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祈るということ  作者: 吾井 植緒
神殿編
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降臨というもの


どうでもいいが、神様とは対面で話しているわけではない。

神様は文字通り大変眩しい姿をしている。

神気とかいう聖なる力の集合体だというが、どう見ても人型の発光体だったので最初は宇宙人襲来かと思ったのは内緒だ。

とにかく眩しいので、今は姿を消してもらっている。わたしはサングラスを持ってないのだ。

他人には聞えない神様の声にわたしが声に出して返答するという会話方法はわたしが頼んだ。

神様への返答を思ってくれれば読んでやると言われたのだ。

しかし心を読まれると思うと、いらぬ黒歴史を思い浮かべてしまいそうなわたしである。そんな事になったら憤死してしまうと断固拒否した。たとえ誰かに見られて一人事を言っていると思われても、その方がよっぽどいいのだ。

しかし相手は世界を創る程の神様なので、心なんぞこっそり読む事もできるだろう。わたしもその点については考えたが、防げない以上はどうしようもないという結論に達した。わたしは諦めも早いのだ。

とりあえず現在進行形で筒抜け状態ではないという前提で、わたしは神様へ声に出して返答している。


神様がミコ様降臨の演出について、あれこれテレパシーを送ってきた。

映像込みだと頭が痛いのでやめてほしい。

『表情に出ないが、なんとなく嫌そうなオーラ』が漂うわたしに、神様はミコ様として舐められないようにしないといけないだろうと言ってきた。

聖職者なんて基本マゾだが、気位が高く傲慢でもあるので最初のインパクトが肝心なんだとか。

ミコ様と崇め奉られるのも嫌だが、舐められるのはよくないとわたしも思う。

わたしは程よく遠ざけられる程度に恐れ多い演出を神様に望んだ。


 ※ ※ ※


世界の中心と呼ばれる島がある。

地球で言う所の北極だが、そこは寒くない。南極にあたる所にも島があるらしいが、そっちはただの無人島だそうだ。

繋がってはいないが、宇宙的なルールでどの世界も丸い星になるらしい。


んで、その島に神様を崇める宗教団体の本部がある。

最近は世界が物騒なので、実在しない神様を担ぎ上げた新興宗教とかが出来てるらしいが未だ世界最大の宗教団体なんだそうだ。

本部である神殿にわたしはミコ様として降臨するのだ。


神殿には塔のようにせり出している最上階があり、神の間と繋がった扉がある。

神様にしか開けないその扉に、今夜出迎えをするように通達したと神様は言った。

話しかけるのが嫌だから、夢にイメージ送ったそうだ。

映画の予告編みたいにミコ様用の部屋のイメージをまず送り、そして今夜とうとう降臨って2部構成にして送信したらしい。変にハードルを上げられると困るので内容を見せてもらった。扉が開いて眩しい光が、という無難な降臨予告だった。


そろそろ時間だと言う神様に言われ、神の衣を装備した。もちろん裸足である。パンツは穿いている。

神様はベランダの窓から出ろと言った。

いきなり失踪となるが、その辺は上手くやると言った神様を信じてベランダへの窓を開ける。


ベランダに出たはずのわたしは異世界にいた。薄暗い中に白い服を着た集団が見える。

あっさり異世界到着である。

大体の物語の主人公はもっと色々あるのだろうが、お膳立てされているとこんなものなのか。

わたしが後ろを振り返ろうとしたら、神様に前を見ていろ!とテレパシーで怒られた。

もう降臨してしまったので、キョドるなと言う事らしい。別にキョドったわけではない。後ろの扉を確認したかっただけだ。

足元には猫のユキと犬のライ。異世界でも動じない彼らに習い、わたしも気持ち胸を張った。


わたしの後ろで扉が閉まる音がすると、集団は残念そうな声を上げた。

なんだ、ミコ様が降臨したってのにどういうことだ。

わたしは自分を大した人間であると思ってはいないが、あからさまにがっかりされるのも嫌なのである。

本来なら小心者なわたしはビビッて動けない所だったが、舐められたらマズイと足を前に出した。

一歩踏み出すと、足の下には石の床ではなく例の能力で出た花びらを踏んでいた。

とたんに集団から感嘆の声があがった。

こんな微妙な能力で盛り上がってくれるとは。ちょっと落ちていた気分が上昇した気がするが油断は禁物だ。能力の微妙さに気付かれる前にと、わたしは花びらを撒き散らしながら集団の先頭まで辿りついた。


先頭に立っているのが恐らく集団のボスであろう。

わたしはこれからミコ様の下僕となる、今はボス的存在を見上げた。

デカイ。

180超えてると思われるボスは意外と若い男だった。しかもハリウッドスターばりにイケメンである。

わたしは調子に乗っていた気分がまた急降下し、嫌な汗が脇と背中を伝うがすぐに薔薇の香りに分解されるのを感じた。フローナルな香りに少し癒されたわたしは神の衣の効果に感謝しながらも、困っていた。

わたしはイケメンが苦手なのである。いや、イケメンと会話するのが苦手なのである。

リア充な奴らとはテンポをあわせるのが大変なのだ。


「ミコ、様であらせられますか?」


イケメンは声もイケメンである。わたしには日本語で聞えるが、声は変更されていない。

わたしは目を逸らしたら負けるとばかりにイケメンを見ていたので気付いた。

銀の髪だ!

わたしは常に半目と言われている目を思わず見開いた。

イケメンの髪に蝋燭の灯が当たって分かった驚きの事実。奴は二次元真っ青の青く光る銀髪だった!

わたしの美術的表現力には限界があるが、挑戦してみたくなった。

銀紙に青をエアブラシで吹きかけたみたいな?シャボン玉の一部分が青く見えるみたいな?

やっぱり無理があったが、とにかく光の加減で青くも見えるのだ!

更に後ろの何人かもピンクとか紫色をしているが、一番ありえないのは流石ボスだけあるぜ。

わたしは感心しながら、見開いた目が疲れたのでいつもの半目に戻した。

実際には半分も閉じないのだが、頑張れば普通サイズの目をいつも眠そうとか目つき悪いとか言われる程度に閉じているのでわたしはそれを半目と表現しているだけだ。

そうすれば視界も狭まり、人の表情とか視線を見ずに済むかもしれないというわたしが編み出した対人逃避法である。


気付いたら、集団はなぜかひれ伏していた。

ボスも膝を付いてうなだれている。どうやら目を見開いたわたしにビビッたらしい。

あれかな?カッと見開く効果でも神様がつけてくれたのだろうか。

ミコ様としてインパクトがどうのとか言ってたしな。

なんかボスがモニョモニョ言っているが、無視して神様から聞いていた部屋へと急ぐ。


(明日から早速業務開始で早いんだよね)


「よい。話は明日聞く。」


つい出てしまった独り言が、早速ミコ語変換されていた。わたしの声ではあるが、威厳の塊みたいになっていた。ビックリしたわたしの足が一瞬止まる。

ミコ語の事忘れてたわけじゃないけど、喋った内容と違って聞えるとビビるよね。

ミコ語は親切設計で、ちゃんとわたしにも日本語で聞えます。ちょっと遅れて、腹話術のようだ。


「ワン!」


犬のライが早く行かないの?って感じで見上げるから、猫のユキを抱き上げて止めていた足を動かした。

これでわたしはユキを抱き上げる為に足を止めたように見えたに違いない。

わたしの後に一団が無言で付いてくるのがちょっと不気味だ。とりあえず程よく遠ざける事に成功したと言う事にしよう。


神様からのナビで複雑な道のりを歩き、茶色い重そうな扉の前に到着した。ミコ様の用の部屋である。

後ろから付いてきた一団が何か言ってるけど、無視して部屋に入る。聞えないフリは得意なのだ。

わたしの後に続いたライが入ると扉は勝手に閉まった。

すげーな、この世界は自動ドアならぬ自動扉があるのか。

フンフンと部屋の匂いを嗅ぐ2匹を好きにさせて、わたしは寝室と思しき奥へと向かった。

ダブルサイズのベットにダイブする。わたし好みの堅いマットレスだった。


もう時間は深夜過ぎだ。

どうせ神の衣を装備中は清潔に保たれるのだからと異世界初風呂は諦めた。明日というかもう今日だろう、朝から祈らなければならないのだが朝が弱いわたしはもう寝ないと起きれないかもしれない。

うつらうつらし始めたら、ユキが鳴いた。


(うるさいよー)


「何事だ、静まれ。」


ペットにまでミコ語。神様の能力はやはり微妙だ。

だが、ユキは理解してくれたのか黙ってベッドに来ると枕の傍で丸くなった。一緒に寝てくれるようだ。


(ライー、おいでー)


「静まれ。」


ミコ語に懲りずに何度かライを呼ぶ。ライは吼えているだけで一向に来る気配がない。

やはりミコ語では伝わらないのか。

脱力しながら呟いた声が思ったより大声になってしまった。


(明日早いんだからいい加減にしてよー)


「明日から勤めに入る。わたしに構うな。」


吼えていたライが静かになった。

ベッド脇まで来ると床に丸くなる。ライはベッドには乗らないのだ。


(おやすみ)


「おやすみ」


流石にミコ語も空気を呼んだらしい。

少しホッとした。ユキは無反応、ライは片目だけを開けるとすぐ閉じた。


わたしの祈りで救われる世界とはどんなモノなのか。

不安よりも考える事が面倒になったわたしは早々に目を閉じた。



ミコ様早速風呂を放棄。

ミコ様は欧米的な美形は全てハリウッドスターと表現します。


演出したわりにミコ様視点ではわからない降臨の模様については、神官視点からも出したいと思います。

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