第十三話(作者:大岸都心)
――ちょっと待て
よくよく考えたらあの親父さんの事だ、そういったものはまず自分が納得するまで解析をしてから報告するだろう。そもそも、上に報告なんて事よりも技術屋の親父さんは目先の技術に頭が行くはずではないのか?
そう頭の中で思索しながら電脳から抜け出しスーツ脱ぐ。
どうにも電脳から抜け出る感覚は未だに順応できない。
何と言えばいいか無意味な虚脱感にさいなまれるのだ、これがどうにも受け付けない。
スーツを脱いで荷物を持って外に出る。
後ろから肩に手をぶっきらぼうに置かれる、振り向くとそこには利発そうな顔をした私の同僚が何やら神妙な顔立ちで立っていた。
「お帰りなさい、待ってましたよ?」
喜怒哀楽のいまいち掴み辛い声で話しかけられる。
私は何気なくただいま――と返事をした。
「オペレート中のデータ報告とスーツからの損傷から察するにこっぴどくやられたみたいですね?」
「そうなんだよ、だから許してくれないか?」
私は若干懇願するように同僚を見た。
「別に怒っていませんよ、いつもの悪癖です。」
―知っている、だからこそ聞いているのだ。
「そうだ、親父さん今日はどうしている?」
私は一刻も早く親父さんに訪ねたかった事を思い出しそう尋ねる。
「今日は技術科に引きこもっていますから無理でしょうね。」
その言葉を聞いて軽いショックに襲われたが親父さんならしょうがないと心の中で整理した。
「ま、兎にも角にも報告書と始末書です。私も自分の分があるので少しなら手伝いますから手早くすませてさっさと帰りましょう。」そう言って私のデータボードに忌々しい書類データが送信する。
「すまないな、私の所為でお前さんまで。」
流石にばつが悪くなり軽く頭を下げた。
「そう思うなら一つ貸しです。そこまで言うのでしたらこの始末書を書き終えたら私の要望に答えてもらいましょうか?」
――そう言って何やら含みのある笑みを浮かべながら少し機嫌がよさそうに彼女は笑った。