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大会メンバー決まる

 機械という技術が発展しても、まだ魔法は学校のカリキュラムに組まれていた。魔法学という教科では、今や大部薄れてしまった魔力を維持、また強化するための訓練が行われている。この世界において、魔力はあらゆる場面で頻繁に用いられている。例えば、料理人であれば、魔力を料理に込めることで、コクを深くしたりするし、魔力により脳内を活性化させることで、高度な暗 算ができたり、長く息を止めたままでいられるなど、実に様々な用途で用いられている。


「はあああああ」

 智は水で満たされたガラスのコップに力を込めた。ブクブクと水が泡立ち、お湯へと変わって行く。

「ふぅ、疲れた」

「おい」

 後ろからコツンと頭を叩かれ、智は飛び上がった。

「って、星野か」

「隙だらけだぞ」

「仕方ないだろ。集中してたんだから」

 特定の場所に魔力を集中することで、強化したり、その性質を変化させるのが、魔力の正しい使用方法だが、副作用として、魔力を集中している間、それ以外の部分がおざなりになってしまう。この世界の人間は、常に、一定の魔力を全身に循環させているが、魔力を集中すると、その部分以外は魔力が循環しなくなる。その状態だと、魔力が循環している時には、かすり傷で済むような怪我でも、重傷になってしまうなど、色々とデメリットがあるのだ。


「魔法学を極めれば、マジックボールも強くなるかな」

「どうだろうね、俺は知らないけど」

 ふたばは遠い目をしていた。こうしている間にも、昨日の練習が思い出される。


「良いか、我々は常に魔力神経から流れる魔力によって生活している。スポーツをする時もそうだ。そして、あらゆるスポーツの中で、魔力を最も使用するのがマジックボールだ」

 美月はラケットで球を打った。するとボールが金色に発光した。

「魔力を込めて打つ球を、魔弾という。マジックボールでは、この魔弾を打つことが基本となる。そして、魔弾の色によって、我々は4つの選手タイプに分けられる」

 

 美月は説明した。マジックボール選手には、全部で4つのスタイルが存在する。それは、プレースタイルのように、努力により変更が効くものではない。生まれつきのものだった。

 

 一つがパワー。これはボールが赤く発光する選手のスタイル。回転と速度は鈍いものの、非常に重く、片手では打ち返せなかったり、ガットを突き破ることがあるなど、打球の威力にものを言わせて戦うスタイル。 


 二つ目がスピード。これはボールが青く発光する選手のスタイル。非常に速いボールを打つことができ、また回転数も多い。反面、打球は軽く、当たれば、簡単に打ち返されてしまう。

 

 三つ目はトリッキー。これはボールが紫色に発光する。レアなスタイルとされ、ボールの性質を変化させることができる。例えば、ボールをゴムのような弾力あるものにしたり、粘土のように柔らかくすることができる。また逆に、硬質化させることも可能らしい。


 最後がオールラウンド。ボールが金色に発光する選手のスタイル。パワーとスピード、両方の要素を併せ持つという、ハイブリッドなスタイル。トリッキー同様のレアもので、このスタイルの選手は、世界でも数える程しかいないという。


「皆、自分のスタイルを理解しろ。それが強くなる最大の近道だ」


 その日の帰り道、ふたばは月本ユカに話し掛けられた。彼女は智の元カノであり、黄色のショートヘアーで、右目だけ髪の毛に隠れていた。見るからに変わり者というような雰囲気をしていたが、美人だったので、何をしてもそれなりに絵になる。ただ、智を自分から告白しておいて、一週間で振ったり、その後も、一週間置きに、彼氏を取っかえ引っかえしていたという話からも、彼女は普通では無かった。


「お疲れ様。星野さん」

「あ、ああ、お疲れ様です」

 月本ユカは天王寺美月と同じ三年生で、三年生の部員は彼女と美月の二人しかいない。だから、自然とふたばも敬語になった。

「にへへ、今日は勉強ばかりでほとんど打てなかったから、どう、あそこの空き地でデュエルしない?」

「シールドも無いのにですか?」

「入らないわよ。ただ、線だけ引けばね」


 何故か、成り行きで月本ユカと練習デュエルをすることになってしまった。サーブはふたばからで始まった。


「こっちも退屈でイライラしてたんで、悪いけど、乱暴に行きますよ」

 ふたばはスピンサーブを放った。ギュルギュルと左右に激しく回転するボール。

 月本ユカ目掛けて跳ねるボール。しかし彼女は、それを打ち返そうともしない。寧ろ、ボールから背を向ける。


「悪いけど、こっちも暇じゃ無いの。受験勉強もしながら、マジックボールにも打ち込んでね。その闘志、来週の大会で見せて貰おうかしらね、にへへ」

 不気味に笑いながら、ユカは帰ってしまった。

「ちぇ、つまんないの」

 ふたばは手先でラケットをクルクルと回しながら、その背中を見送った。


 その日の夜。ふたばが風呂に入ろうとすると。後ろから剛造が現れた。


「おほん、双葉よ。ワシと一緒に風呂にはい、ぐはぁ」

 ふたばは手にした桶を剛造の顔面に投げ付けた。

「このエロじじい。テメー、何が目的だ」

「エロじじいとは何だ。ワシは、ただ、孫との交流をな」

「何が交流だ。男の時は近付きもしなかったくせに」

 しばらく言い争いをしていると、ピロリロリンとメールの受信音が聞こえて来たので、携帯を取り出すと、天王寺美月からだった。


「へぇ、大会のメンバー発表か」

 そこには、来週の全国大会での太陽学園の参加メンバーが書かれていた。

 先鋒・海王水樹、次鋒・木戸麻美、中堅・星野ふたば、副将・月本ユカ、大将・天王寺美月となっている。

 マジックボールには、テニスなどに見られるようなダブルスは存在しない。試合をデュエル、つまり決闘と表現するように、一対一で行うのがルールとなっている。

「それで、補欠は金城さんか」

 ふたばは携帯を閉じた。

「じいちゃん、楽しみだよ」

 ふたばは瞳の奥にメラメラと闘志を燃やしていた。

 


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