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二人目

著者:栗栖蛍

 地下へ入り込んでどれだけ時間が経っただろうか。

 不気味なくらいに静まり返った空気が、潜ませた足音を拾い上げてカツンカツンと響かせた。


 俺の居場所はバレている筈だ。こんな石の回廊を歩かせといて、奴らはどうしようって言うんだ?


「こりゃ蜂の巣にされるな」


 ぶっとい支柱のギリギリまで寄って、曲線に手を這わせた。

 眼下に広がるがらんどうとした広間には、等間隔に石柱が並んでいる。


 どこだ?


 一つ一つを目で追う余裕はなかった。

 腕をそっと傾けて、袖口から覗くオートマを確認する。


 これだけで足りるか?


 そう思いつつ左右に一丁ずつ構えてトリガーに指を当てた。

 階段が途切れて、俺は石柱の影に身を寄せる。ここまで一発も弾が飛んでこなかったのは幸運だ。


「だいぶお行儀の言い奴等だな」


 石柱ごとに隠れた奴等の気配に俺は気付いているし、俺がどうしたいのかも奴等は知っている。


だから、ここで待ち構えていたんだろう?


「やってやろうじゃねぇか」


 俺の誘いに答えるように、三列先の石柱の向こうに火が噴いた。弾は俺のすぐ後ろの地面にめり込む。

 その一発を皮切りに、一斉に広間が耳を劈くような音と火薬の臭いに満ちた。 俺以外の全ての銃口が、こっちを狙ってくる。

 一発目、俺は石柱の影から最初に俺を狙ってきた男をターゲットにした。流石だと自分で称賛したくなるくらいに男の額を撃ち抜くことが出来た。

 声も上げず、上半身を石柱の影から晒して地面に崩れるその姿に、頭が興奮してくる。こんな所最初は来る気もなかったが、結果が出ると気分が良くなるものだ。

 俺は中央の通路に歩み出て、全方向へと銃を構えて見せた。

 触発された兵士たちが次々に姿を現す。


「行くぜ」


 銃の音が再び交錯して、俺は一人、また一人と男たちを撃ち抜いた。

 しかし、弾は片手に十発ずつしかない。切れるのはあっという間だ。

 「チッ」と吐いて、俺は再び石柱の影に入り込んだ。

 息絶えた兵士の横に転がる、主を失った自動小銃を蹴り上げてキャッチする。俺は用済みのオートマを手放し、石柱の端からホールの端を見やった。

 パンと飛んでくる弾に一度顔を戻して、銃口を素早くその方向へ滑り込ませた。

 ダン、と一発で断末魔が咲く。

 爽快だった。笑いさえ込み上げてくる。

 自動小銃の残弾は五発。俺は再び中央へ躍り出て「来いよ」と奴らを煽った。

 すると満を持したように一番奥の扉の横から数十の兵士がわらわらと姿を現す。


「そんなに居たのかよ」


 まぁそれも予想の範囲だ。奴らの背後に立ち塞がる閉ざされた門が、最終防衛線。

 一発ずつ撃ち込んで、再び弾切れになる。

 しかし俺は大分悪運が強いらしい。銃の先端には短い剣が装着されていた。

 敵はまだ居るが、勝機は俺にあると思っている。

 血まみれの屍を超えながら、俺は目の前の敵に切っ先を突き付けた。

 変わる銃は幾らでもある。俺が倒した人数分だ。

 その広間に静寂が落ちるまで、そう時間は掛からなかった。

 最後の1人が心臓に弾を受けて仰向きに傾いでいく。ドスリと肉の跳ねる音がして、血だまりが広がった。


「楽勝」


 返り血を浴びたジャンパーを脱ぎ捨てて、俺は最後に殺った男の銃を拾い上げた。


「さぁ、次はどうする?」


門を睨みつけて、俺は足を振り上げる――。


 end

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