ポンズ村の異変?
ー信太郎視点ー
肩に担がれる。
そんなある意味修行の様な有様の俺はひたすら早く宿屋に着きます様にと揺れる肩で願っている。お腹が押されて、正直リバースの危機にもあるんだ。
ブヤンさんの足が止まった事で宿屋に到着したと、目を開ければサテさん達の雰囲気がオカシイ。
あれ?
そう言えば村人とかに全然会わない。
この村の人は引きこもりなのか?
しまった、今の声に出てたらしい。
隣のサテさんがクスリと笑った声がした。
「シンさんは相変わらずだな。この村に今生きている者はおらん」
いつもと変わらないガイエさんののんびりとした声にホッとしたいけど。生きている者はいないって、まさか…。
「ははは。
今、鰐族の奴に調査に行かせた。
ま、シンさんの怖がる事にはならんだろう。
だが、少しばかり問題発生はやむなしという所か」
噂をすれば影。
向こうから走ってくる鰐族とあれは…豚族?
おぉ、何故か同族感が激しいな。
ま、俺の日本でのあだ名だしな。
「ガイエ殿。こちらはこのポンズ村の村長殿だ。説明は彼からするらしい」
無口タイプの鰐族さんは意外に良い声だ。
声優になれるかな?
「初めまして。
鳳凰族の方にご挨拶申し上げます。わた…」
あっ、遮った。
「あー、それいいから。挨拶とか礼儀作法とか苦手だ。まずは状況から聞かせてくれ」
ガイエさんって偉い人?
鳳凰族だからかな?
「はい。では現状をお話しします。
この村がこの有り様になったのは今から数ヶ月前の事。夜中になると起きる異変に困り村人全員が森の中の資材小屋に避難を余儀なくされております。
異変の内容は呻き声。正体を見た者はありません」
「それって実害ないじゃない?
あ、ごめん。俺はサテという商人だ」
割り込んだサテさんの言葉に村長さんはギョッとしていた。
豹族もやっぱり有名なのか?
しかし、俺の考え事もそこまでとなる。
村長の爆弾発言で。
「サテ様までご来訪誠に恐縮で…あ、はい。
挨拶よりも先を急ぎます。
実害はありました。
その呻き声を聞いた者は石の様に固まるのです。息も止まり石像そのものに」
え?
じゃあ村のあちこちにあるオブジェはまさかの村人の石像?
めっちゃ怖いじゃないか。そんな怖い場所より野宿する方が良いと思う!!
言えないけど。
ものすごーーく乗り気のガイエさんが見えるしな。
「それは重畳。面白い村に泊まれて良かったわい。村長、今晩ワシらはここで見張り番をしよう。明日の朝、また会おうか」
サッサと宿屋らしき建物に入るガイエさんに村長さんは慌てていた。
でも、無理無理。
ガイエさんは人の話を聞かないから。
俺だって絶対この村に泊まりたくないし、野宿万歳だし。
あ、また声に出てたか。
「シンさん。野宿でその呻き声に出会ったらどうしますか?とにかく、ガイエ殿は策がある様ですが調査は必要です。
腰の抜けた状態から回復したらシンさんも力を貸して下さい」
あ、肩に担がれてるの忘れてた。
は、恥ずかしい。「もう大丈夫だから下ろしてください。ブヤンさんありがとう」
ちょっと足が笑ってるけど、なんとか立てた。ブヤンさんは「軽くて担いでるの忘れてた」とか言いながら宿屋に入る。
皆んな入ったからもちろん俺も後ろから追いかけながら先程のサテさんの言葉に納得していた。
そりゃそうだ。と。
野宿じゃ状況は不利だし、調査は大切だ。
でも、ガイエさんだから不安なのは俺だけみたいだな。
誰も居ない宿屋に全然お構いなしに休んでるガイエさんに腰のポシェットから飲み物を出す。
そう。
家を丸ごとしまった異世界スペシャルバックは飲み物も別だてで入ります!!
真面目に感動した。
ラノベの当たり前でも、この手に取って実際見た瞬間は違う意味で腰抜けたしな。
一瞬で『ずだ袋的ポシェット』に家が入る不思議さ。
一生忘れないと思う。
ガイエさんが、飲み物のお代わりを3回した時ブヤンさんが何かを担いで来た。
あ、それってばまさかの村人?
まあ、石像のだけど。触って大丈夫なのかな。
「さあ、シンさん査定頼むよ」
キターーーー無茶振り。
家出してスキャンしなきゃ無理です。
固まる俺に更なる無茶振りがきました。
もちろん、サテさんです。
さあ、どうする俺。