人形の刀
「今日明日、臨時休業する」
リリが宣言した。
「シロ、宿泊費を払うから、急ですまない、今日は町の宿に泊まってくれ」
「それは構わないですが……、
どうしたんですか?」
「泥棒退治」
「泥棒退治?
そういえば、アイさんも?」
「準備中だよ。
さて、シロ、これから駐在さんも交えて準備するから、
荷物をまとめて宿に向かってくれ。
知り合いの宿でね。なかなか良いところだ。
天然の温泉もある。ゆっくりしてくればいい」
「私も何か手伝えれば……」
「だいじょうぶさ、
これも作戦のうちだから、
シロは、心配せず、ゆっくりしてくればいい」
シロは自室に戻り、荷物をまとめた。
外に出る前にアイの部屋のドアが開いているのが見えた。
椅子に、アイが座っていた。
「アイさん?」
近づくと、アイに見えたそれは、人形だった。
等身大の黒髪の人形。
椅子に座っている。
「それはね……」
リリがシロに声をかけた。
思わず「ひっ!」とシロが声をあげた。
「アイの大切な持ち物なんだ」
リリが少し苦笑いして言った。
シロはリリの腰に、アイがいつも下げている刀の鞘があるのを見た。
そして、鞘だけではなく、刀も、そこにはあった。