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第十五話(作者:一日三食)

遅れて本当にごめんなさい

 砂漠の中を暫く歩く。

 いくら陽が照っていないとはいえ、砂漠は足場が悪く歩きにくい。時間がかかる。


 技術科などがある本部へは、さっきまでいたプラントから距離は離れているが、急げばそれほど時間はかからないだろう。だが、報告内容を整理しながら歩いたために足が動くペースは遅かった。


 プラントの内部で時間崩壊に巻き込まれるようになるとは……プラントの内部で直接働く人間は少ない為もあるだろうが、今まで聞いたことは無かった。

 電脳であるために精神にダイレクトに影響があったのかもしれない、自分の報告の後で精密検査でも受けさせられる可能性を考えると気が重い。


 砂漠を暫く歩いていると、比較的だが建造物の形が多く残っている場所に来た。

 先ほどまでは殆ど形が残っておらずビルであることもわかり辛かったが、それらよりも後の時代に建てられた建造物なため、強度が違うのだろう。

 見渡す範囲では、建造物はやはりビルが多いが先ほどよりも丸みを帯びていたり、造形に凝った建造物もあるようだ。


 先ほどは踝まで砂に埋まりながら歩いていたが、この辺りまでくると踵が埋まる程度になる。地盤が残っているか、もしくはこの下に周囲の建物の様に道路が残っているというわけだ。


 以前、ここを歩いた時にあいつが詳しい説明を話していたような気がするが、他の事に気を取られて聞き流していた。ここまで来るとあいつのいる本部も近い。別に気持が早やっているわけではないが早足になってしまう……おそらく足場の良さが原因だろう。


 さっきまでのプラント内部はいくつもの層や区域に分かれている。

 出入りに使われている“ビルとホテルと雑踏の区域”の他に、封鎖されて一切関わる事が出来ない区域、生活に必要な物を生み出す層などがあると聞いている。

 私が関わるのは、まだどのようになるか未確定で危険な層のプラント(深層プラントと呼んでおこう。実際に深いかどうかは知らないが体感的に)とそこに通じるコンテナが中心なので、知らないだけで他にも利用されている区域があるのかもしれない…。

 そのあたりは内部しか知らない自分よりプラントの外側で働いている人間の方が詳しいだろう。電脳世界で情報を収集し、プログラムを打たれて安定したプラントは、外側から操作出来るようになりこの崩壊した世界の中で生活する為に利用されているらしい。


 考えているうちに到着した。

 形が残っている建物が多い周りに比べると、特別な作りをしているというわけではない。周囲の建物と同じ世代の一般的な建物で、上階は崩れている部分が大半で……けれども入口と一階の部分の形だけはしっかりと残っていた。

 周りと比べれば異様な様子だった。ひび割れもなく傾いてもおらず、一階だけは昔のままの姿を残したビルがそこにあった。


 私は本部に着いた事に安堵し、まずは大きく深呼吸した。額ににじむ汗を拭きながら体についた砂を払う。

 むこうは不意を突くつもりだろうから出来る限り余裕を持った態度で対応してやろう。彼女は面白く思っていないらしく、会話の棘がまた増えるかもしれないが、それは甘んじて受とめる。


 本部ビルの一階の扉を開け、ロビーに入る……フロントの部分に別に誰かが待っているわけではない。一見すると無人のロビーに見えるだろう。だが私は知っている、ここでは彼女が―――


 突然、背後から肩に手をぶっきらぼうに置かれた。

 「お帰りなさい、待ってましたよ?」

 気配を消して不意を突いた割には抑揚のない…いまいち喜怒哀楽の掴み辛い声で話しかけられる。

 振り向くとそこには神妙な顔をした彼女が立っていた。

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