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「紫陽花の不思議(じかく)」

遅くなりました!

すみません!

今回、南月のポヤポヤ独り言です!

最近、何か違うんだなぁ。

いや、疲れも溜まっているからとかもあるけど、今は他の事ね?


天守家、次男嫁は珍しく習い事のないその日の昼下がりを縁側の日向ひなたで過ごしついた。

膝には家猫の真珠が丸まっている。

何が違うのか?

本当に。

気がついたのは先程の昼食の席でだ。

女中の愛乃さんが「本日、旦那様は早くお戻りですので、夕食はご一緒なさいますね?」と声をかけてくれて、そうするよう返事をしたら「はい、最近ご一緒の方が楽しそうですからね」とニコニコしながら他の女中さん達も頷いたのだ。


楽しそう、か?私が?

そうだろうか?

確かに以前よりは旦那様に警戒心を抱いたりはしていないとは思うのだけど。


あの一週間前の『歓談の宴』の一件以来、確かに蒼耶だんなさまと過ごす時間は増えている。

一日に一度は顔を合わせないと何か足りない気もする。

落ち着かない?と言うのかな?

逆に、一緒にいると何だか落ち着くし。

ただ、楽しそう?

どうなんだろう。


考えているといつの間にか膝の真珠が私を見上げて来ていた。

「私、旦那様といる時楽しそう?」

思わず口をついて出た独り言とも、真珠への問いかけともつかない言葉。

飼い猫は一度首をかしげしばらく他所へ視線を向け、再び私の方へ向き「ナー、ナー、ナー」と鳴きまた膝の上で丸ってしまう。


やっぱり真珠は何か私達に色々考えを言っている気がする。


つくづく思う。

旦那様が話し掛けた時も相槌あいづちをうち、返事だとばかりに鳴き返すのだから。

そんな事を考えながら再び「楽しそうだった」と言う事について思考を巡らせてみるものの何も出てこない。

ただ、気になる事はある。

今まであの人を、何だかんだと言って反発からか見ていなかった気がする。

必要最低限の接触?と言うのかな?

だからどんな人かもよく分からないのよねぇ、本当に。

何となく完璧だとか、優等生みたいでもの応じしなさそうだなぁ、とか思っているけど。

実際話をしたのも、あの神話を聞いた日くらいだと思う。

だから、少し探りを入れるっていうのは変だけど、観察してみたりしてる。

一応夫婦なのに何も知らないじゃあ、あまり良くないだろうから。


最初はいつもの挨拶にひと言付けてみたりしたのだけど、何て言うか・・・。

固まられた。

いや、いきなりだからね、それは。

ただ、少し慣れたのか三日目くらいからは固まらなくなったけど。

代わりに・・・あの、キラキラスマイルが返ってくる様になったのよ。

どうした⁉旦那様!

あの『歓談の宴』の後にしたやつ⁉

あの時初めてまともに顔を見たら、あれが返ってきたから固まってしまったよ⁉

言葉可笑しくなるレベルで!


ただ、当初のイメージは撤回したい。

だって、なんだこの人?

完璧でも優等生でもなくないかい?

何だか、カワイイのだけど・・・。

真珠かいねこはいるけど、ここまでじゃないよ?

いや、失礼承知で言うと旦那様、アナタは犬ですか⁉

しかも大型の美犬‼何言ってるか分からないですけど!

尻尾があったら凄い勢いで振り回していそうですよ⁉

いや、異性という感覚がなくていいですがね?

あまり、得意でないので。



夕方。

「奥様?顔色が優れない様に思えますが、休まれますか?」

一日の勤めを終えて旦那様が帰ってくるのでお出迎え準備。

それを待っていると愛乃さんが心配そうにしてくれた。

まあ、確かに何か違う気はするんだけど。

「そんなに凄い?」

「いえ、少しです。お辛いようならすぐに声をかけてくださいませ。」

一礼して脇に下がる。

相変わらず、綺麗な動きだなぁ。

そんな事を考えていたら旦那様が帰ってきた。

うん、まーたキラキラスマイルがきた。

馴れた様な、馴れない様な。

あ、不意打ちはダメか?


何にせよ、カワイイ犬な感じで落ち着くのかねぇ?


「南月、どうした?」

「はい?ああ、別に。」

流石に本人の前で犬みたいは不味いね。

気をつけとこ。

そうこうしている間に夕食の膳を前に座る。

と、ここで「アレ?」とか思うのは気のせいかな?何か、違和感があるのだけど・・・。


夕食の間は何故か真珠の話になった。

どうしてこうなった?本当に。

「真珠は本当に会話をしてくれている気がする。」

旦那様が真顔で何を言っているのだか、と少し可笑しくなり口もとが緩む。

「・・・。」

「?」

ん?何で私を見て笑うんだろ?


並んで中庭を眺めながらしばらくあれこれと会話をしていたが、そろそろいい時間だとお開きになる。

さて、寝ようかなぁ?

よいしょっと、立ち上りかけた。

だが立つ事は出来ず、次の瞬間にはふらつきながら座り込んでしまっていた。

あ、これ倒れるな?頭もボーッとして、音が反響しているし。

思いながらとりあえず衝撃に備えた。

しかし、いつまで経っても衝撃は来ず。

変わりに何だか落ち着く様な感じがして、見上げる。

ああ、旦那様が受け止めてくれたのか?重くないですか?

「南月!大丈夫か⁉」

・・・心配してるんだよなぁ、これ。

いや、大丈夫ですよ?顔、必死だな。

でも、多分ただの疲れだな、この感じ。昔あったよ、こんなやつ。休めば大丈夫なやつだ。

そう、ふわふわしているであろう口調で告げるが、なかなか放してくれない。

時間が経つにつれ楽になって来ているのだけど。

「旦那様、もう平気ですよ?もう休みますし。」

「・・・。」

あ、いや、何です?逆に苦しくないか、これ。

ギュッ、て。

「南月・・・。」

ん?呼びました?あぁぁ⁉

「あ、あの、もう平気ですよ、本当に。」

近い‼顔!近いっ‼何だ、何だ⁉

いや、あの、首のとこ頬ずりとか、旦那様⁉

はわわわわわわ、ってどうするんです⁉これ!

多分、パニックだ。

「・・・南月。」

何ですか⁉

「嫌、か?」

は?何が?

あ、ああ、この状態か。

いや、別に。

と言うか旦那様、何気にたくましい腕?してますね~。

じゃなくて、か。

「そんな事は、ありませんけど。」

いや、ああ、カワイイとか犬みたいとかすみません!

カワイイけど、安心してます!

父性?

そんな感じなのかな?よく分からないけど。

思いながらも、見上げると・・・。

何て言うか、そのカワイイは違ったかもしれない。



結局私は、すぐに現れた佳純さんに回収され自室へ戻った。

ただ、何だろう?

さっきは色々パニックになっていたから分からなかったけど、アレ。

「嫌、じゃあなかったんじゃない?」

変な感じだ。

責任云々の筈だけど、家族以外に大事にされるって考えた事なかったからよく分からないけど。

何だか居心地が良かった気がする。

何だろう?


ポヤポヤと考えながら眠りについた、私。

ただ、翌朝の女中さん達の視線が何故か生暖かった。

何で?

「旦那様、どうしちゃったんですか?」

次回、そちらです!



ブクマと評価、ありがとうございます!

まだ続きますので、よろしくお願いいたします!

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