旅立ちました!!
少し編集しました。
宜しくお願いします。
ー信太郎視点ー
『いいかい。
忘れないでくれよ。
この家は、特殊なモノ。
シンさんと恐らく生まれ故郷を繋ぐ糸。
もし、離れたら…』
は!
ゆ、夢か。
久しぶりにこの世界に来たばかりの頃の夢を見たよ。
額に滲む汗を拭こうとして、変装してる事に気づいて頭をかきた。
ガタン!!
激しく揺れる車内で舌を噛みそうになる。
ふぅ。
ん?
犬族のウレ君はまだアレにしがみついてる。
それって…いるの?
旅に出ると聞いた彼が唯一持っていきたいと言ったモノが『変な木の棒』
森の中で見つけた宝物だと嬉しそうにしていた。
それからずっと肌身離さず持っている。
無論、今も揺れる車内で何故かアレを抱きしめてる。
「いいですか?
師匠は知らないでしょうが、これは貴重な品物なのです。猫族ならば、一髪で撃退出来ますから!!」
初めて見せられた時に言われた台詞。
異世界なんだ。だから知らない事だらけが当たり前。
でも…少しだけ単なる棒かなと思っているけど。
馬車の外を見れば、余裕な顔でブヤンさんは、隣で何故か走ってる。
いや、本当に走ってます…。
こう言う場合は、馬とか何か異世界の獣じゃ無いのかなぁ。疑問がつい口に出た。
すかさず「あれは当たり前です。戦士ですよ?」とツッコミをかますサテさん。
馬と一緒のスピードでこちらに手を振るブヤンさんに半笑いしながらも掴まるのに精一杯の俺は手を離すなんて出来ない。
しかしサテさんは商売してるらしいのに店番とかは大丈夫かな?
そう聞けばニコッと笑って「大丈夫です」といつも通りの答え。無理をしやすい人だから気をつけなきゃと心に誓うも。
ぼっちが長いから人との距離感がイマイチで自信がない。
あの鰐族の人は、馭者をしてる。結構大人しい人で良かった。
馬の扱いは得意らしく隣のガイエさんと仲良く話してる所を見ると仲直りしたらしい。
さすが、ガイエさんだ!!
温和な彼らしいよ。
森の中と草原しか知らない俺は初めての町にドキドキしてる。どんな景色も異世界だと思うとキラキラ見えるから不思議だ。
これがラノベ効果なのか。
そうそう、サテさんに出発前に着ぐるみを直された。
いや、正確にはある『石』をくれたんだ。
それは魔力の込められた『魔石』。
様々な魔法の呪文を込めて売られているソレは、人々の生活を支えている。
赤い色の『石』をサテさんが渡してくれた。
。。。
それを身につければ、変身出来るんだ。
着ぐるみでなくて、本物の獣人の仲間になるんだぁ。
鼓動が激しくなる。
「目眩しの魔法ですよ。ま、シンさんの姿は犬族に見えます。ウレ君の師匠ですからね。ま、妥当な線でしょう」
首から下げるペンダントタイプは結構カッコいい。
日本では、こんなの似合わないと一度も手に取った事もないから余計にドキドキだ。
「ふふふ。シンさん?
これは見えません。目眩しですから」
そうか…ペンダント見えたら目眩しの意味がないもんな。
とにかく、ドキドキしながら変身した姿を鏡を取り出して見た。
。。。
これが俺?
こんなにこんなに自然な変身とか、コスプレ界が激震するよ。
本物の犬族に見える…ま、太り過ぎの犬族には間違いないが。とにかく!!
犬族に見えるのが大切なんだ!
「シンさんや。
野宿も飽きたから、次の村まで飛ばすぞ!」
考え事をしている暇もない旅の空。
はいと、答えるつもりだった俺は今度こそ舌を噛んだ!!!
痛い…。
かなり地味に痛い。しかしその痛みなど構う暇など俺にもウレ君にもない。
何故ならジェットコースターより凄い揺れは、噂のスペースマウンテンよりたぶん凄い。
頭を天井の幌にぶつけたり、床にへばりついたり。とにかく生き残るのに必死な俺とウレ君。
何故かこの揺れの中、平然としているサテさんが不思議そうに尋ねた。
「何故魔石を使わないのですか?
楽しんでるのかな?
「定置」「防御」の魔石を使えば1発なのに…」
ええ??
そんなの揺れる前に言って欲しい。欲しい。何としても欲しいけど、今口を開いたらヤバ過ぎる。
ウレ君をチラッと見ればサテさんの言葉を聞く余裕もない。
異世界の旅って厳しい。
心底そう思いながら、間もなく気絶した俺にどうやらサテさんが魔石をつけてくれたみたいだ。
数時間後にはやっと村についた。まぁ、気絶していた俺には数分くらいだったけど。
村の名前は 『ポンズ村』
こんな美味しそうなその村の名前は俺の目には入ってなかった。それは、揺れから解放されて腰が完全に抜けたからだ。
デブの特徴として、肩を借りるのは申し訳ないのだけど。誰かに頼むしかない…
でも、これは無い!!
ーブヤン視点ー
全く人が悪い。
サテの奴はよほど、鳳凰族のガイエ殿に無理を言われたらしい。
しかし、その仕返しに揺れ防止の魔石を渡さないで様子を見るとは。餓鬼の悪戯か?!
珍しいサテの姿に後から納得する。
長時間かかるのを嫌がって、ガイエ殿が更にスピードを上げたからだ。
これでは『魔石』ごときでは無理だな。我々戦士の訓練をした者しか。見れば、サテが二人を支えながら踏ん張っていた。
俺もスピードアップするか…。
しかし、だ。
目眩しの魔石を使ったシンさんは、驚くほど小さかった。いつもの変な格好はぶかぶかで分かりにくいかったのだ。
ふむ。
丸々として少し犬族っぽくないが、小柄なシンさんには犬族が似合う。
しかし突然カガミと言う魔道具を出してのには驚いた。何故姿が見えるのか?魔石を使用した形跡もない。魔力感知には何も引っかかってないのだ。
シンさんは、犬族の姿を見てやたら喜んでいたな。
犬族が好みなのか?
あんな魔道具をホイホイ出す犬族とは、危険極まりない。やはり同行して良かった。
村に到着すれば鰐族がコッチを凝視してるじゃないか。ガイエ殿に直接見張られるのは、相当しんどいのだろう。
しかし、俺は俺のやるべき事をしなけらばならない。見張りを変わるわけにはいかないのだ。
腰の抜けたシンさんをヒョイと肩に担いだら、シンさんが珍しく抵抗してる。
「肩を、肩を貸してくれてれば良いから、お願いです。下ろしてーーー」
俺はそれを無視して先へ進む。まぁそれどころじゃないのだ。
この村オカシイぞ。。。
どうする?