名前
「えーっと、美人くん。お宅何方さん?」
最成は苦笑を浮かべながら聞く。
「ん、えっと、分からない。」
名前を聞かれたことに対して分からないと答えた翔。
「え、えっと?」
「記憶はあるけど、自分の名前の記憶だけない。」
えらく集中的な記憶喪失だ。
「うーむ、如何名前を呼んだものか…。」
最成は首を捻る。
「あ、美人くん。着てる服制服っぽいけど生徒手帳入ってたりしないの?」
大抵の生徒は制服に生徒手帳を入れている。それを思い出して聞いたのだ。我ながら聡明だ、と思う。
「ああ、なるほど。」
翔はズボンのポケットから生徒手帳を取り出しペラリと1ページ捲った。
そして、苦い顔をする。
「嘘だろ…。」
何と、周到なことに名前の部分だけマジックペンで塗られていた。
「この際、あだ名とか決めちゃえばいいじゃん?」
と、いう最成のアイディアにより翔はあだ名をつけられることになった。
とはいえ、
「うーむ、名前も知らないのにあだ名決めるとかとてつも無く難しくね?」
あだ名、とは言ったが名付けとほぼ変わらない。
「何か、一文字でも思い出せねーの?」
最成はお手上げ状態である。
「ん、何も。ていうか、学校遅れない?時計無いから時間知らないけど。」
ちなみに、只今の時刻7:40
普段ならもう、電車に乗っている時間だ。
「うん、遅刻だ。」
最成は吹っ切れたような清々しい笑みを浮かべた。
「学校休もう。」
この結論に辿り着くまで約3秒。即決。迅速果断。
「あ、うん。」
翔はどう反応していいのか分からず目をパチパチしている。
「ま、こうやって出会ったのも何かの縁だ。上がれよ。」
こうして、出会ったばかりの翔を何の警戒心も無く家に上げた最成。そりゃあ、誰がこのボロボロ美少年を吸血鬼だと思うだろうか。
うん。警戒心大事。
テスト近いんで更新率下がるですー。←元々低い。
そろそろ麗緒ちゃん出す。




