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四人目
著者:小倉ひろあき
「ば、バケモノだ……」
男を取り囲む兵士の誰かが呟いた。
硝煙の煙の中、平然と立つ男の皮膚は破れ、端々から機械がむき出しになっている――バケモノ、まさしく異形の存在である。
ちゃり、ちゃりと足音を響かせ、男は平然と回廊を進んだ。
「取り押さえろ!」
兵長が叫ぶが、どうやって取り押さるのか。兵士たちは完全に沈黙した。
すっ、と男が手を差し出すと、指先が火を吹き、兵長の頭が吹き飛んだ。
義手に火器を仕込んでいたらしい。
そこからは一方的な殺戮が始まった。
男が両手を広げ、一歩、一歩と進むたびに両手から火を吹き、兵士たちの命を平等に刈り取る。
死にたくないと蹲る者も、背を向けて逃げ出す者も、その正確な射撃の前に次々に倒れていく。
そして、男が扉の前に立つ頃には、回廊に動くものはいなくなった――機械仕掛けの男を除いて。
男は無造作に鍵をむしり取り、何事も無かったように先に進んだ。
了