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入学編第一話　入学

　ここは、竜機操縦士育成学校の新一年生の教室である。

　そこには、新一年生、竜機操縦士育成学校第四期生である十六名の生徒と、ある一人の大人の男がいた。

　その男は教壇に立ち、十六名の生徒達に向かって話し始めた。

「竜機操縦士育成学校への入学おめでとう。私が君たちの担任となった、セフィター・リーハーだ。」

　その男、セフィターがそう言った後、教室が少しざわついた。

　無理もないことだ。なぜなら彼等生徒達にとって、セフィター・リーハーとは馴染み深き名だからだ。

「君たちが思っている通り、聖装竜機を開発した者で間違いない。第一期生の担任でもあった。これから三年間、よろしく頼む」

　そう。セフィター・リーハーは、若干二十三歳にして聖装竜機を開発した、スミーナ国が誇る天才科学者である。

　そんなセフィターは、未だざわついている生徒達を宥めるために口を開いた。

「静粛に。まずは、三年間共に学ぶ仲間であり、共に競い合うライバル同士である君たちに、自己紹介をしてもらおうと思う。廊下側の列から席順にだ。今、私が立っている教壇に出てきてくれ」

　セフィターはそう言って、廊下側の列の一番前に座る黒髪の男子生徒に自己紹介を促した。

　彼はその場で自らの椅子から立ち上がり、顔を少し下に向け、セフィターに言われたように教壇に向かう。

　そして教壇着くと、彼は下に向けていた顔を上げ、他の生徒達の方を見た。

　その瞬間、生徒達に寒気が襲った。彼の目を見たからだ。

　生徒達が見た彼の目は、憎悪と復讐の炎で満ち溢れていた。彼のその瞳は、今にも人を殺さんとしていたのである。

　そんな生徒達のことなど考えず、彼は口を開いた。

「ラノハ・オタールだ。仲良くする気も、よろしくする気もない。以上」

　この言葉が発せられた後、教室の空気がビシッと凍った。

　ただ一人、ラノハの後ろの席に座っている栗色の髪の少女だけは、そのラノハの言葉にため息を吐いたが。

　ラノハはそんな空気のことなど全く気にしていないようで、すぐに自分の席へ戻っていった。

「……では次、ミリア・スパルド。前へ」

「はい」

　少し間を空けてセフィターがそう言うと、先程ラノハの言葉にため息を吐いた少女であるミリアが返事をして立ち上がり、教壇に向かった。

　教壇に立ったミリアは、生徒達の方を向いて口を開く。

「ミリア・スパルドです。……皆お察しだとは思うけど、あのスパルドです。だけど、私自身はまだすごくも何ともないから、気にせず仲良くして欲しいと思ってます。よろしくね」

　彼女はそう言い終わると同時に笑顔を見せると、ラノハを除いた生徒達から万雷の拍手が贈られた。先程あったラノハの自己紹介とは雲泥の差である。

　その中にはミリアに見惚れてしまっている男子生徒もいた。それだけ、彼女の笑顔には破壊力があったのだ。

　そんな拍手が響き渡る中、ミリアは一礼して自分の席に戻っていった。

　ミリアが着席すると同時に拍手は止んでいき、完全に拍手が無くなったところでセフィターが口を開く。

「では次、リディオ・モートゥ。前へ」

「はい！」

　ミリアの後ろの席に座る、リディオと呼ばれた少年が席を立った。

　ラノハが作り出した冷たい空気は、ミリアの自己紹介によって完全に霧散していた。

　これでこの後の自己紹介は、滞りなく進んでいくことだろう。

　だが、ラノハはやることはやったと言わんばかりに、全くの興味なくこの時間を過ごすのであった。

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