魔女のお仕事
ことり、とグラスをリリがレナの前に置いた。
レナが、サイダーを一口含む。
「おいしい」
リリが笑う。
「ありがとう」
レナがリリを見る。
「どうやら、お困りではないようですね」
リリがうなづく。
「はい、この子は私の大事な相棒です。
手放す気はありません」
また一口、レナがサイダーを飲む。
「貴方も魔女ですか?」
苦笑い。
「貴方から見ればそうなのかもしれないですね」
レナはリリの目を見る。
「……いま、幸せですか?」
笑う。
「はい、幸せです」
「あなたは、
このお店や生活は、
あなたの夢だったのですか?」
「いつからか、
夢になって、
いつからか、手に入れて。
大切な相棒と、
素敵な常連さんと。
素敵な友達。
あと、最近は店員もできて。
幸せですよ。
私とこのお店『ウミネコ麦酒房』を愛する人が居て、愛してもらえて。
私も、みんなを愛していて、ビールとサイダーで幸せにしてあげたくて、
お店を開いているのです。
ビール屋さんにとって、ビールを飲ませてあげたい人が居るのは、幸せです」
「あなたも、その、魔女であれば、
そのように生きなければならないと、
師匠に、言われた道があったのでは?」
「あなたの、呪いの品々を求めて歩くのは、
師匠の示した道なのですか?」
「はい、『これができる者は少ない。だから、我々はこのように生きる』」
「私は、誰かにお薬を作ってあげたり、お守りを作ってあげたり、
おいしい飲み物や食べ物を作ってあげるのが好きでした。今も好きです。
喜んでくれる人が居て。
……少しずつ、やりたくないことを減らして、そしたら、もっと、作りたいって気持ちが出てきて。
いつからか、お店がほしくなって、
今、このお店をしてます」
「あなたのように、生きれたら。わたしもしあわせになれますか」
なみだごえ。
「あなたの、幸せは、私には分からないよ。
でもね、いやなことがあるなら、やめていけばいいと思うよ。
好きなことがあるなら、もっとやってみればいいよ。
そして、それを喜ぶ大切な人を作るのが一番大事だ!
愛が幸せをつくるから。
……もしよければ、お友達になりませんか」
リリが右手を伸ばす。
レナも右手ゆっくり伸ばし、握った。
「……まずは、このお店の常連さんからめざします」
笑った。
「こわがりさんですね?
お友達になったからって、取って食いはしないですよ?
またこのお店に来ると言うなら、今日のお代は、その時につけておきましょう。また来てくださいね」
「休日にお邪魔して申し訳なかったです。
……またきます。今度はちゃんとお店のお客で。
そのときは、また、話を聞いてもらえますか?」
「もちろんですよ。またどうぞ」
カランカランと扉のベルを鳴らして、
レナは店の外へ出た。




