置いてけぼりの行き先は『ギルド』?!
また、編集致します。
内容はあまり変わっておりません。
いつもお読み下さりありがとうございます。
ー信太郎視点ー
キタァーーー!!!!
『北ギルド』の看板の前で俺は立ち尽くしている。
コスプレが趣味の俺も人並みにはアニメや漫画も見てきた。その話には必ず出てくる『ギルド』に今、俺はいる。感動に打ち震えていたら、後ろからドスの効いた声がした。
「おい、ニイちゃんや。入るならサッサと入ってくれや」
恐怖にビクッとした俺は飛び退いて「いらっしゃいませ」と挨拶した。恐怖ってば、咄嗟に日常の癖が出るもんなんだ。と、知ったところで危機的状況が好転する訳ではない。
俺のおかしな行動にキョトンとする冒険者らしき無精髭?の熊族の男の背中には長い剣の先っぽが見える。
恐々しながらも、凄い臨場感にドキドキする。
「ニイちゃんや。新しくギルドへ入ったのか?ふーむ、ギルドも随分とヘナチョコを雇ったもんだ」
首を傾げながら呟く冒険者に俺は慌てて叫ぶ。
「ち、違います。他で商売してた癖で。俺は単なる来店者です」最後は声が小さくなる。
ガタイの良い熊族の人の顔の傷が怖いんだ。
汗をかきかき慌てる俺をチラッとも見ずに冒険者はサッサと入っていった。
よ、良かったよ。絡まれなかった…あぁ…緊張したぁ。
実は、あのポンズ村から数日ガムシャラに走って(馬車が…だけど…)少し大きめの街へ来たんだ。小さい村では出来ない事があるらしい。
噂の大門はボーッとしたのも束の間。
(漫画で見たより迫力のある木の大門に圧倒されまくっていたのがきっと悪かったんだ…)
大門に付くなり、鳳凰族のガイエさんや眞猪族のダインさんの前には、城からの繰り出したと思われる御使いが沢山来てあっという間に連れ去られた。まぁ、自ら乗っていったんだけどさ。
その上、サテさんやブヤンさんにも何故か大勢のお迎えがいたんだ。何台もの馬車が止まり、乗り込んで行く。あ、もちろん俺もどうぞと馬車に勧めされたんだ。ここからが不味かった。その時、旅の途中で拾ったお気に入りの石を落としてしまい、拾っている間に誰も居なくなってたから。
本当だよ。
ウレ君まで。。。
護衛の兎族はどうしたんだー!!!
いや、街に入る前に「ちょっと森に用事〜」とチャラ男的感じで居なくなってた…。ふぅ。
街行く人々は忙しげで俺なんて誰も見向きもしない。
懐にお財布もない…。
と、なれば『ギルド』しかない!!!
何故なら.
お金を稼ぐ方法が此処しかないからだ!!!
(薬草を買ってくれるサテさんから、俺の持ち物には売れる品物があるって聞いてた…と言うのは建前で)
見たかった。
売ってみたい。
そりゃ異世界に来た人間は、誰でも『ギルド』を見てみたいよなぁ。
俺だって、冒険者の気分だけでも味わいたい!!
そう思ったんだけど。
まぁ、コレが後から沢山後悔する羽目になるんだけどな。
ガチャ。
取手を握って、開いた木製の重厚な扉はめちゃ重い。見たい気持ちで精一杯の力を込めてやっと俺一人はいれる隙間を作った!!ホント、決死の覚悟だよ。
やっと隙間へ身を滑らせると(挟まれたらペチャンコだからな)
「ニイちゃん、またもや邪魔」
と、先程の熊族の人に扉を支えて貰う(相手が表に出たかったツイデなんだけどね)
おかげさまで無事、入れた。
中は広くて奥の方には飲食スペースもある。
ガチャガチャと武器の音が響き大声で話す喧騒に思わずニヤケル。
これぞ『ギルド』だぁ。
他もキョロキョロして見渡せば、市役所風のカウンターがあり、看板にはそれぞれ「買取」「報酬受け取り所」「冒険者登録」など様々ある。
清潔感が意外にあり、ちょっと普通な感じに肩透かしを食らっていたらいつの間にか目の前に壁が出来ていた。
か、囲まれた?!
しかも、大柄な狼族・豹族・トラ族など強そうな冒険者達が取り囲んで何故か俺を睨み付けてる。
なんで?俺、何かしたのだろうか?
それとも入店するには、規定があったのか?
不安に震えていたら雷の落ちた様な怒声が頭から降ってきた。
「おい!!
無視するな。お前…犬族だよな?
こんな場所に犬族如きが入り込むとは良い度胸だな。ここはな、冒険者。いわば命懸けで戦う者達の場所なんだ。場違いは出て行け!!!」
無視なんてトンデモナイ!!
ビクビクッと俺の身体は跳ね上がる様に震えて声が出ないだけ!!(こんなに震えたのは高校時代に暴走族に囲まれて以来だよ、ど、どうすれば。)
ここから、出て行けば殴られないかなぁ。
そう考えて足を動かそうとしたけど、う、動かない。怖いと人は固まる。まさに俺が今それなのだ。
逃げたいのに、固まっている。
この矛盾に戸惑ってるだなのに、そうは問屋が卸さない事態になってる。
「お前、俺たちを無視するとはいい度胸だ。良いだろう…お前の実力を見せてもらおう!!」
じ、実力って、そんなモノある訳ない!!!
もし、今までにそんなモノあるならこんなに苦労する人生してないのに…。心の言い訳は誰にも聞こえず胸ぐらを掴まれてく、苦しい。
あぁ、置いてけぼりの時何故『ギルド』を目指したのかなぁ。俺ってば。。。
胸ぐらを掴まれるという過去にもあった経験を生かして引き摺られる方向に慌てて足を進める。こうしないと更にクビが締まって酷い目にあうのは経験済みだ。
「冒険者登録」と書かれた場所で『指を出せ」と言われプルプルと震えながら人差し指を差し出した。
「コイツの登録を頼む」
案内の猫足の美人さんに気づきもせず恐怖に震える。
間違いなくレベル1とかしかない。いや、もしかしてマイナス1とかの新記録達成するかも。
お馴染みの冷や汗を大量に掻きながら、人差し指に針を刺された。
チクッとしたけど、それほど痛くない。
周りの反応を待っていたら、急に狼族の男におっぽり投げられた。
痛ぁ。
でも、大丈夫!!受け身だけは得意だから、俺。
高校の時、柔道の先生に習った受け身はいつの日も俺の味方だよ。
[ぴーーーーー]
え?なんの音??
異常音っぽいけど…やっぱりマイナスなのか?それとも、異世界人だと分かってエラーかな?
異世界人とか分かったら、ヤバイかも。
ど、どうしよう…。
「すみません。この方の査定は出来ません。
この秘匿マーク。私もこんなマークなど初めて見ましたけど、中身は私にも閲覧出来ません。でも登録事態は出来ます。どうされますか?」
秘匿?
あぁ良かったよ、異世界人だとかバレなくて。
チラチラッと、美人さんの青ざめた横顔が綺麗だなあと見惚れてたら、隣からチッと舌打ちが聞こえて来た。不味いサインだよ。
ほら、あっという間に引き摺られて「受付カウンター」に到着。
「秘匿だとぉ。聞いた事ないぜ。噓くせいなぁ、さては貴族の飼い犬かぁ?」と狼族が小声でついた悪態は俺の耳には届かなかった。
それどころじゃない!!
夢の依頼がこんな形で…。
俺には絶対ーーーモンスター退治の依頼とか無理…無理無理理!!!!!
薬草売りに来ただけなのに…なんでこうなった?!
もう、敗北決まってるから!!
ある意味違うカタチでこの世界から去るから!!
「コイツに受けられるモノないか?」
ありません!!
俺はそう言いたいのに…。断言出来るのに…言葉が出ない。そりゃそうだ。
いまだに首元を掴まれている俺に出来るのは「うぅっ」と唸るぐらいで。
「えーと。この犬族の方にですか?」
疑心暗鬼丸出しの受付カウンターの兎族のインテリ風の男からの侮蔑丸出しの視線を受ける。
お願いだー。是非とも無理だと説明してくれーー。
心の叫びは誰にも届かないし…。
中々紹介しないカウンターの人に狼族の人が怒り始めた。
「イライラするなぁ。
どうなんだ?まさか貴族の犬コロに紹介するの禁じられてるとか…」
また、放り投げられた。
あ、失敗。
今度は受け身を取り損なう…。
はぁ…床は土剥き出しだから頬っぺたが痛いよ。
(このコスプレは魔法で一体化した奴だから、痛みまでリアルで)
その時転んだ拍子に、お気に入りのあの石が転がった。
手についた土を払う暇もなく、石を拾う。
なんか気に入ってるんだ。
だってさ、琥珀色の石の中には何かいる。それはしかも虫ではなくて、珍しい鳥っぽいモノ。
化石かもしれないと思いつつもこんなに小さな鳥とか居ないしとも思う。
でも、気に入ってる。
大切に石を掴んでそっと懐に入れようとして気づいた。
あれ?
なんでシーンとしてる?
受付カウンターの人と狼族の人の言い合いで騒がしかったのに??
また、何か起こったのか?!
ギギギギ…音がするみたいにギクシャクしながら、恐々顔を上げて固まる。
だってさ。
ギルド中の人が恐怖の顔のまま固まっている。し・か・も!!
俺を見つめて、恐怖で固まってるんだよー!!
どうすりゃいいんだーーー!!
お互い固まっていた俺たちになんと、救世主が現れた!!
「シンさん!!ココに居たのか…あぁ良かったぁ…」
ブヤンさん!!!!!
な、涙が出るよ。
珍しく慌てているブヤンさんの姿に後光がさして見えると思ったら。
え?
何故ブヤンさんまで恐怖の顔に変わったよ?!
俺…まさか。。。コスプレ解けたのか?