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亡国の錬金術師、母になる。  作者: レトロ
第一章
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プロローグ

初投稿です。




「お前は選ばれたんだ、お前は手に入れたんだ、お前はその力を私達のために使うんだ、その錬金術の力をね。」


そんな事を子供の頃から親に言われ続けてきた私にとって錬金術は好きになれるものではなかった。


だが、嫌おうにも錬金術が全てを支えているこの世において錬金術師は絶対の地位を持っている。


たとえ、どんなに力がなくとも“錬金術が使える”というだけでその地の領主と同じ程度の待遇は得ることが出来る。

逆にその力があるだけで生まれてからのレールが全て敷かれている。

当然自分のやりたい道なんて選べない。


だが、使命さえ果たすなら自分の所有物……土地や、人民は好きに使える。


こんな才能で決まる世界なんて想像がつく様にクソみたいな世界だ。

その結果は今私の目の前にあるからね。



少し昔の話をするとしよう。

私がその力を得たのは5歳の頃だったか。


父や母は錬金術が使えなかった。

しかし、私が得た権力を我が物顔で好きかってに使った。


そして次の年に殺された。


自分が一番偉いと勘違いしめちゃめちゃをして国の怒りを買った。

見せしめとして民衆の前で首を吊り、晒された。

その全てを民衆の真ん中で縛り上げられぼやけた視界に見た時は何かが壊れた気がした。

6歳の私に見せるには少し酷ではないか?

今では笑い話だがね。


勿論親がそうなら権力の本来の持ち主である私は国によって厳重な処罰を下された。

当然さ。


それは全ての権利の所有権を国に渡すこと。


錬金術師としての権力だけでないその土地、人民。

最後に私自身の所有権。

全ての権利を渡した。

そうして生まれたのがこの私!




”飼い殺しの錬金術“




国に尽くし国に捧げ国に与える錬金術!

誇り高き国に使える名誉の職さ!



…なんて皮肉を言ったけれども、実際は王族お抱えの錬金術師になっただけであった。


そもそも学を身につけてから気づいたが私は殺されてもおかしくなかったのだ。

親のみを殺し私を生かしたことは特例と言ってもいいほどだった。


国の怒りを買った両親の行為は反逆罪と何ら変わりないのだから。


子供の頃の私は王に迷惑をかけただろう。


まるで子供のように育ててくれたのだから感謝すれども恨むような事は間違いだ。


こうして私は国に使えて幸せに暮らしているのだよ。




まぁ……


今は無職ですけどねぇ……。


____________________



そう考える彼女が見下ろす先にはには燃え盛る王宮と旗を立て自由を勝ち取った人民たちの姿が映るのだった。


「これからどうしますかねぇ?坊ちゃん?」


「ど、どうするもこうするもあるか!なぜ父上を置いてきた!いつものようにどうにかしてくれるのであろう!?国を!父上を取り返すのだ!」


彼女はまるで丸太か何かを持つように暴れる子供を抱え崖ぶちに立っていた。


「ふむ、私は王から命を預かっているのです。なので残念ながら国は捨てなければなりませんねぇ。お坊ちゃんも居ますし。」


「はぁ!?何を……?」


「ふぅむ……王の最期の命は難しいですねぇ…」


「だから!何を言って!」


「失礼。」


ふっと彼女の周りに薄紅の霧が流れる。その霧を吸ってしまったお坊ちゃんと呼ばれる子供はすっと眠りに落ちるのだった。


「さてと……王よ貴方の最期しかと目に焼き付けました。……安心下さい。貴方の最期の命……“坊ちゃんを幸せにする“承りましたよ。全く貴方らしい雑な命ですねぇ」


彼女はそう言うと森の中に溶けるように消えていった……





これはある英雄の生まれる、少し前のお話。


英雄を育て上げた者のお話。




クソみたいな世界で頑張って残された王子の母になろうとする不器用な主人公のお話です。

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