「交差する宴絵図(うたげえず)」
すみません、遅くて短くて。
お久しぶりです。
さあ、波乱の幕が開きます!
落ち着いた間接照明の室内といえば感じ良く聞こえるが、その実は古くて薄暗い旧家の広間だとは。
やはり、私の思う嫁入りとは違うし、嫁入りとは本当に面倒だわ、特に金持ちの家ってのは。
『歓談の宴』。
天守家の『婚姻の儀』後、1ヶ月経過した頃に行われる催しのひとつである。
ひとつと言うのならまだ他にも何かあるのかと言われそうなので先に、″ある″と言う事だけは伝えよう。
何が?あるのよ『初見えの儀』と言うのが。
意味はそのままで、順ずる家々からかなり遠い縁戚まで。
かなり大きなホームパーティーで、しかも野外。
アメリカとかの金持ちがしてるやつ?ガーデンパーティー?分からないけどイメージは合っていると、愛乃さんが言っていた。
和風庭園でするの?とも思ったけど、するんでしょう?と、内心で自分で自分にツッコミを入れた。
正直、ただの品定めなんだろな。
話を戻すわ。
先程チラッとこの後行われる『歓談の宴』の会場を覗いて見たのだけと、正直「ここで会食して、楽しいか?」が、感想だった。
いや、暗いしだだっ広いし出席者、十人にも満たないのにガラガラだと思うのだけど。
会話なんか、何話すのかとか考えていたらまたお腹痛くなってきたよ。
「奥様。」
催しの事を考えていたら愛乃さんが「支度を始めましょう」と、迎えに来てくれたので、私は彼女達が選んでくれた″着物″を着るため控えの間へ歩き出した。
ただ、着替えた私見た旦那様のリアクションが謎だったな。
何だったのか?
***
儀式、儀式、しきたり、しきたり。
本当にうるさいわね。
古いばかりの旧家へ嫁に来てやったのに、扱いが可笑しすぎ!
旦那も最初は「田舎なもので、紗奈さんも不便だろうから」とかまってきてはいたが、今は顔も合わせない。
一体、何様よ!?
腹立たしい内面は何とか納め、横に座る旦那『朝斗』に視線をやるが、相変わらずこちを向きもしない。
正直、四男夫婦もどうでもいいんだけど。
向かいにも男女が並んで座っている。
『厳樹』と『実鈴』である。
厳樹もまだ用意されていない膳に視線を落としている。
隣の実鈴は不服そうに赤い着物の袖をいじっている。
この調子で歓談なんか出来るのかしら?
暇しなさそうな事といえば、今まで会った事のない次男夫婦を見物するくらいだけど・・・。
考えていたら、入口が微かな音をたてて開いた。
次男夫婦が来たのだろう、と視線を上げるとその場の全員がその姿をとらえたところであった。
そして、沈黙。
何なのよ、″アレ″は。
可笑しいじゃない!
旦那なんて目じゃないわ!何なのよ!
何で!?
紗奈は橙色の袖を握りしめた。
何で私が、次男の蒼耶の嫁じゃないのよ!
***
あれが蒼耶兄さんの妻、南月さん?
思わず隣に座る紗奈にチラリッと視線をやり、すぐ戻す。
自分たちの妻より年上の筈だが、遥かに若々しく愛らしい姿をしている。
雰囲気も慎みあるせいか、悪くない気がする。
兄さんは嫌われているが、南月さんに気がある様な事を聞いたけどアレなら、分かる気がする。
三男と四男は揃って考え、次男夫婦が席につくのを見守った。
***
深い濃紺色の着物の蒼耶相変わらず凛としたまま、そのやや後を追う南月は鮮やかな緋色の着物を纏い艶やかな黒髪はそのまま垂らしているので日本人形さながら。
そんな二人が席につくと、当主夫婦が上座の入口から現れたのだった。
南月はなかなか(実は)容姿にも恵まれているのですが、周りから冷遇(妬み?やっかみ?)されすぎて、常に自信がないので、気付いていません。