表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

本当は怖い『かさ地蔵』~闇金オジゾウさん~

作者: 和no名

昔話『かさ地蔵』をブラック風味で再構成したパロディ作品です。

老後の生活費2000万円をトイチで(複利)5年滞納=4.2垓円

超頑張って月100万ずつ返したとしても返済には3.5兆年かかるものとして計算

むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんがおりました。

ふたりはとても貧しくて、お正月に買うお餅も買えないほどでした。



「すまんなばあさん、お餅も買えないほどひもじい想いをさせて」


「お餅がなければ、おはぎを作ればいいじゃない」(ポジティブ)


「わし、ばあさんのそういうとこに惚れて結婚した」


「ふふ」




おじいさんは、おばあさんの気持ちを嬉しく思いましたが、やはり申し訳なさや不甲斐なさが募り、



「よし!いっちょ気合い入れて笠作る!それを売ってお餅を買おう!」



おじいさんは一念発起して傘を作り、年の瀬迫る街へと売りに出かけました。

でもぜんぜん売れません。



「oh...笠を無くしても誰も貸さんぞ…」



おじいさんはちょっと恨みの感情を持ちつつ、帰路に付きました。

帰路の途中でふと目についたお地蔵さんたちが数体。



「暖冬と言っても少しは雪が降るかもしれない…。このまま雪にさらされるのは気の毒じゃ。

 売れ残りの傘で申し訳ないが使ってくだされ」



おじいさんはお地蔵さんにひとつひとつ傘を被せてあげました。

一つ足りなかったので自分の分も被せてあげました。

それでもまだ一つ足りません。



「oh...足りない…。わしのほっかむりで我慢してくだされ」



おじいさんは自分の被っていたほっかむりをことさら丁寧に被せてあげると、自宅を目指しました。





(この報いは、きっと必ず…)




そんな声が聞こえたような気もしたし、聞こえなかったような気もしました。





「…というわけなんで傘は売れず、売れ残った笠も全部お地蔵さんに被せてきてしまった。すまん」


「私、おじいさんのそういうとこに惚れて結婚した」


「…怒ってない?」


「怒ってないですよ。さあ、残ったもので夕食にして、もう寝ましょうか」




おばあさんは、ほんとうはちょっとだけ怒ってました。その夜のことです。




『ドズッ…ドズッ…』




「な、なんじゃ!?外で物音が!」


「強盗かもしれませんよ!」


「ばあさんはこれを持て!わしはこれを持つ!」




おじいさんはナタを、おばあさんは丸太を持って強盗の襲来に備えました。




『ドズッ…ドズッ…』



その音は、家の前まで来てしばらく留まると



『ドズッ…ドズッ…』



去っていくようで音がだんだん遠のくのがわかりました。



「行ったようじゃな…」


「こんなボロ屋に金目の物は無いと思ったんですかねぇ…」


「ちょっと表に出てみよう」


「気を付けてくださいよ」




おじいさんとおばあさんが恐々と表に出てみると…



「! これは…!」


「まあ…!」



そこには米俵や野菜や魚の干物やお餅、そしてたくさんの小判が軒先に積んでありました。

遠くには去っていくお地蔵さんたちが見えました。



「きっとおじいさんの優しさが報われたんですよ!」


「そ、そうじゃろうか」


「これで生涯安泰ですねぇ!」


「じゃな!ありがたく頂戴することにするか!」


小判を留めている帯には「JIZO FINANCE」の印字があるのがやや気になりましたが、

おじいさんとおばあさんは優雅に暮らしましたとさ。めでたしめでたし。











その5年後…。







「もし、傘をくれたおじいさんはいらっしゃいますかい?」


「そうですが…どちらさまで?」





大柄で、上下黒スーツにサングラスを掛けたいかついお兄さんがやってきました。

どこかで見覚えのあるほっかむりをかぶっています。




「!! それは…あのときのほっかむり…!」


「私、5年前に食料や小判を”貸した”地蔵です。返してもらいに参りやした」


「あ、あれはくれたものじゃろっ?」


「あげたとは一言も言ってませんぜ?」


「た、確かに…。でも食料は食べきったし、小判もほぼ全部使い切ってしまったぞい!」


「いけませんねぇ。借りたものは返す。常識ですぜ」


「そんな無茶な!」


「利息はトイチ…5年間の滞納でこの額になりやす(ニッコリ)」







『 4.2垓円』







「ポカーン」


「生きてる間はもちろん、地獄でも返済してもらいましょうかね…時間はそう…無限にある…」









おじいさんは、笠を被せたことをほんのちょっとだけ後悔しました。










………何度転生しても。






(完)

黒百合の花言葉は『復讐』『呪い』とかです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ