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一人の女を殺した男

俺の名前はスコット スコット・グロースだ

人型機動兵器というアニメみたいな兵器による戦闘が行われている、『大陸』と呼ばれる地にて戦う人間だ

最も、俺の仕事はそんなスーパーロボットのパイロットじゃない

生身による工作だ








「S、起爆を」

「こちらS、了解」

祖国のために

正しくは、祖国になる予定の組織のために、俺はこれから他の部隊員と一緒に敵の基地へ突入する 表では人型機動兵器同士がドンパチやってるが、構いやしない

精々派手にやって俺達のことが相手にバレないようにしてもらいたい

作戦はこうだ

訓練された歩兵部隊を三つに分け、別々の位置から基地に突入 中にいる敵さん皆殺し

どうだ、カンタンだろう? だからこそ有効だ

それに大陸で人型機動兵器ばっか使ってやがった奴らには、まさか歩兵が戦うとは思いもしないだろう

俺のセットしたプラスチック爆弾が起爆した 基地の壁はあっさりと破れ、人間が複数入れるくらいの穴が開いた

「突入」

指揮官が一言言うと、隊員は全員突っ込んでいった

途中基地にいた人間と何回か遭遇したが、サブマシンガンで射殺していった

通信で、敵のリーダー格が逃げ出したとの報告を受けた

俺は戦闘を突っ走っていた

曲がり角を曲がった


いた


銀髪の、やや身長の低い美女

そいつが俺達の最優先撃破目標だ

弾切れのサブマシンガンはとうに捨てた だからハンドガンを向けた

撃とうとした瞬間、基地全体が揺れた

狙いが狂い、放った弾は相手の腹に当たった

「なんだ、今の揺れは!」

隊員の一人が叫ぶ 任務中なのに私語とは、三流以下だろ

だがそれは俺も思っていた

確実に頭を撃ち抜ける距離だった 確実に殺せる距離だった

あの揺れだ あの揺れが無ければ今頃は

「仕留め損ねた、追跡する」

「待て、B分隊が近くにいる」

「了解した」

・・・そういえば、今回の作戦には傭兵が参戦していたな

デストロイアとアリシオンだったか 確かに連中ならこんな揺れを発生させる戦いもできるだろう

「基地内の残党を掃討する」


































何故だ

何故、何故なんだ

何故『死神』がここにいる!?あれは外の人型機動兵器とやりあってたんじゃ・・・

「くっ!」

いつの間にかB分隊全員からのシグナルがロストしたと思ったら・・・死神の仕業か!

隠れなければ・・・勝てるわけがない!

・・・パイロットが降りた?何処へ向かうんだ?

それに、よく見たら機体は中破している

一体何が・・・

あっ


キスを・・・した


死神が・・・あの、銀髪女と

まさか・・・あの二人は・・・

輸送機が降りてきただと?今度はなんだ?

金髪の女?泣きながら拳銃を死神のパイロットに向けてやがる

状況からしてキスの場面は見てないだろうが・・・

死神は・・・両手を上げて動かない

・・・二人とも、輸送機に乗ってどこかに行っちまった

・・・あの銀髪の女、死んでるのか

俺は・・・死神が大切にしてた女を殺したわけか

虚しいな

これが、戦いか

恋人同士を引き裂いて、その戦果を喜び合う

これが・・・白虎帝国に必要な・・・犠牲か











それから俺は、大陸から離れた 確かに、センチメンタル過ぎたかもしれない

あのとき三流以下だと小馬鹿にした隊員のことは言えないかもしれない

だが、それでも

もう人を撃つのはゴメンだ







それからどれくらいか経ったある日

大陸の方向から四つのキノコ雲を見付けたのはまた別の話だ

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