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「紫陽花の迷走」

サブタイトルそのままに、迷走してます。

ただのじれったい、付きまといになってますね。

本当はこんな人ではないのですが。

今日も女中さん達と屋敷の仕事に勤しむ事半日。

最初のお手伝いも実は何ら間違っていなかった事を愛乃さんから聞いた事により大分打ち解けて休憩しているところだ。

勿論、旧家の嫁らしく生け花だの琴だのと稽古事があるわあるわで夜はぐったりしているけど、以前から興味があったのでそこまでの苦痛でもなくむしろ生き生きしている気が我ながらする。

まあこれなら義務うんぬんがなくても「こういうのもいいだろう」とも思えるし。

まあ、旦那様が次男だし後継ぎ問題がないと言うのもあるが。

ただ、奇妙な事はあるけど・・・。


膝の上で丸まり、頭だけ動かしてこちらを見上げる白い塊ーーー飼い猫の真珠しんじゅの頭を撫でながら考える。

朝食の時にまず視線を感じて顔を上げると決まって旦那様と目が合い、そらされる。

まず、揃っての食事の際は必ずだ。

次に私が1ヶ所に留まっている時、視線を感じると振り返れば視線は合わずともいらっしゃるし。

何だろう?と、横目で様子を伺っていると、うろうろ、ウロウロ、UROURO・・・と、さ迷っている様が視界の端に映り込む。

この人、結構落ち着きがないのかね?

話し掛けたりしてこないし、どうしたものかと考えるが、一向に答えは出ないままだ。

あと、今膝の上にいる真珠に向かってポソポソ呟いてたな、今朝。

何か怖いなぁ。


***


「目の前に居るというのに・・・。」

全く話し掛けられない。

俺はそういう性格だっただろうか?と、ハタッと考える。

いや、生まれてこのかたそんな性格だった事は一度もない。

そもそも、次男とはいえ天守家の人間がそれでは。

だがしかし、現状はただ見ているだけなのだ、本当に。

想いを告げるどころではない。

何故か?

答えは単純な事に、南月がこの悩める蒼耶の事を何とも思っていないのだ。

舞台に引っ張り上げようにも、手も出してないし引っ掛かりもしない状態だ、話にならない。


なら、どうしたら思ってもらえるだろうか?

いや、まずは興味をもってもらうところからだろうか?

何とも情けないとも思うが、始まりからして酷かったのだし、まずは印象そのものをよくしなくてはならないかもしれない。

以前彼女は俺たちを「高慢な」等の言葉で表した事がある。

今もそのイメージのままなら今後、俺がどれだけアプローチをしてもその言葉すら″しきたりの為″としかとってもらえず、本気にしてもらえないかもしれない。

ああ、何と言うか・・・もっと普通に出会えていたら、と思いつつも普通であれば二人が出会う事はなかっただろうか?と、苦笑いが顔を覆った。


今までも恋愛に身を投じた事は何度かある。

まあ、それ以上は″しきたり″うんぬんの関係か、その事を無意識でも考えているのか進まず終わる訳だが。

それなのに、ここに来て目の前に表れた花嫁に惚れ込み、今更の様におろおろしている。

今までとの違いは決定された花嫁だと言う事。

その相手は自分の事を何とも思っていないという事。


今更な本気の片思いだ。

打開策皆無の。


そうしている間に南月の姿は視界から消えていたのであった。


***


「何だろう?あの人。」

南月は先程まで縁側にいたのだが、フッといつもの視線を感じ周りを探ると、いた。

この邸宅の主で、一応南月の夫の蒼耶が柱の陰に。

「何かしたっけ?」

睨まれている訳ではないし、何をされるでもないのだが目的が分からないのでどうしたらいいのか?

「真珠、あの人どうしたんだろう?」

腕の中で丸まったままの飼い猫に話し掛けるが「ナー?」と、首をかしげる様な仕草を返してきただけで、再び眠ってしまう。

そんな様子を眺めながら、聞かせるためともひとり言ともつかぬ口調で呟く。

「やっぱり、やりたい放題し過ぎてご立腹?嫌だなぁ、そういうの。亭主関白なのかな?」

少し気をつけて、おとなしくしとくか?などと内心で全く検討違いな事を考えながら、腕の中の飼い猫を抱えて直しながら洗濯物を取り込みに南月は向かって行った。

迷走、検討違い。

どれだけのすれ違が続くのでしょう。

次で少し旦那様の迷走が報われるかも知れませんが(笑)。

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