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祈るということ  作者: 吾井 植緒
帝国編
35/47

旅の準備というもの

今回ちょっと短いです。

『ダメだ!暴走するな!・・・もっと繊細に力を使いたいのに!』


翌日の祈りの後、発光体となった神様は片腕を掴みながら中ニ病的な事をブツブツと言っていた。いや実際力はあるから中ニ病ではないんだけど、何か見た目的にそんな感じだった。


『・・・あんまり俺が出張ると世界に影響が出るからな。暫くは向こうも大人しくしていると思うが、お前が無事で居られるよう俺の方も色々考えておこうと思う』


心を読んだらしい陰謀大好き神様は仁王立ちになるとそう言った。心配されるのは悪い気はしないが、勝手に人の身体を作り変えた事といい、少し心配になる。色々って何をする気なんだろうか。


『大丈夫だ。万が一などあっても問題ないようにしといてやるから』


神様の太鼓判なのに、不安になってしまうわたしは今更ながら神の使徒失格かもしれない。


 ※ ※ ※


赤髪神官によると、本日の祈りの結果はとある地の毒沼が浄化されたというものだった。

どうも昨日の毒事件が影響されたようである。


ミコ部屋に戻り、朝食の林檎を齧っているとボクっ子がやって来た。

林檎を見て不味そうな顔をするのをやめてほしいと思う。


「聞いてよ、ミコ様~。黒こげかと思いきや、生きてるし、アフロだし。アフロ直せないし。」


訳の分からない事を突然言い始めたので何のことやらと思ったら、どうやらアフロとは毒を盛った犯人の事らしい。

ボクっ子によると、まず神罰で雷が直撃した犯人は黒こげになったという。駆けつけたボクっ子と騎士達は黒こげの犯人は死んだと思い、毒の種類を聞き出せない事に焦った。しかし、黒こげが剥がれ犯人は無事生きており、髪がアフロになった以外は特に問題が無かった。すぐさま事情聴取をしようとすると、犯人は神妙に毒の残りと自分の家族が謎の集団の人質に捕られている事を白状したのだった。

そうして、たまたまやってきた蛇王が毒は特殊な毒と知らせてくれたので、神力で解毒剤を作成したという。神力で解毒できない毒なのに、神力で解毒剤が作れるとは何とも不思議な仕組みである。

ちなみに人質を捕った集団は抵抗した為、すぐさま殲滅させられたらしい。


「脅した連中は出来れば生け捕りにして元から絶ちたかったんだけど、仕方ないよね。毒盛った奴については、やむを得ぬ事情を神様が汲んでくれたとは思うんだけど、本人も死ぬような思いしたってさ。それにあのアフロ、神力使ってみてもダメだったから多分一生直らないと思う。」


一度死んだかと思われた犯人は身体はなんとも無いが、どうやってもアフロだけは直らなかったらしい。ボクっ子がマジウケルと笑っている。


「しかもこの島で一生ミコ様に毒盛ったって言われるんだよ。やむを得ぬ事情があるのは皆知ってるけどね。監視してるから島からも出れないし。まあ妥当な罰だよね。それよりもっとヒドイ目に合わしたい?」


どうやら神殿はこの島から出さずに一生犯人と知られている生活をさせるという罰を下したようだ。中々ヘビーな罰である。ヒドイ目というか、神罰が下った時点で犯人の事はどうでもいいと思っているのでわたしは首を横に振っておいた。


「そ、じゃあとっとと旅の準備初めてよね。警備体制の立て直しがあるから、猊下がとっととミコ様は帝国に行けってさ。準備が整い次第出るし、結構長期に渡るから神獣様も連れて行っていいって。」


(マジか)


「そうか。」


驚いたわたしと違い、ミコ語は冷静な声を出した。表情筋は動かないので別段問題はない。


「審判長は体調もあるし、猊下も今回は付いていけないしで、同行出来る神官はボクだけだから。」


そうニッコリとして言ったボクっ子にリジーは候補に入らないんだなと少し思った。


「祭事長は元々島から出たがらないから仕方ないんだよ。」


側近らしく、わたしの考えを読んだのかボクっ子はそう言った。


「それに最近、修行・修行で仕事サボってるしね。」


どうやらリジーはまだ衣装変えを諦めてないようだった。


 ※


多分2・3日中には出る事になるだろうと言ってボクっ子は去って行った。

さて、長期に渡るといわれたが、パンツは何枚持って行けばいいのだろう。

何時ぞやにリジーに貰った巾着を手にわたしは途方に暮れていた。


ちなみにライとユキの餌は、いつも神様がミコ部屋にあるダンボールに何時の間にか入れておいてくれるので、そのダンボールを持って行けばいい。トイレはいつのまにか洗浄されてるので、そのまま持って行けばいいだけだし、正直わたしの旅の支度はパンツだけである。


あ、あとあのリジーのスパ・・・レギンス1枚もあったか。パンツ大量に入れなければ巾着に収まるな。何なら現地で洗濯すればいいし、巾着に収まるだけ入れておけばいいか。


寝室で巾着にパンツを押し込んでいたら、セイが呼ぶ声がした。


「ミコ様、来客のようでございます。」


蛇王とメロンさんだった。


「ミコ様はもう元気そうで何よりですわ。」


「帝国じゃ、俺が付いてるから心配要らないぜ。いろんなトコ見せてやるから楽しみにしてろよな。」


メロンさん、蛇王の順にそう言われ、わたしはウムと頷いた。行くとなったら仕方ない。それなりに楽しむとしようがわたしの信条である。


「あら?ミコ様、それは何でございますか。」


メロンさんがわたしの巾着に目をやった。つい、巾着を置いてくるのを忘れたのである。


「ミコ様の旅のお荷物です。」


そう言って、セイがわたしから巾着を取り上げた。


「まあ!それだけですか?・・・あ、でも帝国で不自由させるつもりはありませんから、何なら着の身着のまま来て下さってもいいんですよ。」


(だが断る)


「いや、これで十分だ。」


メロンさんの言葉に着飾らせるフラグを嗅ぎ取ったわたしはすぐさま断りの言葉を口にした。もちろんミコ語も威厳十分に断る。


「んー、まあその衣には何ともいえない強い力を感じるしな。身を守るモノなんだろ。」


野生の勘なのか、それとも神の力を感じ取れるのか蛇王がメロンさんを窘める。


「せっかく帝国にいらっしゃるなら、色々着飾って頂きたいのに。」


残念そうなメロンさんに蛇王は言った。


「服じゃなくたって、着飾る方法はあるだろうよ。帝国は宝石の産地でもあるからな。色々見繕ってやるよ!」


なんと、ドレスフラグでなく宝石フラグが来た!

ふと、このままだと神様のアレ『突然高い宝石をプレゼントされ、断ったら面白いと気に入られた』みたいな展開になってしまうかもしれないとわたしは不安になった。この流れで断っても面白いとか言われそうにないが、何があるか分からないモノである。


!?・・・そうだ。断らなきゃいいのか!


ナイスアイデアが閃いたわたしはとりあえずウムと頷いておいた。どちらにせよ、わたしは貰える物は貰う主義であるからして間違ってはいない。


「ではとっておきを用意するよう、国に連絡しておきますわ!」


しかし盛り上がるメロンさんに少し後悔したのは言うまでもない。


 ※


「ミコ様、少し、ほんの少しですけれど布に神力を浸透させる事が出来ました。これで、これで御身をお守りする事ができれば・・・!」


昼食にシャキシャキ林檎を齧っていると、疲れた顔のリジーが薄紅色の布を持ってやってきた。


「あああ、なんで私は肝心な時にお傍に居れないんでしょう。猊下に同行を願い出たのに、却下されてしまうし・・・私はお世話係失格です!」


お世話係を強調して床に突っ伏したリジーだが、言った後にわたしをチラ見しなければ、そんな事ないよって言ってあげてもいいと思う。ボクっ子といい、リジーといい、なんとも残念な奴らである。


そうして暫く突っ伏していたが、諦めたのかリジーは立ち上がった。


渡された薄紅色の布はレギンスの色違いのようであった。


「ミコ様用ですので、色は特別にあしらいました。ミコ様を想う私の力が込められております。是非、旅の際には肌身離さず着用し続けてくださいますよう・・・!」


有難いけど、それは流石に衛生的に無理だと断りました。


 ※


そういえば旅の準備をセイはしなくていいのだろうか。

相変わらず部屋に空気でいるセイが気になった。


(セイは準備しないの?)


「セイ、旅の準備はいいのか?」


セイは尋ねられた内容を考えているのか目をパチクリとした。


「はい。騎士団は帝国行きが決まった際に皆準備は整えております。」


そうなのか、とわたしは頷いた。というか、早ぇな騎士団。警護の問題もあるから、騎士団はたくさん付いてくるんだろうな。またゆるふわとか来るのかな。


「先行隊はミ・・・『忍者』隊になります。団長とシャミは今回警護の見直しにあたります。」


なんと、今回団長はお留守番か。まあ警護の見直しってんだから、長である団長が居ないとダメだもんね。信者である島の人にまで害を齎す謎の組織が出たんなら、団長自ら気を引き締めていかないとなぁ、とわたしは思った。

しかし謎の組織は恐ろしいな。毒殺狙いとは。初代ミコ派のテロ集団もすごかったけど。

そういえば蛇王は初代ミコ派か新興宗教と疑ってたっけ。新興宗教って、アレか。存在しない神様を作っちゃうとかいう。この世界は今まで世界をほっといた創造神である神様一人しか居ないからなぁ。都合の良い神様を作りたくなる気持ちも分からないでない。けど、だからってその使徒であるミコを害しようとは。中々過激な宗教団体のようだな。


「何がありましても、ミコ様の御身に傷一つなく旅を終える事を・・・騎士団は心に誓っております。」


セイが跪いて頭を垂れた。わたしはウムと頷いてやる。異世界人は頭を下げていても見えるようなので、声を出さなくても問題ないのだ。


「旅を終えましても、二度と!あのような事のないよう、厳重な警護をさせて頂きます。」


そう言ったセイには悪いが、厳重な警護であの肉壁を思い浮かべたわたしはちょっと憂鬱になったのだった。神殿で位、肉壁移動は遠慮願いたいものだ。



リジー頑張りました。どんな効果があるんでしょうかね。

ミコ様は毒を喰らっといて結構平気そうですが、一応人間なのでそのうちそのトラウマというか後遺症も出る事でしょう。シリアスはあんまりない話なんで、サラッとでしょうが。

今回ゆるふわと団長はお留守番です。島での警備体制見直し担当。

セイはもちろん専属騎士なので同行します。


次回、帝国へ向かってやっと出発します。

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