断面
女子高生の下半身がいた。スカートの上は無い。スカートは明るい青色のチェックで、ソックスは紺色。肌は若々しく、白く、ふとももはむちっとしており、ソックスの上にふくらはぎの肉が乗っかっている。彼女は階段を上っているところだった。思わず後をつけた。彼女との距離は縮まらない。やがて彼女が立ち止まった。追いつくチャンスだと思って小走りで追いかけると、彼女は片足を少し前に出して腰を曲げた。スカートの後ろが上がって、ふとももの裏が露わになった。いいふとももだ。それはともかく、断面はどうなってるんだろう? 回り込んでみたが、なぜか彼女を見る視点は変わらない。背伸びしたりジャンプしたりしてのぞこうとしたがムダだった。彼女はずうっと同じ姿勢を続けている。何をしてるんだろう? とりあえず距離をとってみるとまた歩き出した。また後をつける。やはり距離は一定以上縮まらない。歩きながら考える。「あの女子高生の断面は、どうなっているんだろう? 真っ黒? 真っ白? 光ってる? それとも内臓が見えちゃってるのかな……やだな。さわったらどうなるんだろ? さわれるのか?」そう考えてるうちに、彼女が階段を降り始めた。やった! これで断面が見られる! でも無理だった。彼女が階段を下りる速さはとても速かった。見下ろした時にはもう見えなくなっていた。いそいで追いかけて、見失わないようにする。それから彼女は階段を上ったり下りたり、立ち止まって何かをじっと見ていたり(上半身が無いのに見るとは奇妙だが)した。
彼女との距離は絶対に、一定以上縮まらなかった。こうなったら行き止まりに追い詰めてやろうと思い、そうした。彼女は地面に尻をつき、後ずさった。閉じた膝がかわいらしかったし、ふとももの裏からお尻まで、パンツまで見えた。興奮したが、一番見たいのは断面だ。のぞきこもうと近寄ると、突然キックをお見舞いされた。あやうく倒れそうになったが、踏みとどまった。彼女はY字バランスをするように足を上げていた(上半身が無いのでYにならない)。これは足技が強そうだ。ちょっと近づけないな……そう思って彼女から離れると、彼女は足を下ろして、警戒しながら行き止まりから出て行った。やれやれ、ダメか。また彼女の尾行を開始した。断面はなんとしても見たい。断面といえば、人魚の断面はどうなってるんだろうか。人魚は上半身が人で下半身が魚だ。いったいどこからが魚の肉なのだろうか? 人と魚の境目はどうなってるのか。人肉か? 魚肉か?
下らんことを考えてると、いいアイディアが浮かんだ。鏡だ。鏡を使えば断面が見えるはずだ。どこかに鏡は無いか、そう思ってまわりを見回すと、一斉に何かが粉々になって崩れ落ちた。上からも砂のような粉が降ってくる。気づくとガラスが消えていた。それどころか、反射するものが無い。これはちょっと恐ろしいことだ。もう断面を見ようとしないほうがいいのだろうか。落ち込んでへたり込んでいると彼女が近づいてきた。見せてくれるのか? 彼女が身をかがめ、断面が見えそうになる。
彼女はいなくなっていた。なんかすーすーする。見下ろすと、彼女の下半身がそこにあった。