い。とてもではないが蘇生は不可能だ。仮に可能だったとしても、誰彼構わずに蘇生するつもりはない。


 ここでの調査は早々に切り上げ、エアロカーを発進させた。


「……さっきの村、一体どういう理由で襲われたんでしょう?」


 暗い表情の藤堂に俺は自分の予測を答えた。


「恐らく物質の現地調達か……或いは、あの村も反乱軍の協力者と見做され、軍に焼かれたか…………まだ、憶測に過ぎないがな」

「そうですか……」


 まぁ、多分軍の仕業だと思う。


 あの村は徹底的に破壊されていたし、食料らしき物も一切見当たらなかった。帝国軍から逃げている反乱軍が、そんな事をしている時間的余裕はないだろうし、手際の良さから見ても、統率が取れている軍隊の仕業だと俺は思っている。


(口減らしで戦争を始めるような連中だ。村人の命も、畑でとれる野菜程度にしか思っていないのだろうが……!)


 全く、反吐が出る行いだ。



 しばらくエアロカーを飛ばしていると、似たような村々を三つも発見した。痕跡から察するに、どうやら軍は物資調達の為、わざわざ近隣の村に寄っては略奪行為を繰り返し、証拠隠滅なのかは知らないが、建物に火を放ってから先へ進んでいるようだ。


 それにしては事後処理も雑過ぎるが……


「いくらなんでも……こんな非道な真似をして軍は非難されないのか?」

「王国ならあり得ないな。第一、村はその土地を治める貴族の大事な収入源だ。それを襲うなど……軍を指揮する者の首が即刻飛んでもおかしくない所業だろう」


 ケイヤ曰く、エイルーン王国で同じ真似をすれば責任者の極刑は免れないらしい。


 と、なると……


(軍を率いている奴は帝国内でもかなり高位な存在なのか?)


 そうでもなければ、流石の帝国でも、そんな勝手はできまい。


 これは、いよいよ厄介事の臭いがしてきた…………






 エアロカーを飛ばして、着陸させてを繰り返し三時間後、ようやく帝国軍らしき集団を発見した。



「総勢、千人以上はいるな……」

「思ったよりも多いわね」


 日本製の望遠鏡越しに俺たちは上空から帝国軍の様子を窺っていた。


「ん? あの馬車……やけに豪華だな」


 馬が四頭も付いており、赤を基調とした車には金や銀色に輝く装飾が施されていた。以前に見たエイルーン王家専用馬車以上の派手さである。


 目の良いケイヤも上空からその馬車に気が付いたようだ。


「あの絢爛な装飾……もしや皇族でも乗っているのではないか?」

「え!?」

「前線に皇族が出ているのか!?」


 ケイヤの言葉に俺たちは耳を疑った。


「ああ。帝室はかなり人数が多いらしい。継承権のある皇子だけでも、12人はいるらしいからな。恐らく反乱軍討伐の功で箔を付ける為に、皇族の一人がわざわざ出向いてきたのだろう。あの馬車の周りにいる黒い騎士たちは皇族専用の近衛だな」

「へぇ……」

「ケイヤさん。お詳しいですね……」


 感心する佐瀬と藤堂。流石は元王国聖騎士の貴族令嬢だ。そこら辺の知識はとても助かる。


 しかし、それで少しだけ納得もした。


(皇族なら、領主の村を焼き討ちにしてもギリギリ咎められない……か?)


 俺の常識で当て嵌めるならば完全にアウトなのだが、ガラハド帝国の常識では、その限りではないのだろう。


「どうする? あれ、潰す?」


 うちの雷帝さまが物騒な事を言ってきた。


「いや、今は放置でいい。ただし、目の前で非道な行為をするようなら、その限りではないがな」


 今は反乱軍から話を聞くことを優先としよう。帝国内の暴挙を止めるのは依頼に含まれていない。


 だが、ケイヤの言葉が一変させた。


「…………どうやら、その非道な行為を今からするようだぞ?」

「「「え!?」」」


 俺たちは一斉にケイヤの見ている方角に視線を向けた。


 その先には……確かに村があった。望遠鏡で確認すると、その村には村民たちが普通に暮らしていた。子供たちも笑顔で走り回っている。


 どうやら、すぐ傍に自分たちに破滅をもたらす軍勢が迫っている事に、未だ気付いていない様子だ。


「なんてタイミングで……」


 俺は思わず天を仰いだ。


「ど、どうします!?」


 慌てて藤堂が尋ねてきた。


「うーん……」


 俺はもう一度望遠鏡で村とその周囲を注意深く観察する。


 すると、森の中にある小道を二騎の騎士が駆け抜けている姿を目撃した。村の方角から帝国軍へと向かっているようだ。


 恐らくその騎士たちは偵察だ。既に村の位置もあちらは掴んでいるに違いあるまい。その村に反乱軍などの脅威となる存在がいない事をチャックした騎士たちが本隊に報告しに戻っている……そんなところだろう。


 軍は間違いなく、ここでも物資の現地調達を行うつもりのようだ。


(皇族なら食料くらい自分たちで用意しておけよ!!)


 どうせ反乱軍相手に勝ち戦だと高を括っていたのだろう。いざ出陣したら、想定以上の反撃を受けて苦戦し、準備していた食料が尽きかけた……阿保だろうか?


 それを賄う為に村を略奪されたら、襲われた側は堪ったものではない。


「こりゃあ、間違いなく略奪が始まるな。仕方がない……介入するか」


 俺の言葉に三人は力強く頷いた。


「当然よ!」

「無論だ。帝国民といえども、放ってはおけない!」

「……覚悟はできてます!」


 藤堂の意気込みは買うが、相手は一国の軍隊。しかも、皇族までいるとなると、周囲の兵士たちも生半可な相手ではないだろう。


(俺たちの敵ではないだろうが……)


 まだ遠すぎて相手の正確な戦力が推し量れない。油断は禁物だ。


「俺は藤堂のサポートに入る。佐瀬とケイヤはペアで動いてくれ」

「「了解!」」

「すみません」

「当然の配慮だ。いちいち謝らなくていいぞ」


 いきなりきつい任務に付き合わせてしまい、むしろ申し訳なく思っている。


「藤堂は自分の身を守ることに集中してくれ。ある程度の怪我ならすぐに治すから、慌てずにな」

「はい!」

「佐瀬、ケイヤ。今回、鑑定持ちのシグネがいない。相手がかなり強そうだと思ったら、すぐに応援を呼ぶか、最悪エアロカーで撤退するぞ。すぐに連絡が取れるよう佐瀬は【テレパス】を発動させていてくれ」

「分かったわ!」

「心得た!」


 最低限の打ち合わせだけして、俺たちはエアロカーを軍と村の間に着陸させた。


『イッシンはその姿でいくの?』


 念話で佐瀬が俺にだけ尋ねてきた。


『……ああ。そうする』


 今回は帝国軍相手に派手に立ち回るからな。目撃者も相当多くなる。その場に聖女ノーヤ姿で現れると色々と問題になりそうだ。


 全滅させれば目撃者もいなくなるのだが……


(あんな真似をした連中、例え命令で仕方なくとはいえ、誰一人逃すつもりはないが……今回は首謀者の命で我慢しておくか)


 初参戦の藤堂がいるのに、いきなり大量虐殺はあり得ない。俺たちのモラルまで疑われてしまう。精々、二度とこんなふざけた真似ができないように追い返す程度の被害に留めるべきだ。


 何人かには死んでもらうがな。


「来たわよ」


 先頭を歩くのは安物の装備で身を固めた歩兵たちであった。


 どうやら村を襲う程度、騎士たちを駆り出すまでも無いと判断したのだろう。


「ん? なんだ? てめえ等は?」

「冒険者……か?」

「おいおい……村人しかいないんじゃなかったのか!?」


 明らかに武装して待ち構えているこちらの姿を見て、帝国兵たちは眉をひそめたが、佐瀬とケイヤ、藤堂の容姿を見た男たちは態度を変えた。


「へっへ! でも、かなりの上玉だぜ?」

「ああ。昨日の村では碌な女がいなかったからなぁ」

「こいつはツイてるぜ!」


「「「…………」」」


 佐瀬たち女性陣は帝国兵たちに氷点下の冷たい視線を向けた。


(あーあ。アンタら、ツイていなかったな)


 わざわざ虎の尾を踏まなくても……


「【ライトニング】!」


 初手から佐瀬は雷の最下級魔法【ライトニング】をぶちかました。


 ただの【ライトニング】ではない。今の佐瀬の【ライトニング】は、一発一発が中級並みの威力がある。更にそれを高速連射するのだ。


「ぎゃあああああああっ!?」

「ぐあっ!?」

「な、なんだぁ!?」


 貫通する【ライトニング】は最前列にいる歩兵だけでなく、その後ろにいる兵士たちもまとめて感電させていった。


 今の連射だけでかなりの歩兵が死んだだろう。


 そこへケイヤが突撃し、一歩遅れる形で藤堂も戦場に駆け出す。


「ハッ! セイッ!」


「ぐはっ!?」

「ひぎっ!?」


 ケイヤが剣を振るう度、帝国兵の首が次々と飛んでいく。いきなりの状況に相手は剣を抜くことすらできずに蹂躙されていった。


「ハァ!!」

「ぎゃああああっ!?」


 藤堂も覚悟を決めたという先ほどの宣言通り、帝国兵の首を跳ね飛ばしていた。


(思ったより容赦がない……相手の迂闊な発言で闘志に火を付けさせたか?)


 俺は藤堂の近くで帝国兵の相手をしながら彼女の戦う姿を観察していた。


 相手の命を奪うのに躊躇うかと思ったが、そんな事はなく、キッチリ相手にトドメを刺している。中途半端な攻撃は、自分だけでなく味方にも危険な行為を及ぼす事を、きっと藤堂は経験則で知っているのだ。


(そういえば、新日本国内のダンジョンでも、犯罪や揉め事が起きているんだったか)


 前にそんなネット記事を読んだ。


 ダンジョン内では正常性バイアスが働くのか、犯罪率が増加する傾向にあるらしい。まぁ、人目が無く、殺人モンスターが徘徊する場所なので、悪い事をしようと思えばいくらでもできるし、それは仕方が無い事なのだが……


 藤堂は元々、女性のみのクラン“月花”のリーダーを務めていた。話に聞くと、そこに所属する女性探索者の多くが、なんらかのトラブルに巻き込まれ、男性探索者と共に活動する事に嫌気がさして女性専用クランに移動してきたのだとか。


 藤堂自身はそんな事はないが、クラン内には男性を毛嫌いしているメンバーも少なからずいるらしい。今回、藤堂がクランを抜ける際にも、男性冒険者のパーティに入ると聞いた一部の女性メンバーが騒いだとか…………


(俺、もしかして女性ファンにも恨まれてる?)


 そんな馬鹿な事を考えながらも、俺は次々と帝国兵を倒していく。



 村を襲う為に向かっていた兵の半数以上を倒すと、後方にいた兵士たちは慌てて引き返していった。


「あ、逃げてきます。追いますか?」


 藤堂は追撃するかどうか、リーダーである俺の判断を仰いできた。


(思ったより冷静だな。これは逸材か?)


 普段は丁寧で奥ゆかしい性格なのに、戦闘ではスイッチが入るのか、藤堂は容赦なく確実に相手を無力化していた。そんなところは、どこか名波を彷彿とさせる。


「とりあえず、そのまま見逃して相手の本隊に合流させよう。あとは相手の出方次第だな。撤退するようなら、これ以上は手を出さない」


 まぁ、間違いなく再び侵攻してくるだろうがな。


 これで逃げ出すような可愛い性格なら、始めから村を焼き討ちしたりはしないだろう。




 不幸にも俺の予想は的中し、皇子(バカ)一行がやって来た。


 帝国軍を代表して黒い鎧に身を固めた騎士が単騎で前に出た。


「貴様ら、冒険者だな?」


 ケイヤが言うには、この黒騎士は皇族の近衛らしい。


「だったらなんだ?」


 こちらは俺が代表して応じた。


「帝国領内の冒険者は国が管理している。許可の無い活動は反逆行為と見做される。よもや知らぬとは言わさんぞ!」


 いや、知らんがな!


 というか、そもそも冒険者は国際的な機関であるギルドに所属しているので軍属ではない。各支部にはそれなりのルールがあり、その国の法律にも極力遵守するべきだろうが、村を襲ってくる賊を撃退するなと言われて「はい、分かりました」と頷けるわけがない。


「別に冒険者として活動していたわけではないな。村を襲った賊を善良な一市民として撃退したまでだ。だから謝礼は不要だぞ?」

「貴様……我々を愚弄する気か?」


 黒騎士が剣を抜いた。


 それに続き、背後にいる大勢の兵士たちも戦闘準備を開始した。


(……あの黒騎士たちは、複数相手だと少し藤堂の身に余るな)


 強さはまちまちだが、どいつもこいつも最低でB級冒険者レベルはありそうだ。中でも奥にいる一番強そうな騎士。奴だけはA級以上は確実か。


『佐瀬、ケイヤ。黒騎士たちは俺たちが相手する。藤堂は黒騎士を極力避けて、他の兵士への対応を頼む!』

『オーケー! 一番奥の奴には要注意ね!』

『うむ。あれは少しやりそうだ』


 【鑑定】スキルがなくても多少の力量を測るくらいの目は養っている。佐瀬とケイヤも奥の強い奴にだけ警戒しているようだ。


『すみません。足を引っ張って……』

『いや、十分戦力になっている。ただ、初っ端から厳しい相手なだけだ』


 パーティ初参加で、いきなり帝国軍と衝突だもんね。


 これは明日にでも「もうパーティ抜けます!」と言われても仕方がないレベルだ。いや、本当にすまん……!



 俺は襲い掛かる賊(帝国軍)を迎え撃つべく剣を抜いた。

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― 新着の感想 ―
高ランクで力あるからって 他国で賊まがいとはいえわざわざ出しゃばって軍属殺しまわるのはちょっと近代人としては蛮族すぎるんじゃ 無法とはいえ一応法的には向こうが合法なわけだし 冒険者としては受けた仕事真…
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