ポンズ村の特産品?!
ーある村人の独り言ー
平凡なはずの毎日は突然崩れ去った。
何も無い村での退屈な毎日が何と貴重だったかと気づくのは失った後で。
それを見つけた日からガラリと変わった村長と側近の人たち。
大切な人達を守るためと、大事なおっかぁを石像にした日は何十年ぶりに号泣してさ。
それでも、明らかに不可侵にあるべき宝物を放置する訳にいかないと言う理屈に負けて今日もまた旅人を石像にすべく森の小屋にいると。
驚きの展開に言葉もない。
眞族を解放した人々を襲おうとした我々が遂には石像となる。
意識が戻った瞬間に感じた染みるーーー!!!と言う痛みを天罰かと感じつつ周りを見れば石像から戻っていた。
おっかぁ!!!!
手を取りたい抱きしめていた俺の耳に信じられない言葉が聞こえた。
「村長をこのまま許す事は出来ない。秘匿するには重すぎる不可侵のモノを身勝手に守ろうと旅人を石像にするなどと。
許されん!!」
眞族の大声に身体に震えが走る。
手伝っていた俺にもきっと。
嫌な予感は当たるもんだ。
「では、村全体の責任はどうなる?誰も否やを唱えなかったのだろう?それも問題」
鳳凰族と言う、一生お目に掛かる事無い人からの指摘に誰も口を開けない。
と、思ったら…。
「だ、だったらコレを落とした人も重罪なのかな?きっと悪気は無かったとしてもダメかな?」
太めの犬族の人がオドオドした雰囲気で話し出す。オドオドしてるけどこんな中、口を聞けるなんて実は凄い人かも。
有名なあのサテ様、ブヤン様すら無言なのに。
ん?
アレは…。
「ふふふ。
落としたなどと、ジョークが上手いですな。単にいせか…」「ええーーーと。あの、とにかく誰にも被害は無かったしあのグッズも無くなったし。ね?もう良いにして下さい!!!」
おかしな兎族の人が話し始めた途端、太めの犬族の人が口を塞いで叫んだ。
どうしたんだ?
「シンさん、無くなった事にこの場合はなるのかね?まぁ、シンさんがそう言うならばワシは異議なしだがそちらの頑固オヤジはどうかね?」
鳳凰族の方の許しが出たが、眞族の方はどうだろう…。
「フン!!
態々そんな事言うまでも無いわ。無言の中にある同意すら分からぬとは鳳凰族とは意外に間抜けなのか?
シンさんや、ここまで関わったのだ。用心棒として同行してやるから安心せい」
シンさんと言われた太めの犬族の人は首を何回も縦に振る。
でも、この中で安心と言う表情をしたのは彼のみで。
鳳凰族の威圧がコレ程苦しいとは。
隣にいる母を抱きしめて庇うも、自分すら重力に潰されそうで苦しい。
目が霞んで来たその時…
パン!!!!!
大きな手を叩く音と共に、威圧が霧散した。
誰?
とにかく、助かった。母も深く息を吐いていた。
「信太郎さんは私が護りますから、誰も用心棒など必要なし」
兎族の大男だった。
またもや一触即発なのかとドキドキすれば。
「もう!!
やめろよな。お前のせいで皆んなが困ってるだろ?」
「じゃあ、早く名付けをして下さい。名無しは嫌です」
「名付けとか…嫌な予感しかない。は、そうだ。サテさんに付けてもらったら良い。彼は」「私は貴方にのみに従うモノ。無理です」
大男と小さな犬族の言い合いに、こちらの睨み合いは終わったようだ。
「村長さん。これで理解出来ましたか?
不可侵のモノに手を出す危険性を。我々はこのまま彼らと出発します。」
キッパリ言い切るサテ様に項垂れる村長。
変な夢を見たのだ。手の届かぬモノを手にして…。
「あ、サテさん。
あのね、少し考えたのだけど皆さんお疲れだから今日は宿屋で泊まりましょう。
俺も食べて欲しいモノがあるし」
犬族の人は、こんな村に泊まると言う。
我々のした事を知りながら。
村長の目に涙が滲んだ。
「そうだ!!
レラの砂糖漬けを入れた飲み物をご馳走しようと思って」
張り切って彼の家へと駆けてゆく後ろ姿。
「彼はな、石像から戻ったこの村の人達が心配なのだよ。あの激痛の様子に申し訳なさも感じている善良な善良過ぎる男でな」
初めて見た鳳凰族の方の笑顔に再び駆けていった後ろ姿を探した。
もう、彼は見えない。
母を助けおこしながら心で呟いた。
御恩は一生忘れません…と。
周りを見れば、村長が手を握り何か小声で呟いていた。
その晩のご馳走の『レモンティー』に美味しさは、村人全員の感激の叫び声が隣村まで聞こえた事からも分かる(隣村は馬車で数日の馬車だから)
そして、シンさんから許可を得て売り出す村の特産品『レモンティー』
レラの大木(植えてくれたんだ。数日で大木となりタワワに実を付けた)が数本。
ポンズ村の発展に生涯を捧げた村長が売り出して有名になり村が栄えるのはまだ先の話。。。