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第6話 第2回FMP

 【今年度、第2回フレッシュミックスパーティー開催のお知らせ】


 Dカードに通知されたイベント案内に合わせて、今日も今日とてダンジョン前のターミナルにある憩いの円環にやって来たイルナ。


 新入生向けのパーティー結成を促進するこのイベントに来るのは今回で二度目。午前9時ごろにこの場に現れたイルナは、さっそく賑わいはじめた初顔の集いの中で、見つからない誰かのことを探していた──


「あ、いたじゃん」


「あの黒髪くんと一緒にいた子じゃん」


 すると突然、イルナは見知らぬ二人の女子たちに横から声をかけられた。


「え? 黒髪……マカミくんのこと?」


「うんうん。てかフツーにかっこよくね? ってウチらんなかで最近ホットなだーわいなんよ。マカミくんってんの? なにそれ、まじマカミじゃん、それしかありえないくんじゃん、あはは」


 派手な豹柄のローブを纏う金髪女子は、一枚のブロマイドを取り出してイルナに見せた。それは「マカミくん」の顔が映るものであり、ここ、憩いの円環でマカミと喧嘩屋のミィナが対決していた時に、場を取り仕切るお嬢様らの集団によってファンアイテムとして急遽販売されていた限定ものだ。


 笑う豹柄ローブの女子はつづけて語る。


「だからFMPで、ウチらのパーティーに入らん? あの喧嘩バトルまじ熱かったし、彼女ちゃんのことクールに連れ去ってくのも女子的に憧れの痺れるっしょ。あ、変な噂とかもここであんとき嘘だって聞いたし、てかウチら元々そんなん気にせんし、そそ、隣のキイロに元カレとられてだるいときもすぐ新しい彼氏つくって解決したし」


 なんと語ったのは豹柄ローブの女子によるイルナの、自分たちのパーティーへの勧誘であった。


「ちな、新しいソレももう、マイナの元カレで今はウチの。マイナさんの彼氏工場、ハズレなくて助かる」


「「ぅーー、サイクルってんねぇ~~」」


 女子二人しか知らない変なマジナイをいきなり唱えだす。隣に並んだ二人は、左右の人差し指同士を絡めるように回転させ、最後に手のひら同士を鏡合わせのように鳴らし合わせた。


 ちなみに黄色っぽくない缶バッジを沢山付けたローブを纏う灰色髪の方の名が【キイロ】で、黄色っぽい豹柄ローブの女子の名が【マイナ】であるらしい。


「さ、さいくるってん、ね?? ぱ、パーティー? 変な噂って? あのー、それはわたしの……へ、かの──」


 押し寄せる奇怪な芸と難解な情報の羅列に、イルナがまだ見目派手目な二人の意図を読み解けずに困惑していると──


「そそ、ウチらが立てた彼氏持ち限定パーティー【サイクルガールズ】っていうんよ。フツーにパーティー組むより彼氏ーズにも助けてもらえて一石二鳥のいずれ最強じゃねってかんじ。飯と恋バナもはかどるし」


「か、かかか、彼氏!? もちっ!?」


 彼氏持ち限定パーティー【サイクルガールズ】。耳を疑う情報の提示に、イルナは大変驚いた。


 そんなパーティーは聞いたことがない。彼氏持ちなどという条件は満たしていないのに、あらぬ勘違いをマイナとキイロの女子二人から向けられてしまい、イルナの表情は驚きから知らず紅潮していく。


「アレ、その反応ちがうん? それ、ワンチャン熱くね?」


「わ、わわわ、わんちゃわちゃ!?」


「てか、なにそのうぶうぶな反応カワイイんだけど。ん、缶バッジあげる」


 このところ身に覚えのない悪評が流れていたが、他の生徒たちからも声をかけてもらえるようになったイルナ。しかし、いま寄って来たギャルのような見た目の生徒たちは、イルナにとって得体の知れない生態をしていた。


 キイロがローブを覆うほどにじゃらじゃら付けていた缶バッジのひとつを外し、イルナのローブにそれを勝手に付けだした。マイナはイルナの持っていたDカードを勝手にいじりだす。


 新入生のパーティー結成を促すイベント、FMPフレッシュミックスパーティーで、イルナが初顔のギャルたち二人にとても至近距離で絡まれてしまっている。


 突如差し込まれた「彼氏持ち」という言葉に、動転し否定もままならないまま。イルナはDカードをなかなか返してくれないマイナと、ローブに付ける缶バッジを吟味するキイロ、それぞれに勝手をするふたりのことを止められず、マイペースなギャルたちの勢いに呑まれていると────


「見つけましたわ! あなたですねイルナ・ハクト!」


 また、新手がこの混沌とする催しの場へと現れた。見つけられたのはイルナ・ハクト、見つけたのはいつぞやのアイスクリーム屋で会った豊かな金髪のお嬢様。


 そしてすぐさま、お嬢様のいま指差した方向にむかい、統率の取れた黄色いローブの集団が石段を駆け降り、ターゲットのイルナの元へとぐいぐいと近付いてきた。


「ふぇ? あ、ちょっと!? あわわッ!??」


 強引に黄色いローブの集団に体も尻も浮くほどに担がれ、イルナはあっという間に連れ去られていく。


 さっきまでいじっていた白髪の少女が遠くへと吹かれていく、そんな嵐のような出来事にギャルたちはぽかんとした表情を浮かべ、やがて手を振り、ついでに手を仏のように合わせて、見送った。


 お嬢様らの集団は、目的のターゲットを無事に回収し終え、FMPの真っ最中であったざわめく憩いの円環を離れていった────。

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