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高校生は今日も迷宮に向かう  作者: ハマ
2章

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「くそっ、何だよあのガキ共!舐めやがって!!」


「落ち着けって、あいつらはやめとけ。マジで探索者やってる奴はヤバいって先輩が言ってたぞ」


「なんだよ、びびってんのか?あんな一年に馬鹿にされたんだぞ!」


「そうじゃないってつってんだろうが!」


 場所は、ダンジョンからほど近い、アーケード街にあるカラオケ店。

 その一室に、高校生男女合わせて七名が集まっていた。

 彼らはアキヒロ達が通う高校の二年生であり、二ヶ月前から探索者同好会に加入して活動している。


 しかし、その探索者同好会の実態は、ダンジョンで楽して金を稼いで遊ぶという、何ともくだらないもので真面目に活動している訳ではない。

 ただ、誤算だったのは思っていたより人が集まった事だ。

 男子も女子も大勢集まり、今では五十名前後のメンバーが加入していた。それも、半数は高校とは関係ない者が占めているという始末だ。

 学校外で活動するという事もあり、その加入を制御出来なかった。少なくとも、立ち上げた者が強く拒否すればまだ良かったのだが、最初に受け入れてしまった以上、その後に続く者を拒否することが出来なくなってしまった。


 それが影響してか、同好会に加入していない者からヤリサーと呼ばれており、実際にそれを目的に加入した者もいた。


 そして、ここにいる男子達も、それが目的で加入した者達だった。


 彼らの予定では、ダンジョンで小銭を稼いで夜通し馬鹿をやり、女子達とヤルつもりだったのだ。それが、ダンジョンで出会ったカズヤ達のせいで気分が最悪になり、楽しむことが出来なくなくなってしまった。


「仲間集めりゃいけるんじゃないか? ユウスケはエンジョイ勢って言いながら、結構潜ってるらしいし」


「あいつは、女ヤル為に深く潜ってんだよ。あんま当てにすんな」


「ねー、そんな事よりもさ、遊ぼうよ」


「うるせぇ! こっちはムカついてんだよ!」


「ちょっと、私達に当たらないでくれる。冷めるんですけどマジで」


「自分が弱いからって何キレてんの、キモいんですけど」


「人の金で遊んでるくせに、調子に乗んなよ!」


「はあ? アンタが金出さないんなら、最初から着いて来てないっつーの!最低ぇ、帰ろ帰ろ」


 男子達の情けない姿に愛想を尽かした女子三人が立ち上がり、個室から出ようとする。

 しかし、それを許す男達ではない。

 今日ここに誘ったのも、これまで遊んだ金も全て出したのも、全てはヤル為。

 ここのカラオケ店を選んだのは、防犯カメラがダミーなのを知っているからだ。


「ちょっと、邪魔なんですけどー」


「憂さ晴らしに付き合ってくれよ、いろいろ溜まってんだよ」


「だってさ、どうする?」


「他の奴らも同じなの?」


「そうみたい。相手する?」


 男達に囲まれても、余裕そうな女子三人組。

 経験豊富なのか、まるで動じた様子がない。


「しゃーない、誰相手する?」


「私、二人良いよ」


「じゃあ、私こいつね」


 そう言って、女子の一人が扉の前に立つ男子の襟首を捕まえると、ぐいっと引き寄せ容赦なく肘鉄を叩き込んだ。


「あがっ!?な、が!?あ、待っぶっ!?」


 連続して叩き込まれる肘鉄に、鼻が潰れ、前歯が折れてしまう。掴んでいた手を離すと、扉の前に立っていた男子は顔を押さえて蹲ってしまった。


「根性なさすぎ」


「うわ、えっぐ!」


「初体験だったんじゃないの?」


「じゃあ、しゃーない!」


 人を殴って、笑って会話を続ける女子達に後退り、怯える男子達。彼らは探索者登録はしていても、実戦経験は登録したときのみで、喧嘩すらしたことないのが殆どだった。

 だから怯えて、判断を誤る。

 危害を加える者がいるのに、呑気に話しかけてしまった。


「おい、何やってんだよ、友達だろう」


「ここまでする必要あるのか?」


「だってさ」


「私達を襲おうとしてたのに、都合良すぎじゃない?」


「ホント最悪ぅ、同じことしそうだし、おキュウ据えなきゃね」


「おキュウって何?」


「知らなーい、吸盤みたいなやつじゃね?」


「あはは、ウケるー。じゃあ、さっさとやっちゃおうか」


「さんせー」


 残った男子三人は、碌な抵抗も出来ずにボロボロに殴り倒された。これで、個室のカメラが本物なら店員が止めに入っただろう。だが残念な事に、ここの店のカメラは全てダミーであり、防音もしっかりとされている。それが分かっていて、この店を選んだのは彼らだ。だから、彼らを助ける者は誰もいない。


 彼らが解放されたのは、裸に剥かれて写真を撮られてからだった。


「シネ、女の敵」

「去勢しろバーカ」

「何かあったら、この写真ばら撒くから」


 恐ろしい三人の女子が、カラオケ店から出て行く。

 暴力を振るった女子が去っても、動き出せる者はいなかった。恐怖で震え、痛みで泣き出す。自分達がやろうとした事は棚上げして、被害者のような気持ちになっていた。





「ねー、あいつら仕返しに来るかなぁ?」

「知らね」

「来るかもね、ユウスケ呼ばれたらヤバくね?」


 カラオケ店から出た女子三人は、少し離れた回転寿司店に入っていた。

 どうしてここに入ったのかと問われると、腹が減ったのと、たまたま目に入ったからだ。特に理由はなく、気分である。


「マジ同好会なんて作るんじゃなかったー」

「ノリで作っちゃったしね」

「人集まり過ぎだっつーの」


 そう高校に探索者同好会を作ったのは、この女子三人である。

 相川真里亞(あいかわまりあ)、城戸めぐり、古森玲奈(こもりれな)の三人で申請を出して受理されたのが運の尽きだった。

 当時は、大学生の姉や兄の探索者姿を見て、面白そうと思いやり始めたのだが、思っていた以上に人が集まってしまった。


 彼女達に、こんな人数制御できるはずもなく、もう自己責任でよろーと投げ出したのだ。

 それで上手く回れば問題ないのだが、残念なことに高校生である彼らに、人を纏める能力がある者はいなかった。

 皆が思い思いに行動を始めてしまい、あっという間にヤリサーと化してしまった。


 そんな状況を見ても、まあいっかで済ませていたせいで、彼女達が立ち上げたというのも忘れ去られてしまう始末だ。


 いよいよヤバくなったら教師が動くだろう精神で、全てを放棄して三人で集まって動いているのである。


「危なそうだったら、姉に助けてもらおう」

「それ、うちも兄ちゃんに頼むわ」

「私はどうしようかなぁ、兄貴頼りにならないからなぁ」

「玲奈兄って、蓮さんだよね?」

「そうだよ」

「姉のリーダーじゃん」

「マジで?」

「マジだよ、姉がスゲー奴って褒めてたよ」

「あははっ!ウケる!兄貴がリーダーって!」


 そんな会話をしながら彼女達は寿司を食べていく。そして、金が足りなくて頼れるリーダーである古森蓮を呼び出した。







 新たな仲間を加えて探索を行った次の日、この日はお休みである。


 何故か?

 それは今日がクリスマスだからだ。

 聖人の生誕祭を口実に、恋人達の聖夜と化した今日だが、アキヒロは家族でショッピングモールに来ていた。


 ダンジョンの近くにあるショッピングモールだが、ここがこの地域で最も大きな商業施設というのもあり、子供達が安心して遊べる場所も提供されている。


「ユウマは混ざらなくていいの?」


「嫌だよ、皆んな子供じゃん」


 子供達が遊んでいる場所は、スポンジ製の遊具が沢山置いてあり、そこでは幼児から小学校低学年くらいの年齢層が遊んでいた。

 近くにはフードコートやゲームセンターも設置されており、年齢が上の子も遊べるようになっていた。


 妹のリナは遊具の中で遊んでおり、ちょうど保育園の友達も来ていたようで、一緒になってはしゃいでいる。

 母はその子の親と会話しており、いろいろと交流を深めているようである。

 ただ、あちらはまだ若夫婦のようなので、会話が噛み合うのかは分からないが。


 隣でズズーッとジュースを飲み終えたユウマは、アキヒロを疑わしい目で見る。

 それに気付いて、どうかしたのかと首を傾げる。


「どうかした?」


「いや、本当にス◯ッチ買ってくれるのかなって」


「クリスマスだしね、リナにも貸して上げてね」


「うん……探索者って、そんなに稼げんの?」


「たまたまだよ、仲間にも恵まれたしね」


「俺も高校生になったら……やって良い?」


「ダメ」


「なんで?」


「危ないから。あそこは遊びで入っちゃいけないんだ。気楽に稼ごうってする人いるけど、きっとどこかで危ない目に遭う。命が助かれば良いけど、それでも大怪我するか、どこかに傷が残ると思う。それくらい危険な所だからさ、ユウマは辞めた方がいいよ」


「でも稼げるんだろ?」


「僕が稼ぐからユウマは気にしなくて良いよ、遊びたいんなら、何かバイトしなよ。その方が、いろいろ経験になるからさ」


「……兄ちゃん」


「なに?」


「死なないでね」


 なんだよ、心配してくれてたのかとここでようやく気付いたアキヒロは、笑顔になってユウマの頭を撫でた。

 恥ずかしいのかユウマは振り払うが、それも微笑ましく見れてしまう。


 リナが遊び、喉が渇いたのか飲み物をねだりに来たとき以外は、特に動く事なく過ごしていた。ユウマも暇だからと言って、ゲームセンターの方に行っている。一応、お小遣いは渡しているが、無駄遣いしないか心配だ。

 ふうと椅子に背を預けると、スマホが鳴りメッセージが届いたとお知らせが来ていた。


 誰だろうと見るとミロクからだった。

 内容は動画が出来たので、確認してくれというものだった。メッセージには五分割された動画が貼られており、時間にして二十分と少しとなっていた。

 残念ながらコードレスイヤホンは持ってないので、スマホを購入した時に備え付けられているイヤホンを取り出した。


 イヤホンを付けて動画を再生すると、爆音で再生されてしまい、急いで音量を下げる。


『みんな見ってる現役JKミロの部屋だよ!今日はぁ、残念ながらミロの部屋じゃないです!出張配信を行なっております!みんなぁ、ここが何処か分かるかなぁ?』


 そう言うとカメラがスライドして、洞窟の中を映し出す。しかし、洞窟の割には異様に明るく、違和感のある映像になっている。ダンジョンを知らない人からすれば、まるで映画のセットのようにも見えたかも知れない。


『分かったかなぁ?正解はぁ……ダンジョンでした!なんとミロは探索者登録を行い、探索者になっちゃいましたーパチパチー』


 そこから動画が続き、洞窟内を進む映像で途切れた。

 次の動画をタップしようとして、新しいメッセージが入っているのに気付く。それはカズヤからのもので、


『却下だ』

『忠告しただろうが』

『ミシロは隠せ』

『アキヒロの部分は消せ』

『サトルは……別に良い』

etc


 怒涛のメッセージが送られており、ミシロも直ぐ反応して『はい』『直ぐ編集します!』と返答していた。


 サトルの『俺は良いってどゆこと!?』のツッコミは埋もれて存在感を失っていた。


 アキヒロも動画を一通り見ると、頑張れとだけ送信してユウマとリナのクリスマスプレゼントの購入に向かう。


 帰り道で、太った探索者を見た気がしたが、なんだか世の中を呪ってそうな雰囲気を醸し出していたので、声を掛けるのをやめた。




 次の日、ミロクの動画は炎上した。

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