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祈るということ  作者: 吾井 植緒
神殿編
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旅立ちというもの

神様に、『異世界トリップ』ものを何冊か渡された。

神様がネット、いうまでもなく元の世界のネットからダウンロードして製本までしたその本は特選王族編だそうな。表紙にある『神様オススメ!』にちょっとイラついた。

パラパラ見ながら、余り現実的でない展開ばかりだと告げると『異世界でミコやってるお前が言うなよ。』と笑われた。

どうやら、二次元の主人公というものは異世界の王都で色々やらかさないといけないようだ。大変だな、主人公は。

『気に入ったようで何よりだ。』等とほざいている神様は本当に暇つぶしとしてコレを用意したらしい。

まあ、同じような事をしてこいと言われても「だが断る」しかないのだが。


そんなこんなで本日のお勤めも済ませ、セイは馬の用意があると出て行った。


ライとユキの世話はどうしても付いていくと言い張るセイにより、代わりの騎士がする事になっている。あの土下座組みにいた騎士だ。赤髪神官ほどではないが、赤い髪の騎士はアノ件がなければ爽やかな振る舞いである。


「ミコ様を直接お守りできないのは残念ですが、神獣様方のお世話を出来るなんて光栄です。」


ライが吼えないという事はセイほどではないが、気に入ったらしい。ユキのあまりの愛らしさには近寄れないようだが、ユキも気に入らない人間には姿を見せない性質なので気に入ったのだろう。ちなみにエサや水はわたしが居ない場合、神様の力で自動に補充されるので頼む必要はない。


ライにブラッシングをしている騎士を眺めていたら、猊下がそろそろ出発時間だと告げに来た。

そういえば、神殿から出るのは初めてである。

なにせわたしは偉いミコ様であるからして、警護の関係上、うろつくのも大変な事なのだ。普段ミコ部屋に篭ってるので実証してはいないが、多分大変な事な筈。


外に出るときは裏口を利用してるから、表玄関から出るのも初めてだったりする。

ご立派な作りの表玄関を出ると階段がある。

いかにも神殿ぽい感じの階段を降りると広場のようになっていた。イメージは駅前のロータリーを神殿っぽくした感じだ。

中央には噴水があり、いくつか水が吹き出る真ん中で細マッチョなイケメンの像が偉そうに両手を開いて口から水を吐いていた。

イケメンは決め顔をしているがやってる事はマーライオンである。製作者はどうしてこんなものを作ったのか。そして神殿はなぜこれでオッケーしたのか。


噴水、というか口から水吐いているイケメン像をジロジロ見ていたら猊下に不審そうに声を掛けられた。


「神の噴水がどうかしましたか。」


(まさかこのイケメンが神だとか言わないだろうな)


「これは、神なのか?」


「ええ、神話にある神の降臨を模した噴水です。」


なんと、ただし口から出る状態のイケメンはアノ発光体のイメージ象でした。まあ神話だから、イケメンにもなるわな。

それに発光体を作るとなると、エコじゃないからこの方がいいのかもな。

そう納得したわたしは神話を語りたそうな猊下を置いて、噴水の向こう側へと足を向けた。当然、裸足である。


「ああ、ミコ様。お待ちしておりました。」


噴水の向こう側には団長とセイ、そして馬が待っていた。

そう猊下がくれた馬に今日は船まで乗って行くのだ。

ちなみに馬の名前は『デュランダル』にした。辞書でかっこいい漢字を組み合わせようと思ったが、メンド・・・神様が持ってるノーパソを借りて、かっこいい馬の名前で検索して付けた。

やはりミコ様の馬と言うのは自信に繋がるのか、デュランダルは来た当初より一際カッコよく見えた。カッコいい名前を付けて正解だったなとわたしは満足である。


「ミコ様、荷物はないのですか?」


団長は荷物を預かろうと手を差し出したまま、不思議そうな顔をした。


(ああ、セイに渡してあるんだ)


「いや、セイに渡してある。」


あいにくセイに預け済みだと、首を横に振るだけでなく言葉にしておいた。ミコ語も使わないとまたバグりそうだしな。


「そうですか。」


だが、大荷物でないセイを見た団長は納得いかないようである。自分達より少なすぎるのを心配しているようだ。


(長期宿泊でもないのにそんなにいらんでしょ。パンツだけで十分だって)


「物はあまり持たないのだ。それに、長居する気はないからな。」


残念な事にわたしの率直な答えはミコ語によって伏せられてしまった。

まあ『神の衣』の性能を説明すると長くなりそうだし、荷物は少ない派って事でカンベンしてくれ。


実はこのパンツ数枚をセイに預けるに至るまで、紆余曲折があったりする。

当初わたしはパンツをタオルで包んでいた。

袋などは持っていないので、コレを持ち歩くのかと悩んでいたら中身を知らないセイがそれだけなら自分の荷物に一緒に入れましょうかと言うので、これ幸いと預けようとしたのだ。

しかし、すっとんできたリジーに阻止されてしまった。

なぜ私には預けないモノをセイには渡せるのか、と嘆くリジー。パンツ以外の洗濯物は頼む事で何とか帰ってもらおうとした所、お手製巾着を押し付・・・献上された。

じゃあ、この巾着を早速使うからと何とかミコ語でリジーを追い出す。

リジーが最後までパンツという単語を伏せてくれたので、待機していたセイにパンツ入り巾着を頼んだと言う次第だ。


そんなコトを知らない団長はミコ語の答えに納得したらしい。

笑顔でウンウン頷いている。


「ミコ様、早めに私も向かいますので・・・。」


仕事の都合上後から来る事になってしまった猊下が言った。

普通はミコ様であるわたしを頼みますと団長達に言うべき所なのだが、猊下は騎士達の暴走を心配しているのでわたしに向かって頼みますと頭を下げた。仕方ないので、わたしの命が脅かされない程度には暴走を阻止してやろうと思った。


ちなみに以前王家の支部を洗・・・教育した爺は一昨日から出張中である。

騎士団土下座事件が昨日の事なので、その前からどこかに行ってるのだ。行き先は聞いた気もするが、長い国名のせいか覚えていない。

後は昨夜の内に王家に先行している騎士がいるらしい。不穏分子は一層しておくという事らしいが、お前らの方がよっぽど王家にとっては不穏分子だとは言わないでおこう。

わたしも自分の命が惜しいので、不穏分子は消しといてもらうに越した事はない。


「「ミコ様、いってらっしゃいませ!」」


いつの間にやら勢ぞろいしていた神官達の言葉に一応ウムと頷いて、団長の手を借りながらデュランダルに跨った。

盛大な見送りのせいかテンションが上がってきた、今なら浜辺を上様のように疾走する事が出来そうである。最初の掛け声はどうしようかとウズウズしていたら、セイが紐を持ちデュランダルはパカパカ歩きだした。アレ?

団長も馬を引いて隣を歩いている。つまり、馬に跨ってるのはわたしだけである。


正門を出ると大通りが続いている。しかし一行は脇にある小道に入った。

坂になった小道を下ると、すぐに海が見えた。これは近道というヤツか・・・。


「通常はあの参道で行くので港まで暫く掛かるんですが、神殿の船は特別な所にありますのでスグ着くんですよ。」


わたしの気落ちしているオーラを読んだのか、申し訳なさそうに団長が言った。


「王都では安全の為、馬車に乗っていただきますので。デュランダルは置いていく事になります。」


数分で着いてしまった神殿用の港には騎士達がいた。

デュランダルを騎士達に託して、ご立派な作りの船に乗り込む。団長とセイの愛馬は王都でも乗る為か、一緒に船に乗り込んでいる。


「ミコ様ー、神獣様たちは我々でしっかり保護してますんでご安心をー。」


「晩餐会が終ったら、すぐに我々が迎えに行きますからねー。」


何故か号泣している騎士達にとりあえず手を振ってみる。もちろん、豪快にではなくミコ様らしく優雅にだ。意外と早く進む船なので、あっという間に騎士達は見えなくなった。途中で飽きたので、手を振るのをやめたわたしではあるが、船から見る神殿を眺めていた。


「ミコ様、船は数時間ほどで港に着きます。船室に行かれますか?」


空気に徹していたセイが声をかけてきた。異世界とは言え、青い海をもう少し堪能しようとわたしは首を振った。まだ試さないがそのうち海を歩いて伝説を作るのもいいかなとちょっとだけ思った。


あ、神様オススメの王都本持ってくるの忘れてた。まぁ、いいか。


宰相の出番が持ち越しになりました。

ミコ様は手ぶらで行く気満々でしたが、パンツの重要性は忘れていなかったようです。流石に中身を知られていたら異性のセイに渡しませんが、荷物を持ちたくないミコ様はリジーが伏せたのをいい事にパンツを預けました。ミコ様は異世界での自分は神の使いなので、所謂女子力は不要だと思っているようです。


神殿用の港は騎士や神官が出張の際に使用されるので、一般の人は使えません。なので、王家の人達は通常の港から長い参道を走ってきました。結構大きな島なので、馬がヒィヒィ言う位長い参道だったりします。


次回から王都編になります。

貴族にあったり、城下町をうろついたりする予定です。


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