表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/30

「猫目月の視線」

前回に引き続きテンション高めにする前に、蒼紫邸、最後の住人の話も入れます。

ワタシは少し寒い日に『奥様』に拾われた。


生まれて少しか経っていないワタシ達をあの家の人は箱に入れて、人気のない山沿いの木の近くに置いて去って行った。

それから直ぐに夜の寒さの中、数日で6匹いたワタシの兄弟達は朝起きるごとに動かなくなっていった。


ワタシ以外の兄弟達がみんな動かなくなった日、自分の体がほとんど動かなくて苦しいと思った。

他の兄弟達がいた時には感じなかった。

何だろう?分からないけどこのままでは嫌だと思った。

だから今までした事はなかったけど″立ち上がって″みた。

驚いた。

今までと見え方が全く違う。

初めての事に興奮して箱を出て少し歩いていた所で振り返る。

こんな事なら兄弟達が動かなくなる前にみんなでしてみるんだった。

みんな一番小さいワタシを囲む様に寄り添ってくれた。

どうすればいいかは誰にも分からなかった筈なのに、ワタシはみんなに守られて今も動いているのだと思った。


お別れに一度戻って、みんなの匂いを嗅ぐように鼻を押し付けてワタシはヨロヨロと歩きだした。


長いこと歩いた。

一度明るくなってまた暗くなって。

その間に竹林を越えた。


急に明るくなった気がしたので足を止めた。

何て綺麗な灯りなんだろう?

壁にくっついたキラキラした物が光っている。

ワタシは気になって暫く眺めていた。


どのくらい経っただろう?

こっちに近付く音に気付いた。

何だろう?


それは人だった。ふたりいる。

思いながら目の前をひとりが過ぎるのを見送るともうひとりが目の前に差し掛かった。

何だか元気がなさそう。

ワタシと同じだ。

そう思うとなんとなく「ナー」っと、力無い声が口から出ていた。

同時にその人は辺りを見回し、ワタシのいる暗い場所、そしてワタシの近くに来た。


***


「真珠、おはよう。」

まだ眠いワタシの顔を『奥様』は覗き込み頭を撫でる。

ワタシ、コレ好き。


『奥様』は南月様って呼ばれてる。

あの夜からワタシは奥様の家にいる。

ここに来て少しして苦しくなくなってワタシは兄弟の事を思い出したから、みんなを連れて来たいと奥様の服をくわえて引き、奥様は不思議そうにしながらもついて来てくれた。

みんなの所に着くとワタシは走った。

何だかみんな小さくなった気がしたけど。

そんなワタシ達を見た奥様は何だか悲しそうな顔をして兄弟達のいる箱とワタシを抱えて家に帰った。


奥様は「真珠の兄弟?ここにいてもらうから、ね」そう言って庭の隅掘った穴にに新しい箱に兄弟達を入れて埋めた。

ワタシも何故かそうするべきな気がして、見つめた。


ワタシを奥様は『真珠しんじゅ』と呼ぶ。

たぶん名前ってやつだと思った。


***


あ、旦那様だ。

何してるんだろう?また、奥様に構ってもらえなくて沈んでるの?話し掛ければいいのに。ワタシが話し掛けると奥様は優しく話返してくれるよ?

変な人だなぁ。


少し離れた辺りから、今日も今日とて奥様に話し掛けそびれたらしい旦那様はワタシの方へ向かって来る。

どうしたの?持ち上げられた。

旦那様って、抱っこ下手だなぁ。奥様のは気持ちいいのに・・・。

「お前はいいな。南月と仲が良くて。」

何が?当たり前だよ?ワタシ、奥様大好きだもの。

「俺は話し掛ける事も出来なくてな・・・。一体どうしたらいいのか。」

そんな事分かる訳無いでしょ?変な人だなぁ、もお。この頃いつもこうやって分からない事話し掛けてくるの。

構ってもらえるのは嬉しいけど訳分かんない。


ワタシは今日も縁側で欠伸しながら奥様と旦那様のやり取りを眺めながら「旦那様って、残念な人だなぁ」とか思うのであった。

少し暗いですかね?

天才猫の真珠ちゃんです!

初めて蒼紫邸に来た時、南月が抱っこしてた子猫の。

旦那様の相棒(笑)です!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ