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「活花(いけばな)達の品評会」

遅くなってしまい、本当にごめんなさい‼

始まります!

「揃った様だな。」

この天守家の長男にして当主、かさねが宴の席に視線を巡らせながら口を開いた。

同時に感じた、非常におかしな空気と雰囲気に眉をひそめる。


何だこれは?


胸中で苦々しく呻いてしまった、襲。


本当に空気が悪い。

何故だ?

何故、蒼耶達夫婦に視線が集中しているんだ?


***


「・・・。」

誰も、ひと言も発しない。

ただ、ある二人の方を見つめている。


ある者は何とか抑えようとはしているが全く隠されていない鬼の形相で睨み付けていた。


ある者達は驚きやら納得やらの降り混じった、若干羨ましそうな目で。


ある者は何か珍しいものを愛でる様に。


ただ、その場にいた誰もの視線が″ある二人のうちの女性の方″に集まっているのを、別の二人は上座から眺める。

そして、思う。


お前達、一体どうしたのか?と。


***


あれ?何なの、これは。私、何かしたかな?

広間へ足を踏み入れた直後に先に席についていた人全員の視線がこちらに向けられたのには、別段どうという事もない。

誰かが入って来たからだ、と思ったのだけど。

今晒されている視線は、多分違う。

怖いのや、珍しそうなのや、よく分からないものと色々あるけれど。

これは、私に向けられているものだ。


自覚した途端に焦りや混乱が頭の先から駆けて降りてきて、お腹の下辺りで固まり、熱くなったり冷えたりを繰返し始めた。

多分、顔には出ていない筈だけど分かったものじゃない。

同時に嫁入り当初の「やはり、いい事なんて無いじゃない!」と言う、ドス黒い感情が胸に渦巻き始める。


***


「さて、全員席についていた様だな。」

当主の襲の落ち着いた、しかしよく通る声が響いた。

各々に南月に集まっていた視線は上座に移る。

「花嫁達は我が家の一員になり、一ヶ月が過ぎ『後咲き花嫁修業』の期間も後わずかになった筈だ。」

とそこで一度言葉を切り隣に座る己が妻、瑞季みずきに先を促す視線を送る。

視線を受けて艶やかな黒髪を高い位置で結い上げた、大人しそうだが弱さは感じられない女性かキリッと前を見据え視線を巡らせて口を開くとやや低いが心地よい声が響いた。

「我が天守家では当主嫁以外は、結婚後に花嫁修業が来ます。″なぜ、嫁入り後に?しかも当主嫁でもないのに″と思われる事でしょう。まあ、本来は殿方にはあまり関係のない話ですが、助けになる為にも、全員聞いておいてください。」

無関心に視線を向ける、実鈴。

微妙に嫌な顔の紗奈。

内心の不満と不安からか、やや睨み付ける様な目をしている南月。

三人の嫁を一瞥した瑞季は一拍置き、再び口を開く。

「天守家に嫁が迎えられた際は、その二ヶ月後に一族への『御目見得おめみえの宴』が行われてます。どんな催しかは、読んで言葉の如く。その際に嫁が相応しき振る舞いが出来ているかを確めると言う名目で、様々な作法等に触れさせる為にお稽古での成果を発表する場があります。この『歓談の宴』はいわば、その予行練習にあたるのです。」

一息に言い切る瑞季。

三人とも反応はそれぞれだが、どれも嫌な顔をしている。

しかし、そんな事など気にも留めずニッコリと上品な笑顔を作り瑞季は言う。

「それが終わったら、歓談しましょうね?」

少女の様に軽やかな言葉が広くガラリとした広間へこだまするのであった 。


***


ああ、嫌だわ。

嫌われ役以外の何者でもないわ。

当主嫁の役目はいつも″メギツネ!″な、感じのものが多いわね?

だからつい、最後に年甲斐も無くお茶目したわよ?

微妙な顔をしていたけど、襲?後で話を聞きたいわ。

妻も嫁もひとりの女。

何でも旦那の思い通りには進まないわよ?

昔は「瑞季、瑞季」とデレてたのに、本当に、悪くはないけどもう少し可愛い気もほしいわ?

いつもこんな仰々しいのではなく、ね?


それにしても、一気にお嫁さん三人?

すごいわね?

まあ、その分花嫁修業の成果を見るのも大変なのだけど。

さて、三人とも、お稽古の成果はどうかしら?



楽器等に道具が次々と広間から運び出されていく様を密かに吐いたタメ息で送り出す。

よく頑張ったわ私や皆。

そしてその、結果は、何と言ったらいいのかしら?

紗奈さんは、さぼりかしら?本番は大変だわ。

明日からやり直しとしてお稽古に私も参加するしかないわね。

実鈴さんの方は完璧な出来だわ。

いや、私よりもスゴいかもしれない。

ただ、完璧を求めすぎて何か足りない気がするけど正直、紗奈さんで手一杯だからこのままにして進めましょう。

最後に南月さんだけど、彼女一般家庭だった筈、よね?

よく一ヶ月でこんなに・・・。

技術では実鈴さん程ではないけど、何だかいいのよね。

レベルは私にも迫る勢いだし、申し分ないわ。

今の稽古をそのまま続けてもらおうかしら?


さて、ここからは『歓談の宴』ね?本当に。

ただ何かしら?

空気が、雰囲気が悪い気がするけど。

私の手前じゃおかしな事にはさせはしないけど、これは大丈夫よね?

今回初登場の瑞季さん。

何か、南月に性格が似ている気がするんです。

書いた私も。

これ、偶然です。

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