みんなで作った何かのほうが素晴らしいですか?
「どっちでもいいんじゃない?
だって、どのみち本当の意味で君は一人で立ってなどいない。
好きなほうを選べばいいよ。
仲間がいると心強いし、楽しい時もあると思うけどね。
苦しい時もあると思うけどね。
ピアノソロと重奏。
オーケストラとソロ。
バンドとシンガーソングライター。
好きなほう選べばいいんじゃない?
どっちも素敵だと思う。
『ルート3分の1』と『3分のルート3』が、違った意味合いではあっても、違った形はであっても、ともにに美しいように。
私はピアノソロを聴くのも大好きだし、
重奏を聴くのも大好きだし、
オーケストラを聴くのも、バンドのライブも、シンガーソングライターのライブも大好きだよ。
好きにすればいいよ」
ビールを飲み干す。
「愚痴っちゃてごめんね」
次のビールを注いで、カウンターに置く。
「いいさ。あなたの音楽が私は好きだから。
いつかこのお店でも弾いてよ」
ひとくち、口をつけてから話す。
「このお店の仲間はどうやって探したの?」
笑う。
「仲間を見つけるためのアドバイス?
『君の苦手なところ』や、『君がやるのが嫌なこと』を任せられる人と組むといいとは思うよ。
お仕事ってそうでしょ?
このウミネコ麦酒房だって、私一人で出来てはいない。
私がお店を開いたときにね、教えてもらったことなんだけど。
『自分がやって苦痛なことを書き出せ。それが求人票だ』って。
面白いもんでね、『私が苦痛なこと』が『得意で好きな人』って、結構いるんだよ。
世界って、社会って、本当はそうやって、誰かと誰かの好きなことが、組み合わさって、回っていくんだと思うよ」




