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武術指南の相談

店の庭で、アイと少女が筋トレをしている。


窓から見てシロがリリに言った。

「武術教室ですか?」


「うーん。弟子入り? みたいな?

 ランちゃんって子だって。

 テレビで功夫物の映画最近特集してるらしくて、功夫スターにあこがれて、

 アイが庭でトレーニングしてるのを見かけて、

 『弟子にしてください!』って言ったんだって」


「線の細い、女の子ですね。

 運動あまりしたことなさそう。

 何か事情があるんですかね?」


「でもまあ『トレーニングしてるのを見かけて声かけた』っていうのが、

 アイは気に入ったみたい。

 『武術が好き』で『トレーニングが好き』てのが重要なんだって」


「……それは、たぶん大事ですが、ランちゃんのそのセリフ的にはむしろ、

 『かっこいいお姉さんにあこがれて』って感じなのでは?」


「そうだねぇ、まあ、

 青春時代の何かのきっかけって、たいていそんなもんだよねぇ」






その日、トレーニングの後、夕方、ランはウミネコ麦酒房で軽食を食べていた。

アイはランに、

「筋トレとよく食べることが、何よりまず大事なんだ。

 良く味わって、たくさん食べなさい」

などと言って、料理を出した。


リリとシロも、ランに、

「その通り、よく食べなきゃ」

などと、雑談しながら笑う。


お客もちらほら入り始めた。


ランの後ろの席に座っていた中年の男性が、カウンターのリリに声をかけた。

「おーい。席移っていいかい?!

 知り合いに偶然会ったんで、一緒の席で食いたいんだ」


「良いですよ! 食事はこちらで運びましょうか?」


「大丈夫だよ」

男性は食器をトレーに乗せて立ち上がる。

すると、ぐらり、と、よろめいて、

トレーの上の、シチュー、ビール、ごはん、漬物が食器ごと宙に舞った。


「あぶない!」


瞬間、ランが、立ち上がり、手を伸ばしたかと思うと、

両手で二つずつ、四つすべての食器を、ビールが少しこぼれた他は、

何一つこぼさずに受け止めて見せた。


ウミネコ麦酒房の店内は満場の拍手。


照れたランは顔を赤くして、一礼してこたえる。


アイがランの頭をなでて、

「よくやった。すごいな。

 でも、やけどするかもしれないから危ないぞ。

 無茶したら駄目だからな」

と言っている。


ランはさらに顔をを赤くして、うつむいててしまった。

小声で「ありがとうございます。師匠」と言っている。


その様子を見てリリは、拍手をしながら、

「すごいな。やばいなアイの鍛錬」

と、つぶやいた。


シロは、そのとなりで、拍手しながら、

「私たちはもしかして、何かとてつもない武術家を育ててしまうところなのでは?」

と、つぶやいた。

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