第三十七話:妖怪退治屋たち軽井沢に集結する
およそ渡世のならいとしては、
他人に可愛がられる奴というのは、
だいたい、自分の後輩への
面倒見もよい奴であることが、
多々あるようで。
イヅナの 仁之助 も、その点については
例には漏れていない。
「さ、お前らから話しなよ」と、
赤と緑の、二匹の若いイヅナを
優しくそっと励ましてやり。
それを受けて。
緊張していた様子の二匹のイヅナ、
一所懸命に、話し出す。
「おいらたち、あの地図にあった、
『への弐』のところを探ってたんだ」
「ふむ」
勇作と美鈴は、
あの格子模様にメッシュを切った地図を見て、
縦が「へ」、
横が「弐」の
マス目を追う。
作戦会議の時に昼寝をしていたルカは
話についていけないし、
もともとついていく気もないらしく、
一人、残った「おやき」を頬張っている。
「そしたら、匂いを、感じたんだよ。
あの掘立て小屋に残っていたのと、
まったく同じ匂いがプンプンと」
赤色のイヅナがそこまで話すと、
緑色のイヅナがその先を受ける。
「おいらたち、その匂いを追って行ってな。
ここにたどり着いたんだ」
そして前足で、
精進場川を上流に辿っていき。
「この川の上流、
浅間山の麓の、この高原に、
建設中の西洋風ホテルがあってな。
その中から、ビンビン、
掘立て小屋の匂いがしたぜ」
勇作と美鈴が地図を覗くと、
たしかに、精進場川の上流の、
いかにもそこからは軽井沢を見下ろせそうな、
眺めの良さような高台の土地に、
「ホテル建設予定地」と書いてある。
「工事中のホテルに逃げ込んで、
そこに住んでいるってこと?」
美鈴が呟く。
「ホテル住まいかあ。
あたしの真似をしてやがるねえ」
ルカが最後のおやきを咀嚼しつつ言う。
「よくやった。ほんと、よくやってくれた!」
勇作がそう言うと、
赤と緑のイヅナ、嬉しそうに胸を張る。
「よし、暗くなる前に出かけよう。
奴の居場所を掴んだんだ。
今度は逃がさないように行かないとな」
その勇作の言葉を受けて、
仁之助 は頷きつつも、
「あ・・・でもアニキ、
もうひとつ、話さなくちゃ
いけないことが」
「なんだ?」
「軽井沢の町だけど、いま、
どえらいことが起きているぜ。
人間達が、、、息巻いちゃっててさ」
*****
たしかに、軽井沢の町では。
汽車から続々と、
山伏の格好をした修験者の集団やら、
密教の法具をジャラジャラと言わせて歩く
密教僧の集団やら、
大麻を振りかざしながら歩く
神主たちの集団やら、
とにかくかき集められるだけ、
かき集められた、
修験道、仏教、神道の、
「お祓いできます」の看板をかかげた
ものたちが降りてきて、
「いったい何が始まるの?」と
不安げに見つめる軽井沢地元の人々の
視線を浴びながら、
町役場へ、大集合をしている
ところだった。




