本当は怖い『かさ地蔵』~闇金オジゾウさん~
昔話『かさ地蔵』をブラック風味で再構成したパロディ作品です。
老後の生活費2000万円をトイチで(複利)5年滞納=4.2垓円
超頑張って月100万ずつ返したとしても返済には3.5兆年かかるものとして計算
むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんがおりました。
ふたりはとても貧しくて、お正月に買うお餅も買えないほどでした。
「すまんなばあさん、お餅も買えないほどひもじい想いをさせて」
「お餅がなければ、おはぎを作ればいいじゃない」(ポジティブ)
「わし、ばあさんのそういうとこに惚れて結婚した」
「ふふ」
おじいさんは、おばあさんの気持ちを嬉しく思いましたが、やはり申し訳なさや不甲斐なさが募り、
「よし!いっちょ気合い入れて笠作る!それを売ってお餅を買おう!」
おじいさんは一念発起して傘を作り、年の瀬迫る街へと売りに出かけました。
でもぜんぜん売れません。
「oh...笠を無くしても誰も貸さんぞ…」
おじいさんはちょっと恨みの感情を持ちつつ、帰路に付きました。
帰路の途中でふと目についたお地蔵さんたちが数体。
「暖冬と言っても少しは雪が降るかもしれない…。このまま雪にさらされるのは気の毒じゃ。
売れ残りの傘で申し訳ないが使ってくだされ」
おじいさんはお地蔵さんにひとつひとつ傘を被せてあげました。
一つ足りなかったので自分の分も被せてあげました。
それでもまだ一つ足りません。
「oh...足りない…。わしのほっかむりで我慢してくだされ」
おじいさんは自分の被っていたほっかむりをことさら丁寧に被せてあげると、自宅を目指しました。
(この報いは、きっと必ず…)
そんな声が聞こえたような気もしたし、聞こえなかったような気もしました。
「…というわけなんで傘は売れず、売れ残った笠も全部お地蔵さんに被せてきてしまった。すまん」
「私、おじいさんのそういうとこに惚れて結婚した」
「…怒ってない?」
「怒ってないですよ。さあ、残ったもので夕食にして、もう寝ましょうか」
おばあさんは、ほんとうはちょっとだけ怒ってました。その夜のことです。
『ドズッ…ドズッ…』
「な、なんじゃ!?外で物音が!」
「強盗かもしれませんよ!」
「ばあさんはこれを持て!わしはこれを持つ!」
おじいさんはナタを、おばあさんは丸太を持って強盗の襲来に備えました。
『ドズッ…ドズッ…』
その音は、家の前まで来てしばらく留まると
『ドズッ…ドズッ…』
去っていくようで音がだんだん遠のくのがわかりました。
「行ったようじゃな…」
「こんなボロ屋に金目の物は無いと思ったんですかねぇ…」
「ちょっと表に出てみよう」
「気を付けてくださいよ」
おじいさんとおばあさんが恐々と表に出てみると…
「! これは…!」
「まあ…!」
そこには米俵や野菜や魚の干物やお餅、そしてたくさんの小判が軒先に積んでありました。
遠くには去っていくお地蔵さんたちが見えました。
「きっとおじいさんの優しさが報われたんですよ!」
「そ、そうじゃろうか」
「これで生涯安泰ですねぇ!」
「じゃな!ありがたく頂戴することにするか!」
小判を留めている帯には「JIZO FINANCE」の印字があるのがやや気になりましたが、
おじいさんとおばあさんは優雅に暮らしましたとさ。めでたしめでたし。
その5年後…。
「もし、傘をくれたおじいさんはいらっしゃいますかい?」
「そうですが…どちらさまで?」
大柄で、上下黒スーツにサングラスを掛けたいかついお兄さんがやってきました。
どこかで見覚えのあるほっかむりをかぶっています。
「!! それは…あのときのほっかむり…!」
「私、5年前に食料や小判を”貸した”地蔵です。返してもらいに参りやした」
「あ、あれはくれたものじゃろっ?」
「あげたとは一言も言ってませんぜ?」
「た、確かに…。でも食料は食べきったし、小判もほぼ全部使い切ってしまったぞい!」
「いけませんねぇ。借りたものは返す。常識ですぜ」
「そんな無茶な!」
「利息はトイチ…5年間の滞納でこの額になりやす(ニッコリ)」
『 4.2垓円』
「ポカーン」
「生きてる間はもちろん、地獄でも返済してもらいましょうかね…時間はそう…無限にある…」
おじいさんは、笠を被せたことをほんのちょっとだけ後悔しました。
………何度転生しても。
(完)
黒百合の花言葉は『復讐』『呪い』とかです