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祈るということ  作者: 吾井 植緒
神殿編
12/47

蜂起について  神殿騎士の反乱

物騒なタイトルですが、実際に反乱が起きるわけではありません。

セイ視点。いろいろタダ漏れなので、騎士達を気に入っている方はご注意ください。

私の名はセイルース・フォン、しまったこの名は以前ミコ様に『長ぇ』と呟かれて以来、封印したのだった。

私はセイルース。ミコ様にはセイと親しげに呼んで頂いている。

私は神殿騎士だ。そしてミコ様専属の護衛騎士である。ミ、コ、様、専、属!で、ある。

しまった。つい嬉しさの余り2度言ってしまう。だが、ミコ様専属は神殿騎士の憧れの的である。自慢したくなるのは仕方の無いことだ。


神殿騎士とは神殿に所属する騎士である。

民を導く神官と民を守るのが役目だ。たとえ信者でなくても守る、公平な騎士である。


私は某国の貴族の三男であった。兄たちには幼少から『もやしっこ』と笑われていた。

見返してやろうと思ったわけではないが、貴族の三男で家を継ぐ事もない立場の私は元々信者だった事もあり、神殿騎士になろうと入団した。

神殿は貴族であっても公平に扱われる。よって見習いの私は人手不足な地域に送られた。

そこは辺境の地だった為か、騎士とは名ばかりの自警団のような集団になっており、胸当てだけの鎧と、剣も数がないので木刀になる。そんな装備で村々を襲う山賊を追い払うと言う無茶苦茶な毎日。

隊長以下、皆気のいい人達ばかりで、もやしっこの私をフォローしつつ鍛えてくれた。

そうして私もいつしかムキムキと筋肉が付き、ニョキニョキと身長が伸びた。

身長と言えば、ミコ様は私が大股で近付くと何とも言えない目つきで見上げるので、今になってみるとあまり身長が伸びない方が良かったのではないかと思っている。ミコ様から発せられる暗い気配を感じると私は自分の足を切りたくて仕方がない。

ミコ様を悲しませる身長なんて欲しくはなかったのに!


・・・。


とにかく、そうやって我武者羅に過ごしていたら、山賊壊滅の功績が認められ総本山への栄転が決まった。

しかし隊長や他の隊員はその地に家族がいると断ったので、私だけが総本山へ行く事となった。

総本山へ来て、私は驚いた。白銀の鎧に全員に行き渡る剣。そして、気配を消す騎士達!

そう、ココでは強いだけでは駄目なのだ。

なぜなら騎士は大柄で鍛えられた筋肉の持ち主が多いので、神官達から威圧感が凄い!と苦情が殺到したのだ。それにより何代目かの団長が気配を消すという方針に踏み切った。

神殿騎士と敵対する者達からは『暗殺騎士団』なんて呼ばれているが、ミコ様が我々の方針に感心されていたので私は何代目かの団長の英断に感謝している位である。


私がミコ様の専属騎士になったのは、ミコ様が降臨されたその夜である。

ミコ様降臨後に、我々騎士は鍛錬所に集まっていた。


「これまで、我らは神殿騎士として神官達を守護してきた。」


「だが、勘違いした神官達にあれやこれやと扱き使われていた我らの暗黒の時代は終った。」


団長の言葉に皆が頷く。そう、我々神殿騎士の主は神官ではない。

神殿騎士として神官を守っていたに過ぎないのだ。


「我らの真の主が今夜降臨された!我らの主は神である。だが、その御使いであるミコ様も又主と言えよう!」


「「ミコ様!ミコ様!」」


こぶしを振り上げ、皆がミコ様コールを連呼する。私ももちろん連呼した。ボルテージはマックスである。


「ミコ様を煩わせる存在は例え神官であろうと斬り伏せる!それが我ら真の主への忠義!」


「「忠義!」」


たぶん皆の脳裏には神官たちに荷物持ちとか荷物持ちとか荷物持ちとか、やらされた事がよぎっているのだろう。

よっぽど、村を襲撃する山賊を追い回していた方が充実していたと言える。


「「ミコ様、バンザーイ!」」


その夜、団長を抜いたバトルロワイヤルに勝利したのは私である。

団長も参加したかったようだが、団長としての仕事もあると悔しそうに審判をしていた。強さに自信があり№2と言われた私としては楽勝と思っていたのだが、皆テンションマックスだったせいか死闘が繰り広げられ、何とか勝利を掴む事となる。


そうしてミコ様の専属騎士となった私であるが、なんとミコ様の神獣様のお世話もさせていただいている。

あの白い神獣様は降臨時の恐怖の鳴き声がトラウマとなっているので、近寄れない分ライ様には尽くそうと思っている。

慈悲深いミコ様にはたまには休んでもいいと言われたが、私はお傍を離れたくないと断らせてもらった。

その際の慈愛に満ちた目を私は忘れることができない。ミコ様に一生尽くそうと思った。


ミコ様には神官の世話係がいない。

ミコ様が不要だと言われたのだ。まぁ、この私がいるので、確かに不要である。

掃除だって私に掛かれば瞬殺である。本来掃除など騎士の仕事ではないが、ミコ様の感心する視線を頂けるとなると、つい力が入ってしまう。

それにあの『緑の魔女』が世話係候補となると小さな埃でさえ、口実を与えるのではないかと気が気ではないのだ。

全く、大神官もどうかしている。審判長ならまだしも、緑の魔女を候補にするとは!

審判長とは神官の犯罪を摘発する部署の長である。役職に見合う公平で生真面目な人物である。

対して、緑の魔女は祭事長。祭りや式典などを取り仕切る部署の長である。

緑の魔女は『創世神が姿を消した諸悪の根源』と噂される、何代目かの『ヤンデレ大神官』の再来と言われている盲信者である。確かにミコ様に絶対逆らわないと言う意味では適任だが、あのヤンデレ魔女ではミコ様を疲れさせるだけである。

現にミコ様は緑の魔女の名も呼びたくないのだろう、名前を変更させ、慈悲深さも滅多にお見せにならない。むしろ遠ざけているようでもある。

どうやら候補となった経緯も緑の魔女がオッサンとは言え、男である審判長を世話係にするのはどうかと思うと進言したせいらしい。

我ら騎士団としては、そんな魔女をいつか滅してやろうと画策している所である。


 ※ ※ ※


あの忌々しい王家の人間がやってきた日。

ミコ様は祈りの後、たいそうお疲れの様相で神の間から出てこられた。


ミコ様を心配して思わず任務を離れてしまったが、そんな私に訪れた至福の時!

守ってくれるか、だって!

守ってくれるかってミコ様に頼まれちゃったのだ!

しかし口下手な私なりに、言われなくとも守りますをカッコよく言おうと考えたのがいけなかったのだ。


きっと邪魔な大神官達が来なければ、カッコいい返事を思いついたに違いないのに!


とにかく、ミコ様は騒ぐ大神官や魔女達が煩わしいとばかりに神力を解放されていた。私も煩わしいと思ってたので、やはりミコ様の専属騎士にふさわしいのは私であると思われる。

いつもミコ様のお傍にいた私はミコ様の機嫌の機微を察知できるようになっていた為、安全圏にいたのは言うまでもない。

それにしてもミコ様は神力も素晴らしい。桁違いである。


ついうっとりしていた為遅れたが、ミコ様と共に階段を降りると団長が階段下にいた。その様子から何かあったのだと私には分かった。ちなみに団長は自分の肉体がミコ様には威圧を与えると密かに気にして、なるべくお傍にいかないようにしていた事は騎士団では有名な話である。

すぐに現れた王家の騎士団に私は団長がコレを危惧していたのだと気付いた。団長がいなければ奴らはすぐにでもミコ様を取り囲もうとしただろう。もちろんそれを許す私ではないが、ミコ様の前での殺戮行為は流石に躊躇われる。ミコ様に他人の血が掛かるなんて考えたくもない事だ。

団長は馬を潰そうとする勢いで来たと言う事がさらに許せないようだった。

いくらミコ様に会いたいからといって、馬を潰して神殿に来るなど正気の沙汰ではない。

ミコ様も馬を心配されていた。

団長は感激し、自ら様子を見に行く為厩舎に向かうと言うとミコ様も付いていくと言う。そして自ら馬を労わっておられた。馬もミコ様に撫でられて、幸せそうである。私も労わられたい。

ミコ様の慈愛に満ちた眼差しに我ら騎士団は一層忠義を誓った。


「ミコ様は馬がお気に召したようですね。」


私にそう声を掛けてきたのはミゲルである。

ミコ様は今、2匹目の馬を撫でておられる。馬はウットリしてるし、騎士が手綱を持っているので万が一もないと思うが、馬以外で何があるか分からないので私の視線と距離はミコ様から離れる事はない。

隣に立ったミゲルは気配を消すのはイマイチだが、その瞬発力を生かし素早く敵に近付く事ができる騎士達を纏め上げている。

ミコ様が『忍者部隊』『隠密』とか呼んでるからと最近調子にのってる奴でもある。

私にもそのような名を付けて欲しいと言ってみたら、『二つ名が欲しいなんて、厨ニ病臭い』と断られた。ミコ様の呟かれるお言葉は崇高すぎて私には理解ができないが、まだまだ精進しろという事だと反省している。


「いっそ馬を潰してミコ様の怒りを買えば、斬ってやったんですけどね。」


「不敬だぞ、ミゲル。」


「わかってるよ、セイルース。あのお姿を見て、そんなコトにならなくて良かったと思いますよ。」


私が咎めるとミゲルは肩を竦めた。奴も分かっているのだ。馬が潰れれば、ミコ様は怒りより悲しまれるだろう事が。


「王家に混じっている不純物がやっかいだな。」


ミコ様が3匹目を愛でられている所で、団長が我々の所に来て囁いた。

ミゲルが片目を瞑る。奴はこういう気障な振る舞いを好んでするのだ。


「ミコ様に接触する前にキツク言い聞かせるよう部下に言ってあります。心配いりませんよ。」


「なんにせよ、ミコ様の目に触れぬよう処分すればそれでいい。」


「わかってますって。」


「「ミコ様を煩わす者は何者であっても斬る!」」


私は堅く誓い合う二人を他所に、ミコ様に今度愛馬を見せてあげようと思った。


せっかくミゲルの部下が王家の騎士団を大人しくさせたのに、遅れて着いた王様一行に不届き者が居たとは我ら騎士団としては痛い誤算である。大神官が流石にミコ様の前で殺傷沙汰はマズイというので我慢していたが、王の親戚とか言うジジイは神の怒りに触れて当然である。王を情けないと蹴り飛ばした王弟は自らジジイを断罪するのだとしつこく引き渡しを要求してきてうっとおしかったらしいが、もちろんそれを許す我ら騎士団ではない。

私もミコ様が望むなら、ジジイを私の剣の錆にしてやってもいいかなー位は思ったのだが、大層疲れた様子のミコ様を見た途端その考えは吹き飛んだ。私は専属騎士、ミコ様の疲れを癒す事に専念すべきなのだ。

他人と会った後のミコ様は大抵疲れてしまう。それは穢れ無きミコ様としては世俗に塗れた人間は毒であると言う事だ。

ジジイを拷問すると息巻く緑の魔女こそ剣の錆にするべきではないかと思ったが、ミコ様が馬を見たいと言うので私は早速愛馬に会わせる事にした。緑の魔女が何か言ってたかもしれないが、ミコ様以外の言葉に耳を傾ける私ではない。審判長が王家の地へ向かった今、ミコ様のお世話をするのは私だけである。


「ミコ様、乗ってみますか?」


団長はミコ様が馬に癒しを求められると分かっていたかのように待っていた。

悔しいが、こういう点は流石団長である。私も専属騎士として、ミコ様の気持ちを予測できるようにならなければいけないと反省する。


「いや、今日は止めておこう。」


ミコ様は団長の誘いを断った。当然である。ミコ様が乗るのは私の愛馬なのだからな!

もちろん団長も私も初心者であるミコ様を一人で乗せるつもりはない。一緒に、ここが重要である。一緒に乗るのだ。

ミコ様が断ったので、先に触るのは団長の凶暴馬に譲ってやった。団長の凶暴馬がやけに大人しいのが薄気味悪いが、ミコ様が怪我をする羽目になるよりはマシだと思う事にする。


「セイの馬は白馬なのか。」


ミコ様は私の愛馬をおきに召したらしい。団長の凶暴馬は黒である。凶暴馬が悔しそうに嘶いたのに対して、私の愛馬は勝ち誇ったように嘶いている。

ミコ様が驚いたような顔をしたような気配がした。ミコ様はあまり表情豊かではないが、感情を気配で察するのは専属騎士として当然である。


「馬もミコ様をお好きだと申しております。」


団長の言葉にミコ様は満足そうに頷いた。こういう時、上手い事が言えない私はどうしても出遅れてしまう。私もいずれは団長を超え、ミゲル並みに気障な事を言える男になると決意した。

そういえば、大神官がちゃっかりミコ様に馬を献上するとかほざいたが、いい馬はそんな簡単に用意できない筈だ。なんとかミコ様には先に私の愛馬に乗ってもらおう。


「いきなり大人の馬では大変でしょう。この子馬から練習されてみては?」


後日、ミゲルがそう言って誰よりも先にミコ様と相乗りするなどと、神位しか予測できなかっただろう。

次に何かあれば誰にも譲らないと私が神に誓ったのは言うまでもない。


緑の魔女とはリジーの事です。彼女は緑の髪と目なので、そう呼ばれています。なぜ魔女なのかと言うと、神をけなすと神に捧げる生贄として拷問されるからです。

騎士達は真の主である、ミコ様の為に色々な人物を殺る気満々です。大神官があらかじめ言ってなければ王様以下全員殺戮されたかもしれません。恐ろしや。

団長の馬は凶暴で噛み付いたり蹴りつけたりしますが、ミコ様にはメロメロです。馬に好かれるミコ様、両思いと知れば喜ぶのは当然ですがそれを察知するセイは何かを受信しているとしか思えません。ちなみに日本語もなぜか受信している模様。

ミゲルは子馬に乗せるまではミコ様に個人として認識されてません。

ミコ様視点の次回以降に出るかもしれませんが、ミゲルという名前を覚えてもらえるのか。ミゲルの努力次第だと思われます。


次回はミコ様視点の予定です。


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