第二話
これからは、週一のペースで投稿しようと思います。
「すみません。冒険者登録をしたいのですが……」
「あら! かわいい坊やね」
冒険者ギルドの扉を開け、受付の女性に声をかける。
髪を切り、服装も整えたおかげで、女だとは気づかれていないようだ。
「ありがとうございます」
お礼は大事よね。
「冒険者登録には銀貨一枚が必要よ。この用紙に必要事項を記入してね」
そう言って、受付の人は紙を差し出してきた。
「わかりました」
ペンを借り、記入を始める。
名前は……アル、だと少し安直かしら。
それなら、ラルにしましょう。
出身地……これは、飛ばしておく。
得意魔法……特にないわね。
職業……これも、ない。
……名前しか書けないって、どうなのかしら。
「……あの、これでいいのですか?」
不安になって、思わず聞いてしまう。
「ええ、大丈夫よ。名前だけの方も、結構いるから。」
そう言われて、少しだけ肩の力が抜けた。
どうやら、本当に問題はないらしい。
「これが、あなたの冒険者証ね。ギルドカードとも呼ばれているわ」
「ありがとうございます」
受付の人は、慣れた手つきで金属製の小さなカードを取り出した。
銅で作られており、名前とランクが刻まれている。
「ランクは、FからSまであるの。
F、E、Dは銅のカードね。Fが初心者、EとDが中級者……まあ、普通ってところかしら。
CとBは銀。ここまで来れば、ベテラン扱いね。
Aは金。もう、ベテランを超えて達人。
Sはプラチナ――化け物よ。一人で国を滅ぼせるくらいの力がある、なんて話もあるわ」
……銀くらいを目指そうかしら。
難しそうだけれど、そこそこ稼げそうだし。
「銅のカードから、銀のカードになるまで、どれくらい時間がかかりますか?」
これは、本当に大事なことだ。
家族に会いに帰ったら、そのまま旅をやめさせられそうだもの。
ベテランくらいなら、さすがに心配も減るでしょう。
「早い人だと、一か月くらいかしら?
大体は、一年から二年くらいね。
まあ、“ベテラン”って言っても実力の話だから……人によるわ」
……?
一年か二年でベテランって……五年くらいはかかるものだと思っていたわ。
「そうなんですね。ありがとうございます。
ランクは、どうやって上がるんですか?」
これが、一番の疑問。
「依頼を受けてもらえれば大丈夫よ。
依頼や魔物にもランクが付いているから、自分のランクに合ったものを選んでね。
あ、Fランクは、薬草採取か町の手伝いくらいしか受けられないわ」
受付の人は、続ける。
「それで、十分な依頼をこなしたとギルドが判断したら、ランクアップできるの。
ひいきは一切なしよ。ただ――
何件で上がれるか、みたいな具体的な数字は教えられないの。
依頼ごとに、ええと……ポイントみたいなものがあるのよ」
……ちょっと長いけど、大体は理解できた。
「ありがとうございます」
「どういたしまして! あ、名前だけ言っておくわね。リティよ」
そう言って、受付の人――リティさんは、にこやかに手を振ってくれた。
ギルドの中を見渡すと、思っていた以上に人が多い。
鎧姿の人、ローブを着た人……どう見ても、年上の冒険者ばかりだ。
……場違いかしら、なんて一瞬思ったけれど。
もう私は、辺境伯家の娘でも、王子の婚約者でもない。
今の私は――
「ラル」という名の、新米冒険者。
今日は宿を探さないと。
明日から、冒険者として頑張るんだ。
そう心に決めて、私はギルドを後にした。
◈◈◈◈◈◈◈
「すみません。部屋、空いていますか?」
街を歩いていて、なんとなく目に留まった宿に入る。
入った瞬間の雰囲気が気に入って、ここにしようと決めた。
「あいてるよ。どのくらい泊まる?」
声をかけてきたのは、この宿の女将さんだろうか。
気取らない口調で、どこかフレンドリー。
初対面なのに、あまり緊張しない人だと感じた。
「とりあえず、一か月ほど泊まりたいです」
「了解。先払いでお願いね。だいたい……金貨五枚だな」
「わかりました」
金貨五枚。
安いのか、高いのかは分からないけれど……まあいいか。
そう思いながら、女将さんにお金を渡す。
「うん、確かに。じゃあ、部屋まで案内するよ」
女将さんは鍵を取り出し、「ついてきな」と言うように手を動かした。
「ありがとうございます」
「こちらこそ……それにしても、お前さん、どっかの貴族かい?」
不意に投げかけられた言葉に、思わず足が止まりそうになる。
「え?」
おかしいところなんて、ないはずなのに。
「言葉遣いだよ。丁寧すぎる」
「……なるほど」
「そこはさ、『分かった』とかでいいんだよ」
……言葉遣い。
完全に盲点だったわね。
これは、意識して直さないと。
「ほら、ここが部屋だよ」
「……ありがとう」
「ほらほら、また出た。敬語はやめたほうがいいね」
「わかった」
「よし。じゃ!」
軽い調子でそう言い残し、女将さんは去っていった。
……言葉遣い、か。
まあ、なんとかなるでしょう。たぶん。
部屋に入って荷物を整理し、ベッドに寝転がる。
――おやすみ。
いつもなら、マルティナがそばにいる。
でも、今は誰もいない。
ほんの少しの寂しさを胸に感じながら、
私は静かに目を閉じた。
銅貨→銀貨→金貨→白金貨
って感じです。100銅貨で、銀貨、というように、百倍で、変わります。
あと、アルシェリアの心の中の口調が変わってるのは、意図的です。
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