黒神
テスト1週間前になにしてんだろ。
「今すぐ案内させてもらうとは言ったけどさ"あいつ"えらくボロボロだったし飯だけでもあげたいんだけど…?」
最成は来た道を何の収穫も無いまま(美少女をgetしたのは置いておこう)引き返すことになるのは嫌なので麗緒にそう尋ねた。
「ああ、それなら大丈夫よ。"彼"が餓死するなんて万が一いいえ、億が一でもあり得ないわ。"彼"が時間だとか期間だとかを気にしているのかは知らないのだけれど"彼"2ヶ月は何も食べてないわよ。」
2ヶ月。"彼"こと黒神翔が兄、黒神秀の下を離れて経った期間を表している。
翔はひたすら西へ逃げ関東・関東地方から関西の近畿地方の辺りまで来ていたのだがそこで力尽き最成のアパートの前に倒れていたのだ。人間ならば行き倒れだとか、野垂れ死だとかそんな言葉が当てはまるのであろう。しかし、翔は違う。老いることも死ぬこともない。結果、倒れるに収まっていたのだ。
「2ヶ月…」
最成は絶句する。
普通の人間が2ヶ月も食わずに生きていられるモノなのだろうか。いや、そうは思わない。しかし、現に"あいつ"は生きている。麗緒が言っていることが真実であるという事実がそもそも定かでは無いのだが。
「何時間か食べなかったぐらいで、『しょ』、いえ、"彼"が死ぬわけがないわ。」
麗緒の言いかけた『しょ』と言うのは"あいつ"の名前の一文字目なのだろうか?
「"あいつ"の名前、『しょ』から始まんの?」
興味本位で聞いてみた。
「ええ、そうよ。」
予想通りと云うか、まぁ、そんな答えだった。
「名前知ってんのに、何で名前で呼んでやんねーんだよ。」
「仕方ないじゃない、名前には強大な意味が籠められているの。"彼"の名前を呼びたくても"彼"は"彼"の兄に名前に魔術を掛けられているのよ。その魔術がどんな風に作用するのかも分からない。だから、その魔術の解除方法を知るために遥々来たのよ。関東地方から。」
「魔術?実は、頭やばい人?」
訝しむように麗緒を見る最成。
そりゃあ、そうだろう。
「至って正常よ。私貴方より頭良い自信あるもの。」
そういう問題では無いのだがやはりどこと無く抜けた麗緒ちゃんなので仕方ないだろう。仕方ない、仕方ない。
「っと、着いたな。」
2人の前に現れたのは、聳え立つというのが適切なぐらい大きな、しかし老朽化が激しく壁には蔦がつたっているようなところなのでどこと無く小さく見える。
「うっわ~、とてつも無く不気味…。」
「ええ、そうね。」
「お~、すっげぇ!洋館すっげえ!」
バッと後ろを振り向く2人。
其処には、何と、まぁ、驚くことに翔がいたのだ。
「久しぶりね、黒神くん。あの時、名前で呼ぶっていう契約したのに守れなくてごめん。でも、黒神くんも守れなかったしいいでしょう?」
ここで、最成は初めて超絶美少年の苗字を知ることが出来たのであった。
フラグ回収して行こう。
次ぐらいから。
7月10日ぐらいになるけど。




