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祈るということ  作者: 吾井 植緒
帝国編
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再会というもの

「そろそろお開きにするか。」


蛇王の一言で公子との面談は終了した。


「えー、まだまだおしゃべりしようよぉ。」


終了したったら、終了した。

ごねる公子の腕を掴むと蛇王はずんずんと歩き出す。


「ごきげんよう。」


わーわー、騒ぐ公子をよそにボクっ子がいい笑顔で挨拶したので、わたしもついでに手を振ってやった。


「ちょっ、ちょっと待って!初代ミコがミコ様を知ってるって言うんだ!どう思う?」


ん?


手が止まったわたしに公子がにやりと笑った。


「あ、ミコ様も気になる?気になるよね!向こうも気になってたみたいでさ。ミコ様の絵姿を見せたらさ、ミコ様の事知ってるって言うんだよ。そんでさ、初代ミコっていつまで経っても素性がわからないんじゃん。どの国もうちの人間じゃないって、連帯責任を逃れようとしてるにしてはおかしいよね。いっそ、誰それだからニセ者ですっていう国があってもいいじゃん?」


ほう。他人に興味ないわたしとしては前半はどうでもいいが、最後の方はちょっと気になる点だな。ミステリーも嫌いじゃないわたしはアゴに手を当てて、ふむと頷いた。


「そういうのって気になるともうダメなんだよね。解明したいってなっちゃう!」


「しかし神の使徒を知っているって、堕天した者だとでもいうのか?」


公子の言葉に蛇王も気になりだしたらしい、掴んでいた公子の腕を放して、意見を言った。


「そのようなお告げはありませんからね。初代ミコの妄言でしょう。」


ボクっ子がピシャリと言った。わかりやすく怒ってる感じの言い方だ。


「見たくない?初代ミコ。」


しかし、目を合わさずともわかった。公子が見ているのは、ボクッ子ではない。わたしだけだった。


「生きているうちに会うべきだよ、ミコ様。」


不穏な言葉と裏腹に、キラキラと光る紫の瞳が眩しかった。

なかなか文学的な事を思いながら、わたしは頷いた。流石に初代ミコ死んじゃうかもしれん、とか・・・多分処刑的な事だと思うのだが・・・なんか、リアルだなとビビったのだ。わたしは偉そうで実際偉いミコ様だが、もともとは小心者でもあるのだ。


「え~、会うのぉ。」


隣でボクッコがめんどくさそうに小声でささやいてきたが、無視した。


 ※


ボクッ子を通じて猊下と連絡を取り、隊長が張り切って帝国まで初代ミコを届けてくれるそうだ。神力を使えばすっとんで来れるらしい。相変わらずでたらめな、神力だ。

そういえば初代ミコってアフロだったな。初めて見るな、アフロ。意外と見たことないだよな、リアルアフロ。何色なんだろう。


「・・・クロだな。」


黒か、異世界にしては親近感のある色味だな。・・・ん?


「やっぱ、通じてましたね。」


「しかも初代ミコにかなり近かったと見える。」


「もともと探求心の塊みたいな人物のようですからね、初代ミコにアレコレ探りを入れてたみたいですね。」


なんかタイムリーな騎士たちの話に釣られてしまった。どうやらアチラの話題は初代ミコと公子の事らしい。


「確かに初代ミコってどこのどいつか最後までわかんなかったんだよねー。我慢強そうじゃない割に辛抱強く黙秘したり。逃げ出せないトコに幽閉した筈なのに抜け出せたりとか、得たいの知れないトコあって。なんか神殿内でも変な人望があったんだよね。」


あの人たちの気持ちはボクには理解できなかったけど、とボクッ子は遠い目をした。一体何があったんだろう。気になるがわざわざ聞きたいまではいかない、ふ~んとスルーのオーラを出す安定のわたしである。


「!・・・来ました!隊長からの通信です!」


騎士の言葉と同時に蛇王が勢いよく扉を開けて、駆け込んできた。


「おおい!飛んでくんなら場所選べや、ゴラァ!!!」


「まぁまぁ、ミコ様のご要望に早くお答えして、さっさと済ませたいだけですから。ありがたく思ってくださいよ。」


身長とガタイでは負けてそうだが、圧には全然屈していないセイが蛇王の胸板をちょんちょんしながら、アレは宥めているのだろうか。とにかく笑顔で止めている。


「ウチの建物は吹き抜け構造じゃねーんだよ!天井ぶち抜くな!!」


「隊長が張り切りすぎて、起点となる騎士が外に出る前に捉えちゃったんですよ。」


「修繕は神殿が持ちますから、ね。」


ワラワラと増えた騎士たちで蛇王の悔しそうな顔しか見えなくなった。歯ぎしりをして、蛇王はため息を吐いた。


「デザインはウチの国だ。指示通りにしろよ。ついでにさっさと済まそうぜ。」


おお、アフロの人との面会だ!わたしにしては他人に会うというのに、なんかワクワクしてしまった。


 ※ ※ ※


蛇王が先導して、吹き抜け構造となってしまった建物へと進む。

近づくにつれ、廊下に立つ神殿の騎士たちが増えてくる。みんな真剣な顔でどこかピリピリした空気を感じた。・・・なんて事を感じるわけもなく、わたしは自分の文学的表現が磨かれてまくっているような気がして鼻息が荒くなりそうになっていた。確かに騎士たちはどんどん多めどころか密になり始めているが、というかそんなにいたのか神殿騎士。どこに隠れていたんだ、神殿騎士。マッチョ隊の出番を奪うな、神殿騎士。


「こっちだ。がれきは撤去済みだから安心しろ。」


蛇王が指した入り口は広く扉は無い、隊長のせいで破壊されたのか元々無いのか。


「ミコ様、本当にいいんですか?」


前にいたセイが振り返って言った。相変わらず目を見ることはできないが、なんか耳が垂れた犬みたいな顔だということは分かった。わたしはなぜか意地になって頷いた。

アフロが見たい、見たいのだ、アフロが!


「・・・・・・っき!」


あれ、おかしいな。


「おまっ、なんで!」


そのフロアの中央に居たのは、普通の髪型の女性だった。

キーキー叫んでいる顔は、なんか見覚えがあるような、無いような・・・。


「てめぇがなんでココにいる!」


気のせいかな、聞こえるのも日本語のような?


『気のせいじゃないな。』


神様のため息が聞こえた。




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