第十一話(作者:からすみそ)
夜中に更新! ……人を引きつける文章を書いてみたいです。
はき捨てるように、悪態をつきながら私は入ってきた扉に向かって駆けていく。
背後を振り返れば、そこには先ほど倒したはずの巨大な蟲がこちらに向かって襲ってきていた。
その数は一匹ではない。
十数匹、いや何十匹だろうか。兎に角、30は超えそうな数がこちらに向かって羽ばたいて来ていた。
黒い甲殻に覆われ、茶色い羽根を広げながら迫りくる蟲。
その姿は生理的嫌悪を刺激するには、十分な姿であった。
「多いな、畜生!」
腰元にぶら下げていたグレネードを、蟲たちに向かって投げつける。
一瞬の時間をあけて、グレネードから大量の煙が噴出された。
このグレネードには、プログラムである蟲たちに対する、煙幕プログラムが内蔵されているのだ。
多量の煙により、混乱に陥る蟲たち。
だが、それも一瞬の事。
すぐに煙を何処かへと消し去り、私の方へと一直線に向かってくる。
滅んだとはいえ、私たちよりも遥かに技術が進歩していた時代のプログラムである。当然ながら、一筋縄で行けるはずはなかったのだ。
「おい、応答しろ! 早く!」
未だにノイズ音しか吐き出さない、通信機の電源をオンオフ繰り返しながら、私はできる限りの速度で走りだす。だが、保護プログラムのかけ過ぎで体が思うように動かない。
現実世界で言えば、装甲を固めすぎて、総重量が重くなってしまったようなものだ。
いくら安全の為とはいえ、やりすぎた事に軽い後悔を覚える。
装甲を貫く力を持った兵器には、ただの重しでしかなくなっているのだ。
蟲と距離は縮んでいく一方。
もはや、後数秒で私の元までやってくるだろう。
全身が恐怖でひきつる。ひきつった所為で、体が思うように動かせない。
恐怖。絶望。そして、拒絶。
幾つもの感情が身体を駆け巡り、自分の命があと数瞬で消える事を悟る。それは覆し難い事実であった。
だが、
だけど、
いや、だからこそ、私は押し迫ってきた死を可能な限り、拒否し続ける!
手元にあったオモチャの銃弾を補充し、一番近い蟲に向かって発砲。それと同時に、幾つもの護身用のプロテクトを機動させていく。
脳天にオモチャから放たれたプログラムを全身に喰らい、奇声を上げながら一匹の蟲が消滅する。だが、それで止まるようなプログラム群ではない。
数秒だけ伸びた命で、私は自分の所持する攻撃用のプログラムを全て作動させる。
このような場合を見こして、私は特別に一度の動作で全ての攻撃プログラム機動を可能にさせるスーツを特別に受注していたのだ。
「ああ、畜生。帰ったらまたどやされるな」
惜しむ事のない大盤振る舞いを続けながら、私はそうつぶやく。
幾つもの攻撃・侵略用のプログラムが蟲の体を蹂躙していく。完全に機能を止める事は不可能だろうが、少しの間だけでも動きを封じる事は私たちの技術でも十分に可能なのだ。
そして、それを確認しながら、さっさとプログラムの防護壁を完成させる。
蟲の通行を妨げるだけの単純なプログラムだが、単純な故に攻略には時間がかかるのだ。
そして、体を包み込んでいる逃走以外の目的では不必要のプログラムを全て外すと、私は入ってきた扉に向かって一目散に駆け抜ける。
その甲斐あってか、後方で防護壁が破られる爆音を耳にしながらも、私は元のプラントへと戻る事が出来た。
未だに雑音しか排出しない通信機をいじりながら、乱れる息を整える。
手元に眼をやると、持って入った物はオモチャとDEBスーツ以外すべて内部に置き去りに。持ってこれた物なんて、<何か>とメモだけである。
「減給、いや下手したらクビかもしらないな」
散々な結果になった事に、私は重いため息を吐き出しながら、今日の仕事を終えたのであった。