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高校生は今日も迷宮に向かう  作者: ハマ
2章

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『信じてたのにな』

『裏切ったな』

『何が現役JKだ、ババアが調子のんな』

『◯ッチタヒネ』

『男いんじゃん』

『騙しやがって、金返せ!』

etc


 昨日投稿したミロクの動画のコメント欄には、誹謗中傷、低評価が集まり、ついでにグロに関する警告文が運営から送られていた。


「うぐぅ〜〜」


 コメント欄に増えていく批判の嵐を、布団を被って見ないようにしたいが、連携しているスマホに通知が入って来てしまう。更にSNSもしており、そちらのアカウントも同様に炎上中だ。

 これまでコメント数なんて微々たるものだったのに、炎上した瞬間にありえないほど上昇している。


 最初はどうして炎上したのか分からなかったが、コメントを見てその原因に気が付いた。


 ミロク自身は、アイドルとして活動していたつもりはなかった。だが、応援していたリスナーは違った。

 現役JKミロをアイドルとして見ており、恋愛や男の影でさえも許してはくれなかったのだ。

 当然だが、ミロの部屋の登録者の9割は男性が占めている。現役JKとして売り出しているのだから、そういうのを目的に登録していたのだろう。

 おかげで登録者も一晩で千人も減ってしまった。


 テコ入れのつもりで始めた探索者活動が、完全に裏目に出た結果だった。


「にゅーー」


 唸りながらこれが夢でありますようにと願い、抱き枕を抱き締める。

 それでも現実は変わらない。

 スマホを見ないようにとしているが、どうしても手が伸びて通知を見てしまう。その度にスマホを放り出し、また取りに行くを繰り返している。


 そして、また手に取りその内容を確認してしまう。


「もぉーーー」


 誹謗中傷に目を背けたいが、どうしても目が走ってしまう。

 心が抉られる。

 これまで築き上げた物が瓦解していくのを見て、全てを投げ出してしまいたくなる。

 その気になれば、配信活動を辞めるのは簡単だ。

 顔出しはしていても、今のミロクとメイクしたJKミロを結び付けるのは難しいだろう。それくらい変化しているのは、自分でも理解している。


 それで、全て辞めてしまって、何事もなく普通の高校生として過ごしてしまおう。


 そうすれば、この悩みも解決だ。

 その後は、そのあとは……どうしよう……。


 その後を考えると、フワフワとしたよく分からない浮遊感を覚えてしまう。


 何も無い。やりたい事も、やれる事も、楽しい事も何も無い。

 配信を辞めたら、何をしたらいいのか分からなくなってしまう。


 また何も答えが出せずに、布団に包まり、抱き枕をぎゅっとして目を閉じる。

 すると、スマホが鳴る。それはこれまでの通知音とは違い、メッセージによる通知だったのだ。


「美野くん……大岩くんも」


 その内容はミロクを心配するものだった。

 アキヒロに続き、サトルからもメッセージが届き、大丈夫かとミロクを心配していた。

 更にカズヤからもメッセージが届き、それは心配ではなく命令に近いものだった。


『二時間後ギルドに集合、時間厳守』


 こっちの気も知らないでと思うが、ここでじっとしていても何も変わらないのは分かっている。このまま、炎上が終わるまで放置するのもありだが、それだと今後見向きされなくなってしまう。

 そういう配信者は大勢いた。炎上系というのも、その時だけ注目されて、後は廃れるだけだった。


 せめて、ああいう終わり方はしたくないなと願いながら、出掛ける準備を始めた。







「お、おお、格好の落差が激しいな」

「髪ボサボサ、結構追い込まれてるみたいだね」


「う〜」


 サトルとアキヒロがミロクの格好を見て引いている。

 今のミロクはベッドから出て、服を着替えてマスクをしただけの格好である。とても年頃の女子が、外出するときにする姿とは思えない。

 あそこまで悪意ある言葉を並べられたら、そうなるのも分からなくはないが、もう少しどうにかならなかったのかと思わないでもない。


「揃ったな、ギルドで部屋を借りている。そこに移動しよう」


 探索者協会の2階には、探索者が話し合いを行う場として、部屋が貸し出されている。三階には、30階を超えたプロの探索者のみが使える場所もあり、そこを使うのは探索者としてステータスでもある。


 カズヤの案内で入室した部屋には、長テーブルが二つ並べられており、テーブルを囲むように椅子が十脚設置されていた。壁にはホワイトボードが掛けられ、マーカーも用意されており、ご自由にお使い下さいという事なのだろう。


 それぞれが席に座り、ホワイトボードの前にマーカーを持ったカズヤが立つ。そして、JKミロ炎上対策と文字を書いた。めっちゃ字が汚かった。


「字ぃ汚な」

「なんとか読めるけど……」

「ミがシにしか見えない……」


「くっ! 俺の字はどうでもいい!今はミロク、お前の事だ!」


 字を指摘されて顔を真っ赤にするカズヤ。

 これでも、ミロクの事を心配して動いたのは理解出来るので、これ以上指摘するのはやめておいた。


「ミロクが炎上してしまったのは、俺にも責任の一端がある。もう少し、ミロクがどういう売り方をしているのか、見ておくべきだった」


「あの、私も、その、意識してなかったから……ごめんなさい」


 ミロクの配信スタイルは、そのときに人気になっているコンテンツを真似するという、ある意味怒られても仕方ないようなものだった。

 それで真似た対象が、アイドル売りをしていた事もあり、結果的にこの炎上に繋がってしまったのだ。


「いや、俺の配慮も足りなかった。後ろ姿とはいえ、サトルを映してしまったのは失敗だった」


「おい、まるで俺が悪いみたいな言い方止めろ!」


 これがアキヒロなら、映像映えして炎上しなかったかも知れない。いや、嫉妬に駆られたリスナーから殺害予告して来そうなので、サトルで良かったのだろう。


「それでどうするの? 炎上って下手な対応したら、更に酷い事になるって聞いたけど」


「正直、俺も対処法が分からん。だからこの場を設けた。とりあえず、今分かっている事を書き出していくから、そこから考えていこう」


 ホワイトボードにアイドル売りから、これまでの配信内容、リスナーの視聴目的、コメントの内容にリスナーの年齢層。いろいろと書き出していき、ネットに載っている炎上の対処法などもついでに書いていく。

 その字は相変わらず汚かったが、ギリギリ読めるレベルなので、誰も何も言わなかった。


「うっ……」

「どうかしたの?」

「字を見てたら気分が……」


 何も言わなくても、生理現象はどうしようもなかった。


「こんなもんだろう」


「なんと言うか……」

「思っていたよりも悪くないような……」

「あう」


 コメントで目立つのは誹謗中傷だが、数で見れば擁護するものと半々だった。低評価の数も高評価よりも少なく、炎上していると言う割には、悪くない結果だった。


「目立つ批判をしているのは、所謂ガチ恋勢という奴だろう。正直、男の背中が少し映ったくらいで騒ぐ奴は、探索者活動を投稿すれば直ぐに消えて行くと思う。理由は、どうやっても俺達の姿は映ることになるからだ」


「でも、今まで、応援してくれた人達だから、離れて欲しくない」


 消え入りそうな声だが、確かな意思で思いを伝える。


「ならば、取れる方法はひとつだ。探索者活動の投稿を辞めて、これまで通りの配信をする。これしかないだろう」


 探索者を辞めるのは簡単だ。

 始めたのも最近だし、それでリスナーが戻って来るならそれもありだ。だが、それだと前回と同じように、減っていくリスナーの数を日々眺めるだけに戻ってしまう。


 それは嫌だ。

 何もしないで、減っていくのを見るだけなのは、絶対に嫌だ。


「私は、探索者を、辞めたくない、です」


「当たり前だ。誰が辞めさせるか」


「え?」


「探索者活動の投稿を辞めるかと聞いたんだ。誰も探索者を辞めるかとは聞いていない、そして辞めさせるつもりもない」


 何を勘違いしているんだと鼻を鳴らすカズヤ。


 こいつはちょっと強引すぎやろしないだろうか?カズヤに対してそんな感想を抱きながら、唖然とする。

 横を見ると、驚いているのはミロクだけでなくアキヒロもサトルも同様だった。


「なあ、仮に俺達が探索者辞めたいって言ったらどうするんだ?」


「認めるわけないだろう。俺のパーティに入ったんだ、最後まで付き合ってもらうぞ」


「拒否権は?」


「ない!」


 キッパリと言い切った男に慄く三人。

 時代錯誤も甚だしい人権無視の言動。これが一般企業ならば、パワハラで即コンプライアンスに通報ものである。


「そんな横暴認められるか!」


「ふっ、何を言っている。これは横暴ではない、お前達の事を思って言っているんだ。これからの時代、探索者として身を立てなければ就職も出来ない、かも知れない」


「もしもの話しされても困るよ」


「それも違うぞアキヒロ。もしも、だから怖いんだ。後になって、あのとき俺に着いて行けば良かった、そうすれば就職出来たのに、なんて思う時が……」


「来ねーよ!? なんだよそれ!もっと、最もらしい理由があるかと思ったわ!」


「ふ、冗談だ」


 三人から本当かよ、と疑いの目を向けられる。

 カズヤは真面目な顔で言うので、何処までが本当で、何処からが冗談なのか分かりにくいのだ。


「本当の事を話すと、俺の目的に付き合って欲しい。30階を突破するまでで良い、力を貸してくれ、この通りだ」


 そう言って頭を下げるカズヤ。

 厨二病を発症しており、プライドが無駄に高くなっているカズヤが、頭を下げた事に一同は驚く。


「お、おう」

「大丈夫だよ、僕も辞めたりしないから」

「わ、私も、頑張ります!」


「そうか、よろしく頼む」


 頭を上げて、一度頷くと再びホワイトボードに向かった。


「じゃあ話を戻すぞ、ミロクの要望は探索者活動の投稿を辞めない、それでも多くの人に見て欲しいし、離れて欲しくない。これで合ってるな?」


「うん」


「はっきり言って、これを全て達成するのは不可能だ。今離れているのは、ゲームや歌の配信を楽しみにしているか、ガチ恋と呼ばれる奴らだ。そいつらを引き止めるのは、現実的じゃない」


「それでも……着いて来てほしい」


「そうか……お前達は、何か案はないか?」


 急に振られたアキヒロとサトルは互いに見合い、腕を組んで考え始めた。

 こいつら、何も考えてなかったな。

 そう察するが、特に何も言わない。一人が進行してずっと喋れば、思考が停止するのも理解できる。ましてや、二人はまだ高校生だ。そこまで期待するのは酷だろう。


「なんか今、バカにされた気がしたんだが」


「気のせいだ。それで、何かあるのか?」


「ひとつ聞きたいんだけど、僕達も顔出ししないといけないのかな? 余り目立ちたくないんだけど」


「それは無い。ミロクも顔出しに見せかけているだけで、日頃はこんなんだからな。それを踏まえると、一昨日の行動は軽率だったな、ミロを知っている奴と出会してしまった」


 しかも、同じ高校の先輩である。

 今は冬休みだから良いが、学校で出会したら気まずいを通り越して、校舎裏に呼び出されるかも知れない。

 探索者として警戒しているようなので、それはないと信じたいが、こればかりは保証がない。


「うーん、ミロミロとは学校では離れていた方が良さそうだな」


「その方が良いだろう。学校で特定されるとしたら、俺達からだろう」


「ご迷惑、おかけします」


 ぺこりとボサボサの頭を下げるミロク。

 気持ちフケが出ているような気がするが、気のせいだと思いたい。

 きっとミロクから出る、負のオーラか何かに違いない。


「やっぱり、謝罪ってするの?」


「何の謝罪だ?」


「よく炎上した配信者がやってるあれだよ、正装して頭下げるやつ」


「必要ない。そもそも、ミロクは何も悪いことしてないからな」


「でもさ、ミロミロは必要なくても、俺達は何かしらやるべきじゃないか」


「そうだな、サトルは動画に映り込んだのがきっかけだ、平身低頭謝ってこい」


「そうじゃねーよ! これからも活動すんなら、俺達が映り込むだろうが!その説明を先にしとこうっつってんだ!」


 サトルの話しを聞いて、カズヤはポンと手を叩いた。






 画面には、同じ衣装と同じ仮面を被った三人の男達が立っている。

 場所は洞窟の中なのだが、異様に明るく、見る人が見ればここがダンジョンだと気付くだろう。


 左からノッポ、普通、小太りの順番で並んでおり、まるでコントでも始まるのかのような異様な緊張感が漂っていた。


 その緊張感もなんのその、中央に立った普通の体型の男が前に出ると、説明を始めた。その声は仮面で篭っているが、はっきりと聞き取れるものだった。


「我らは、JKミロ親衛隊。私が隊員のM.、背の高いのがR、小太りがOである。今後、ミロが探索を行う際は我らも同行し、活躍を目にすると思う。その活躍が、面白いと思ったらチャンネル登録を頼む」


 一度言葉を切り、真っ直ぐカメラを見つめる。


「さて、今現在ミロが炎上している件だが、全くの杞憂だ。隊員のOが動画に映り込んでしまい、不快に思った者もいるだろう。その点に付いては謝罪する。しかし、ミロとOにはそういう関係はない。これだけ言えるから安心してほしい。そして、私やRにだってその可能性は欠片もないと断言しよう!」


 何故か最後が異様に熱が篭っており、心の奥底からの拒絶だと分かる。


「ならば、どうして親衛隊をやっているのかとお思いだろう。それは、ミロのスキルが有用だからだ。それ以上も以下でもない!」


「酷い」


 動画に少女の悲しそうな声が入るが、誰も気にした様子はない。


「これで分かってもらえたと思う。納得できなかったら、是非コメント欄に書き込んでほしい。しっかりと返答させていただく。ではJKミロ親衛隊のM「R」「O!」がお届けした」


 そこで動画が終わり画面が切り替わる。

 切り替わった画面には、ピンクの髪をハーフツインにしたJKミロが映っており、神妙な面持ちをしていた。


「こんばんは、JKミロです。今見てもらったのが、一緒に探索者活動してくれる親衛隊さんです。 ……今、ミロが炎上しているのは、みんな知ってるよね? まず経緯を説明すると、ミロが探索者活動を始めるのに最初にやったのが仲間集めなの。 その、ミロ、友達少ないからさ、一緒にやってくれる人いなかったんだよね。それでギルドで募集してないか、調べてもらったんだけど、配信を許可してくれる人がいなかったの」


 流れていくコメントに「そりゃそうだ」「じゃあ辞めりゃいいじゃん」の文字が目立つようになる。

 視聴者数は五百人と少し。これまでと変わらない人数だが、少しずつ増えていっている。


「うん、ミロも辞めようって思ったんだけどね。最近、探索者の動画が伸びてるの見てると、焦っちゃって……。そんなときに、親衛隊さんを見つけて、声を掛けさせてもらったんだ」


 ふんふんそれで?のコメントで相槌を打ってくれる人がいる一方で、「だからって男はないだろう」「ミロミロは何がしたいの?」などの疑問に思うコメントも流れる。

 そして、視聴者の数が千人を超えてから、一気に誹謗中傷が増えてしまう。


「本当に必死だったんだよ。うん、スキルを見て判断したのは本当だよ。ミロの事なんて1ミリも知らなかったし。 配信を許してくれた理由? うーん、それだけミロが魅力的だったとか? うそうそっ!?冗談! なんだかんだで優しいんだと思う。いろいろ怒られちゃうけど、親衛隊さんにもなってくれたし」


 コメントにはミロを心配するものから、探索者活動を辞めろというもの、それから「◯ッチが調子乗んな」「どうせ体で釣ったんだろ」「モンスターに◯されろ」などの誹謗中傷が書き込まれていた。


 汚いコメントを無視して、応援してくれる人達に必死に経緯を説明しようと心掛ける。


 あのとき話し合って、結局はミロクがリスナーと向き合い、説明して理解を求めるしかないという結論に至った。

 その為に、少しでも誤解が解けるようにと三人は協力してくれており、必要なら配信に出てくれるとまで言ってくれた。

 それは流石に悪いので断った。見に来てくれているリスナー達は、三人を見に来ているのではなく、JKミロを見に来ているからだ。

 きっと三人が出演すれば、火に油を注ぐことになるだろう。


「何のスキル? うーん、内緒。 知ってる?スキルって他人に言っちゃダメなんだよ。それが探索者のマナーなんだって。て、親衛隊さんが言ってた。 仲良いのって? 分かんない、まだ一週間も経ってないから……。 うん、大丈夫。別に気にしてない」


 質問に答えようとコメントを見るが、どうしても悪意あるコメントが目に入ってしまい言葉に詰まってしまう。

 ここまで、人は酷いことを吐けるんだと、恐怖すら覚える。


「恋人に発展するのかって? ないんじゃないかなぁ、これも聞いた話しだけど、同じパーティだと恋人にならないってジンクスがあるらしいから。 うん、そう、探索者が。 えっ?聞いたことないの? 結婚した人いる? 何かで読んだ事ある? 本当のこと? どっち!? どれが本当のこと!?」


 いろいろと情報が交差して、コメントが多く流れていく。

 同時視聴者数も千五百人を超えており、この人数はJKミロにとって最高記録でもある。


「うん、また確認してみるよ。…………うん、そうだね。 ……ごめん、ちょっとやばいかっも…………ミュートします」


 悪意あるコメントの中で、一人の投稿者の名前に目が止まってしまった。

 その人は、ミロクが活動を開始した初期から応援してくれた人で、登録者の大台に乗った時など、投げ銭でお祝いメッセージを送ってくれる人だった。

 別にお金なんて必要ないのだが、ずっと応援してくれる大切なリスナーだった。


『これまでミロミロ応援してたけど、こんな裏切り許せない。さようなら』


 あれだけ応援してくれていたのに、この短い文章だけで消えてしまう。所謂、覚めたというやつなのだろうが、実際にやられる側に立つと、心が折れそうになってしまう。


 画面から自分を隠して、顔をタオルで覆って涙を拭う。


 何が悪かったんだろう。

 探索者活動を始めたことだろうか。

 アイドルのような売り方をしたからだろうか。

 リスナーの気持ちを理解していなかった事だろうか。


「……辞めようかなぁ」


 何もかもが嫌になり、配信も探索者も全部捨ててしまおうかと考えてしまう。


 スマホにメッセージが届いているのが見えて、思わず手に取ってしまう。基本的に、配信中はスマホを触らないようにしているが、心の拠り所が欲しくて触ってしまった。


『頑張れ!みんなで応援してる!』

『ミロミロ!俺達が付いてるぞ!』

『何があっても味方になってやる。気にせずお前の好きにしろ』


「みんな〜」


 涙を拭い、画面を操作して顔をアップに映す。

 何が起こったのかとリスナーが驚くが、今はそんなこと気にしてられない。応援してくれている人がいるのだ、画面越しにも、リアルにも。その人達を無視して、アンチに屈する姿なんて見せていられない。


 だから、ここに宣言しよう。


 覚悟を決めたJKミロは、ミュートを解除して「今から大声出すね」と前置きして息を吸い込むと、自分の思いを叫んだ。


「ふざけんなあー!!ミロだって、応援してくれてるみんなの為に頑張ってるんだ! 楽しんでもらう為に頑張ってんだよー!! 探索者活動だって勇気出したんだ! 人と話すの苦手なのに、必死に頑張ってんだよ! おかげで二年ぶりに男子と会話したよ、緊張したし、吐きそうにもなって必死に頑張ってんだよこっちは! 恋人?◯ッチ? ミロは男子と手も繋いだことねーつーのっ!!」


 スーハースーハーと深呼吸して、心を落ち着けようとする。

 言いたい事は言えた。でも、まだ言い足りない。


「それと、今に見てろよ! ミロはその内、登録者百万人達成して、探索者でもプロになってやるからな!離れていったリスナー!古参アピール出来なくて、後悔しても知らねーからなぁ!!」


 はぁはぁと息を荒くして、呼吸を整えると頭を下げる。


「以上がミロの主張でした」


 そう締めると、アップにしていた顔を右端に寄せて、コメントを見れるようにする。

 そこには「急に大声で驚いた」「開き直ってんじゃねーよ」「だからなに?」といったコメントが流れているが、他にも多くの応援するメッセージが届いていた。


『ミロミロは頑張ってるよ』

『思いの丈が聞けて良かった』

『ここにいるのは、みんなミロミロの味方だから頑張って』

『カッコよかったよ』

 などの応援するコメントが続々と流れていき、閲覧者数もいつの間にか二千人に届いていた。


 フンスと鼻を鳴らしてスッキリした表情のミロクは、とても輝いて見えた。




 次の日、登録者数が九万人に到達した。

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