「晴天の霹靂?」
続けて投稿させていただきます!
「蒼耶様はどの花嫁を迎えるかしら?」
もうすぐ始まる『対峙の儀』を前に、向かいの廊下をぱたぱたと歩きながらはしゃぐ女中の会話が聞こえた。
どうやら自分についての話題のようだと眉をひそめる。
だが、さして興味もない。
何故なら。
「お前達には関係無いだろうに・・・。」
小声で呟き、肩を落とす。
だが、しゃべるのは咎めようとは思わない。
娯楽もろくに無い山奥に勤める女中達にしてみれば、久びさの浮わついた話題なのだから。
話題の種にされたが、諦めたかの様に頭をゆるく振り集合場所に急ぐ、蒼耶であった。
***
そんな事は知らない女中はまだおしゃべりを続けていた。
「ご子息様は4人とも美丈夫だけど、蒼耶様が一番かしら?」
「ご子息様4人は武芸も嗜まれるから、スタイルよしの高身長!でも、蒼耶様はさらにまっすぐな艶々黒髪!今は短く切り揃えてしまわれたけど、以前の背中くらいまでの長さも素敵だったわ!」
まさに!と、合いの手が入り、会話は白熱していくのだった。
***
『対峙の儀』、控えの間に3人の青年が集まっていた。
その1人は蒼耶で、後の2人が三男と四男だ。
「兄さん、花嫁選びですが。」
線の細い、やはりまっすぐな黒髪の中性的な青年。
三男『朝斗』か蒼耶に話しかける。
何だという返事を聞いて、朝斗は手元の紙に視線を向けながら口を開く。
「年齢順がいいと思うのです。」
「まあ、朝斗兄さんなら一番歳上の女性でもひとつ下だから、問題はないけど、だれがお姉さんかがややこしいからね。」
横から口を挟んだ、少し癖のある黒髪の青年。
四男『厳樹』が肩をすくめながら近付く。
やはり、そうだろうな。
婿より花嫁が多い場合ならいざ知らず、今回は全てがギリギリなのだ。
順当に、か。
ただ、それでもどうなるかは分からない。
「まあ、まずは会ってからだ。」
少し困った顔の二人。
もし、その手の花嫁のいざこざがあれば手を焼くのは俺だ。
気にしてくれた弟達の気持ちはありがたいが、ここで何を言っても始まらない。
そろそろ時間だ、と顔の見えない顔見せに赴く。
御簾の向こうにわずかに見える小柄な影が3つ。
あれが花嫁達で、明日の妻になる女性。
やはり、なにもわかりはしない。
これだけ離れており、なおかつ御簾越しでは。
何よりこの儀式は、お互い名乗り合いするだけのもの。
叔父達は何を基準にしたのだろうか?
考えている間に、進行役の親類が花嫁達に名乗る様に伝える声がして、改めて前を向く。
どうやら、年少かららしい。
27歳の『柴沢 実鈴』。
29歳の『綾原 紗奈』。
そして最後の1人の声が響いた。
32歳の女性である。
『音袙 南月』と、他の2人とは違う雰囲気で名乗った気がした。
だがそれより彼女の声を聞いた時、何か無性に気になり。
何か無性にあんしんした気がしたのだった。
最後の南月が他と違うのは、気乗りしてないので反抗的なだけです。