表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/52

第三十七話:妖怪退治屋たち軽井沢に集結する

およそ渡世のならいとしては、

他人に可愛がられる奴というのは、

だいたい、自分の後輩への

面倒見もよい奴であることが、

多々あるようで。


イヅナの 仁之助 (じんのすけ)も、その点については

例には漏れていない。


「さ、お前らから話しなよ」と、

赤と緑の、二匹の若いイヅナを

優しくそっと励ましてやり。


それを受けて。


緊張していた様子の二匹のイヅナ、

一所懸命に、話し出す。


「おいらたち、あの地図にあった、

『への弐』のところを探ってたんだ」


「ふむ」

勇作(ゆうさく)美鈴(みすず)は、

あの格子模様にメッシュを切った地図を見て、

縦が「へ」、

横が「弐」の

マス目を追う。

作戦会議の時に昼寝をしていたルカは

話についていけないし、

もともとついていく気もないらしく、

一人、残った「おやき」を頬張っている。


「そしたら、匂いを、感じたんだよ。

あの掘立て小屋に残っていたのと、

まったく同じ匂いがプンプンと」

赤色のイヅナがそこまで話すと、

緑色のイヅナがその先を受ける。

「おいらたち、その匂いを追って行ってな。

ここにたどり着いたんだ」


そして前足で、

精進場川を上流に辿っていき。

「この川の上流、

浅間山の麓の、この高原に、

建設中の西洋風ホテルがあってな。

その中から、ビンビン、

掘立て小屋の匂いがしたぜ」


勇作(ゆうさく)美鈴(みすず)が地図を覗くと、

たしかに、精進場川の上流の、

いかにもそこからは軽井沢を見下ろせそうな、

眺めの良さような高台の土地に、

「ホテル建設予定地」と書いてある。


「工事中のホテルに逃げ込んで、

そこに住んでいるってこと?」

美鈴(みすず)が呟く。


「ホテル住まいかあ。

あたしの真似をしてやがるねえ」

ルカが最後のおやきを咀嚼しつつ言う。


「よくやった。ほんと、よくやってくれた!」

勇作(ゆうさく)がそう言うと、

赤と緑のイヅナ、嬉しそうに胸を張る。


「よし、暗くなる前に出かけよう。

奴の居場所を掴んだんだ。

今度は逃がさないように行かないとな」

その勇作(ゆうさく)の言葉を受けて、

仁之助 (じんのすけ)は頷きつつも、

「あ・・・でもアニキ、

もうひとつ、話さなくちゃ

いけないことが」


「なんだ?」


「軽井沢の町だけど、いま、

どえらいことが起きているぜ。

人間達が、、、息巻いちゃっててさ」


*****


たしかに、軽井沢の町では。


汽車から続々と、

山伏の格好をした修験者の集団やら、

密教の法具をジャラジャラと言わせて歩く

密教僧の集団やら、

大麻(おおぬさ)を振りかざしながら歩く

神主たちの集団やら、


とにかくかき集められるだけ、

かき集められた、

修験道、仏教、神道の、

「お祓いできます」の看板をかかげた

ものたちが降りてきて、


「いったい何が始まるの?」と

不安げに見つめる軽井沢地元の人々の

視線を浴びながら、

町役場へ、大集合をしている

ところだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ