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店員希望の訪問
海鮫駅から正面の道は、上り坂になっている。
後ろは海。潮風のにおい。
進む先の丘の先に、沈みつつある夕焼け。
駅周辺から離れるにしたがって、家は減っていく。
それほど大きな町ではない。
だんだん手入れしていない草原が増え、
背の高い草で振り返っても海が見えなくなった。
さらに歩く、
影の多い森。
木の看板。
白壁の平屋建て。
「ウミネコ麦酒房」
木のドアを押して店内に入る。
きぃとささやかな音をたてて、ドアは開いた。
カランカランとベルが鳴った。
「いらっしゃい。ウミネコ麦酒房へようこそ!」