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祈るということ  作者: 吾井 植緒
帝国編
41/47

引き続き夜のお茶会というもの

短めです。

バン!という音を立てて、お茶会に居なかった多数のマッチョダンディーズがワラワラと入ってきた。


「ミコ様、陛下!ご無事でしたか!」


そう言ったマッチョダンディーその1に蛇王は椅子を蹴り倒した。


「ご無事じゃねーよ。なんだよ、この騒ぎはよぉ。せっかくのお茶会が台無しじゃねーかよ!」


「いや、我々も各所に現れた黒尽くめに対処しておりましたので、なんとも・・・。」


「どうやら、いよいよヤツラが動き始めたようでございますな。」


「筋肉教か。神様なんてのは一人いりゃ十分だろうが。」


マッチョダンディーその2の言葉に蛇王は吐き捨てるように言った。その後ろでは蹴り倒された椅子をマッチョダンディーその3がいそいそと起こしていた。


「わりぃな、ミコ様。ウチの警備にも抜けがあったみたいだ。驚いただろ?」


近付いてきた蛇王に頭を下げられ、わたしはハッとした。

そうだ、敵はマッチョ教。冗談で言っていた事が真実となったのだ!

初代ミコ派なんてぬるいモンじゃねー、潜在的に人々が心に秘めているマッチョへの憧憬。それをかきたてるマッチョ教とわたしはこれから戦わねばならぬのだ!

どうでもいいとか言っている場合ではない。マッチョに憧れる人は多い、きっと敵はそこらじゅうに居るだろう。しかもココはマッチョの巣窟、帝国である。

わたしはこれからは心身ともに引き締めて事にあたらないといけないとお腹に力を入れたのだった。


「ミコ様?」


ボクっ子の声にわたしは気持ちキリッと、しかし表情筋は動かないが、ウムと頷く事にした。

気合も十分だ。わいはやったる。やったるでー。


「じゃあ・・・まあ騒ぎも収まったし、お茶会の続きでもしましょうか。」


え?

メロンさんの言葉にわたしの気合はどこかに行ってしまった。行かないでくれ、気合~。


「とっととその黒尽くめを牢に入れて尋問でもしてくださいよ。私達はお茶会の続きをしますので。」


キリッとした顔のメロンさんに言われ、慌てて忍者隊は黒尽くめをマッチョダンディーズ率いる兵士に引き渡していた。


「尋問には立ち合わせてもらいます。」


「ご自由にどうぞ。」


忍者の言葉にメロンさんはティーポットからお茶を注ぎながら優雅に応える。

あるえ?と思ったが、メロンさんに促されてわたしは席に付いた。目の前でお茶を注がれながら、思う。そういえば、わたしには攻撃手段が一切無い。戦うといっても防御するしかないのだ。戦うのは我らが神殿騎士達である。そして戦うには敵を知らなければならぬ。尋問は忍者たちに任せるとしたら、わたしはやることがないのである。だからお茶会の続きをする。そういうことである。


「ミコ様ってほんっと豪胆というか・・・。」


なるほど~。とわたしがウムウム頷いているのをボクっ子が呆れた顔で見ていた。


「それでミコ様。この国に滞在するのはもう嫌になりましたかしら。」


「これからは警備も倍増させるし、こんなヘマはもうしないから嫌とか言わないでくれよ。」


メロンさんの言葉に蛇王が眉を下げた。

わたしは軽々しくウムと頷かず、今度は考える事にした。何しろ、敵はマッチョ教。そしてしつこく言うがココはマッチョの巣窟、帝国である。ココに居続けたらわたしの身が危ないかもしれないのである。しかし、ココで危険を冒さずして逃げ帰ったとして、世界ヒエラルキーナンバー2と言えるのだろうか。否、ココはわたしの身を犠牲と言う名の囮にしてでもマッチョ教と戦わなくてはならないのだ!戦うのは騎士達だけど。


(物理防御なら自信があります)


「嫌とは言わぬ。暫し世話になるとしよう。」


ミコ語も自信に満ち溢れている。


「ミコ様、このような危険な地に滞在せずとも。」


「そうです、島に帰りましょう。」


慌てたように、忍者とセイが続けて言った。もう既に黒尽くめは牢へと連行されたのだが、忍者は尋問の立会いは部下に任せて残ったらしい。


(敵を欺くにはまず味方から、じゃなかった)


「確かに島へ帰ればココよりは安全かもしれん。だが、島でも危険な事に変わりは無い。」


ミコ語の厳しい言葉に、セイと忍者は毒事件を思い出したのか下を向いた。


(虎穴に入らずんば虎児を得ず、だ!)


「それならば、私は為すべき事をするまで。お前たち騎士がしっかり守ってくれてると信じているからな。」


「「ミコ様!」」


ミコ語の為すべき事ってのが、引っかかったが騎士達は偉く感動してくれたのでヨシとしよう。

またイベントとかじゃないといいが・・・。


 ※


「予定通りミコ様が滞在していただけるなんて、嬉しい限りですわ!」


「滞在中は俺か、コイツらがしっかり守ってやるからな!」


すっかりご機嫌になったメロンさんと蛇王がニヤニヤしながらお茶を飲んでいる。蛇王はマッチョダンディースにかなりの信頼を寄せているらしい。

マッチョダンディーズもそれに応えるように頷いた。


「ミコ様へは我らの鋼の筋肉にて、一片たりとも触れさせはしませぬ。ご安心を。」


力こぶをつくったマッチョダンディーその4の袖ははち切れそうだった。というか、ちょっとビリッという音がしていた。


「野蛮だなぁ。筋肉があればいいってもんじゃないでしょ。現にミコ様を守ったのはボクだし。」


「何を言うか!筋肉は至高、筋肉は正義であるぞ!」


ボクっ子のあきれた言葉にマッチョダンディーその5が吼えた。


「ちょっと待て。」


蛇王が言うのにも構わず、マッチョダンディーその5は続けようとして吹っ飛ばされた。


「・・・お前、なんかクセーんだよ。魔力の匂いがプンプンしやがる。」


その5を蹴り飛ばした蛇王は仁王立ちでそう言った。


「なんという事だ!」


「貴様、ダンではないのか!」


マッチョダンディー達は蛇王の言葉にうろたえながらも、壁まで吹き飛ばされたその5を囲む。その5は苦しそうに口元を拭いながらも、黒尽くめへと変化した。


「・・・ククク、ばれてしまっては仕方が無い。いかにも!我は筋肉教の、ハグァ!」


哀れ、黒尽くめは宣言の途中で、再び蛇王に蹴られて気絶した。


「本物がドコ行ったか、とっとと探せ!」


「「ハッ!」」


蛇王の怒声に何人かのマッチョダンディーズは部屋を飛び出して行った。残りが黒尽くめを連行しようと確保している。


「ったく。どいつもこいつも貧弱な肉体して、何が筋肉教だよ。」


「そういえば、そうでございますな。」


「健全な肉体に健全な精神て事ですかな。情け無い事にございまする。」


微妙に違うような気もするが、どうやら真のマッチョは筋肉教に興味が無いようだ。


「つまんねー事なんか考えられない位、訓練メニュー増やすか。」


憧れの筋肉を無理やりつけよう作戦だと蛇王はニヤリと笑った。


 ※ ※ ※


この世界には神力の他に魔力がある。

神力は神官と神殿騎士になれば、誰でも使えるようになるが信心が必要だ。

稀に潜在的に持っている人もいるが、そういった人が神官や騎士になると特化神力が使えるようになるらしい。潜在的に神力のあったという初代ミコも信心さえあればそうなる筈だったようだ。

魔力は適正が必要だ。それと魔法の習得。

王国の宰相も適正があり、修行をしたので魔法が使えるそうだ。

帝国にはあまり魔力の使える人はいないようだが、蛇王はその匂いが分かるらしい。鼻が利くのだと蛇王は笑った。


「魔力は独特の癖があるからな。神力みたいに清浄な匂いじゃない。」


そうは言ったが、蛇王は神殿関係者に囲まれると病院に居るような気分になるとこぼした。オキシドールみたいな匂いでもするんだろうか。


「我等は魔力がありませぬからな。」


そう言って、マッチョダンディーその1は男臭い笑顔を見せた。


「ボク姿を変える魔法なんて、始めてみたよ。」


ボクっ子がそう言うと、セイも忍者も頷いた。


「まぁ、この大陸だとそう見ないな。『魔族』の居る地域なら別らしいが。」


蛇王の言葉にわたしは驚いた。魔族が居るとは。ファンタジックな世界の割りに、地球インスパイアで人しか居ないこの世界に魔族が居た。これは驚きである。

魔族が居るならば獣人やらエルフ、ドワーフが居てもいいんじゃないだろうか。ちょっとワクワクする。


『ご期待に添えなくて、申し訳ない』


ガーン!久々の神様からのテレパシーは残念なお知らせだった・・・。


『しかも魔族って魔法が得意な人族って意味だから』


更なるテレパシーで羽が生えてたり角が生えてたりの期待も消える。


「ミコ様、どうかした?」


ボクっ子の言葉に内心のショックを隠して、わたしは首を横に振った。


「そうなると、あの魔法は魔族に教わったモノなのでしょうか。」


マッチョダンディーその3が言った。蛇王もどうだろうと首をかしげる。その様子を見るに、魔族は敵視される種族では無いようだ。


「なんにせよ、せっかくのお茶会を邪魔されたんだ。ヤツラには全部吐かせろ。いいな。」


「「ハッ!」」


蛇王の言葉にマッチョダンディーズは頭を下げる。結局お茶会は終始こんな話になってしまったとメロンさんは一人プリプリしていた。


 ※ ※ ※


「隊長がついていながらこの体たらく。」


「ミコ様がご無事だからよかったものの。」


「「今夜はゆっくりおやすみになってくださいまし。」」


くのいちの言葉に忍者が苦い顔をしている。

これから騎士達は警備体制について話し合うそうだ。わたしは早々に部屋に戻らせてもらう。


「なぅーん。」


珍しくユキが猫っぽい鳴き声で迎えてくれた。

ツンツンとライが鼻を背中に押し付けてきた。かまってくれとの合図である。


わたしは2匹を思う存分に撫で繰り回した。


今回の旅でよかった点はやはり2匹が居てくれた事であろう。

わたしはそのモフモフ力にて、お茶会での突然のアクシデントも吹っ飛ぶ勢いで癒されたのである。


ファンタジックな生物が居ない事にがっかりしたわたしが心揺れた点は一つ。


『居ないなら作っちゃおうぜ』


という神様のテレパシーに、モフモフした獣人なら作ってもいいかなと思った事である

途中の説明はボクっ子がミニ講座をひらいてました。


次回、観光。

砂丘の中心でミコ様が気合を叫ぶかもしれない。

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