「突然のお見合い」
説明会です。
何度か聞いた事のある話だったけど、当時私はまったく関係ない事だと聞き流してしまっていた。
それがまさか今になって影響するとは誰も思っていなかったのだから。
私が聞いた話は「私たちの一族が昔住んでいたお屋敷があり、お手伝いさんに囲まれて暮らしていた」という母の話だった。
蔵もある、ずいぶんなお金持ちだったとも聞いている。
何故そういう話になったかすら分からない。
でも、まずその話から切り出されたのだった。
ただその話があまりにも長すぎて眉間にしわを寄せたあたりからようやく本題に入ってくれた訳だけど。
要するに、うちの血筋は元をたどれば分家筋ではあるが華族の血を引いており、今頃になって本家筋からある理由で招集がかかったのだという。
そして内容だが、本当に一方的で腹の立つものだった。
―――20代半ばから30代半ばの未婚女性を本家にて見合いさせること―――
いったい何時代の考え方なのかと本気で頭を抱えかけて、しかし辞めた。
何故か、それを話す両親の視線や態度が気になったからだ。
いつもの束縛とは少し違う色味を含んでいるような気がする。
どうもこの話には乗り気という訳ではない、という空気が漂っている。
何か利益があって私にこの話をしているのかとも思っていたけど、どうやら今回の案件は今までと毛色が違うらしい事が私にも分かった。
ただそれが何かは分からない訳だけど。
何がどう違うかと、詳しい話が聞きたいと両親に視線を移した。
この家はわずかとは言え華族後を引いているのだと父が再び言葉を発した。
だが、話は全く違う方向へむかう。
「子供の頃に見た夢でしょ?」
話を聞いた私の第一声はそれだった。
何故、もう忘れてしまいかけていた「怖い話」が出て来るのよ?
幼い頃に体験した不思議な、内容も既に曖昧な出来ごと。
その危険を察して事前に切り抜けた幼い頃の私。
あの時、何故危ないと思ったのか?
何か変な感じがしたとしか言う事が出来なかった事だけは覚えている。
不思議な力の扱い。
本家はそういう事を扱う司祭の家らしい。
裏の日本とでも言うのだろえか?
政治家なんかからも相談が来る、そういう血筋の家。
そのしきたりのひとつが今回の「お見合い」もとい、「花嫁選出」らしい。
「拒否権は無いんだ。」
父も息苦しそうに言う。
何故?
口には出さない。
だけど、目で反論する。
父は顔を背けた。
本当に何なの?
苛立ちを込めて見据えたまま口を開く。
だが、同時にそれまで黙っていた母が声をあげた。
私は噛みつく様な視線を向け、同時に泣きそうな母と目が合う。
「家族の為なの・・・。ごめんね・・・。」
最後の方は消え入りそうなまま掠れた。
政治家とも繋がりがある。
なら、何の権力も持たない一家など、どうにでも出来るのだ。
私1人の問題ではない。
親兄弟、近しい親類全てに圧力がかかる。
何なんだこれは、と。
私はギリリッと噛み締め、迎えの車に乗った。
沈んでますね。
えー、一応何だかんだで家族は彼女を(いびつながら)心配し大切には思ってます。
多分、この一家の事で済むなら拒否していたもようです。