運がいい重戦車?
「修理はどんなもんだ?」
「あまりよろしくねぇよ車長さん」
俺たちの乗る戦車。今はエンジンとサスペンションに関連した履帯の故障で絶賛修理のオンパレードだった。おまけに進撃中だった部隊はもう一日分の距離がひらいていた。
後方からの修理部隊が来るのが半日かかると聞いていたが、一日たっても来なかったのだ。
だからここで、乗員全員で足回りとエンジンをばらしているのだ。
「それにしても、一つの部品が重いんだよなぁ」
「そういうなよ伍長。こいつは優秀なんだ」
「そういうがな、車長も少し手伝ってくれよ」
「大丈夫だ。二等兵がやってくれる。あと通信手もな」
それを聞いた二人がエンジンを外に出して中の点検をしている所で勘弁、とかため息が聞こえた。
こいつは重戦車に分類され、装甲も攻撃力も桁違いに強いわけだが、心臓と足に負担がでかすぎてすぐに息切れを起こすことが難点だ。
整備と環境が良ければ恐ろしい存在になるだろう。
でも新しいものはどうしても短所が目立ってしまう。こいつのこういうものが顕著になってしまうのだ。
「車長は何するんだ? その手に持っているのは新しい命令か?」
「ああ、そう。こいつは大規模な攻勢の作戦指示書だ。修理が終わったら部隊合流だって」
距離が開いているのにどうやって向かえというのか。
司令が出す命令も大概なものだ。
結局、修理部隊は夕方にやってきて、本格的な修理は翌日となった。
これが良かったのか、悪かったかわからないが、大規模攻勢には参加しなかった。
その代わり、撤退してくる部隊の殿役として平原の街道に陣取り、大量の敵戦車をスクラップに変えた。
撤退も無事に終了。
俺たちも弾薬が尽きた戦車で本国に帰ることができた。
この帰国から数日後に戦争は突然、休戦となった。