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「護り木の話」

今回は『天守家』の始まりと、何を守っているのかと言う話です。

使用人を使い他の嫁に危害を加え途中で『歓談の宴』が終了と言う前代未聞の事態から一夜明け、俺と南月は本邸に来ていた。

勿論、先日起きた様な事が今後起きない様に対策する為に。

まあ、話す事など先日考えていた内容そのまましかない訳だが。

その後は運悪く紗奈あのおんなの夫となってしまった朝斗が謝罪してお開きとなった。



正直、南月を蒼紫邸うちからあまり出したくはなかったのだが。

だからといって閉じ込めておく訳にも行かない。

とは言うのも今日は、まあ、あれだ。

俺が近くにいてほしかっただけだ。

南月を連れ出したのも、それだけの事なのだ。


しかしだ、何故か兄上夫婦には気付かれていたが。

そんなに顔に出ていただろうか?



帰りはやしろの脇を通りそのまま帰路につけばいい。

少し散歩して帰りたいと思った。

南月も邸宅から殆ど出る事がないからか、了承してくれたので少し歩く事となった。


***


昨日は遅くまでゴタゴタして、今朝は本邸へ呼ばれて当主夫婦と話し、旦那様の弟さんに謝られた。

あの一件は彼のお嫁さんが起こした騒ぎだったらしい。

知らない人だが、何処で恨みを買うか分からない。

やはり、旧家とかは怖いところだわぁ。

気をつけよう。



しかし、久しぶりに私の住む家から出た気がする。

旦那様も散歩でもして帰るかと話していたから、そうする事にした。


「・・・?」

フッと前方の、あれは何だろうか?

何かの祭壇の様にも見える。

刻まれた紋章は私の住む家や屋敷、敷地内の至るところで目にする気がする。

家紋ではないようだけど?

「南月?どうかしたか?」

立ち止まった私に旦那様が話し掛けながら傍らに立つ。

「この祭壇は何ですか?」

目の前にある深い紫の布や銀糸で装飾された祭壇を示すと、一度「ああ」と頷き旦那様は口を開いた。

「南月はまだ嫁入りしてから日が浅いから教えられていなかったな。これは我が家、天守家の奉る『竜の女神』の護り木だ。」

えーと、それ私、知らなくてはいけない事なんじゃ?

思わず「そんなの知らないけど、私聞きのがしたか?不味いなあ」と視線を反らすと、察した旦那様は″まだ″知らなくて良い事だと言う。

本来は当主嫁の仕事で、その補佐の際は確かに知る必要はあるが関わる事が出来る様になるのは嫁入りして一年は経たなければならないのでそれまでは知る事もないという。


なんだ、いいのか。驚いた。

でも、一年経ったらまた何かを覚える事になるのか。

一足先に分かって良かった。

何せ、今でもいっぱいいっぱいなのだから。

手探りは遠慮したい。

だからか?

一体どんないわれがあるのかと、気付いたら隣に立つ蒼耶に訪ねていた。


***


「どんな謂れがあるか、とは?『竜の女神』についてか?」

南月が天守家うちに興味を持ってくれている。

正直、嬉しくて頬が緩むのを引き締めながら、何処から話そうかと思案する。

「謂われそのものはかなり奇天烈なものでな、『別の世界の女神』がこの辺で起こった災害を防いで加護をとある木に授けた話だ。」


ーーー

遡れば古代日本。

空を覆う不気味な光が現れ木々は枯れ、大地はひび割れたとす言う。

人々はその絶望的な世界で全ての終わりを悟った。



だが、突如空を覆う不気味な光を白銀の光が引き裂き地上に差し込む。

そして、光の中からその背に巨大な幾重になる翼を持つ、純白の衣を纏った銀髪の女性が降りった。

そして、女性が手にしていた光を固めて作った様な杖を振ると不気味な光は消え失せ、白銀の光が現れ世界を癒した。

次に青い空が戻り、絶望は終わりを告げた。

人々は女性に歩み寄ると感謝を伝えた。


まだ少女の幼さを残した女性は恐ろしいほど美しかった。

左目は深い紫。

右目は鮮やかな緋色で、何か生き物を模した様な模様の刻印が浮かんでいた。


厄災の起きた中心に、彼女は土地せかいを護る力を残した。

後の御神木である『現実うつつみの木』である。

時空そらの護り木』とも言うそうだ。


彼女は「未来いつか私が生まれて来る世界を守ってほしい」と言うと天に立とうとした。

最後に人々は救い主の名を尋ねた。

『竜の女神』。

そう名のって『竜の女神』は天に帰っていった。


その後、土地の長は自身の名を「てんを守る家」とし、『天守家そらもりけ』と名乗った。

ーーー


「この文様は『竜の女神』の『右目』に刻まれていたものを模したらしい。本当に昔のおとぎ語りだ。しかし、御神木が不思議な木であるのも確かだがな?これはその木を模した物だ。」

隣に立つ南月は不思議そうに俺を見ていたが、今度は祭壇に視線を移し口を開く。

「銀の女神、様?」

「どうした?」

一瞬呆けて、ハッとこちらん向く南月。

「何だか似たような話しを・・・。何処かの田舎の神社の舞の役にそんな話があった気が・・・。」

何だと?いや、神話とは各地に似たようなものがある。

だが、気にもなる。


ただ、それ以上は南月も分からずその話しはそこで一度終わるのであった。

なんちゃって神話。

なんちゃって裏歴史。

ご都合設定、全開でした!

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