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くノ一、涙坐

〈夏帽を被るお掃除夫の貴方 涙次〉



【ⅰ】


 チャンバラがなくば、カンテラのレゾン・デートルがないではないか。さう仰る向きもあらう。だがこのシリーズでは、無闇に人を【魔】を殺さないカンテラを追ふ。それもまた眞實なのである。カンテラだつて無益な殺生は避ける。それは当然だ。

 澄江さんを見て慾しい。彼女はいつも、危ない橋を渡るじろさんを危ぶんでゐる。平凡(たひら・おほし)なんかの口車に乘つたのだつて、じろさんの身を案じての事だ。



【ⅱ】


 で、平凡の娘、涙坐。彼女はカンテラの世界に惹かれつゝも、彼女にとつて大事な者たちを奪つた(と彼女の目には映つた。因みに彼女の目は、こゝではクリアーだとは云へない)、カンテラの許を去つたのであつた。利用されたゞけ、とは云へ、恋人の黑瀬、子供の頃から友として馴染んだ白虎、そして父・凡。彼らを彼女の許から遠ざけたのは、誰あらうカンテラ、なのである。これは彼女の妄想ではなく、事實だつた。



【ⅲ】


 と、こゝで涙坐が【魔】に身を賣つたのでは余りに陳腐である。彼女は復讐は諦めてゐた。カンテラ一味の一枚岩振りには、彼女は感心さへした。

 だが【魔】は確かに彼女に目を着けてゐたのでだ。それも、魔界の盟主・候補生としてゞある。突飛過ぎる? いやいや、人間界に免疫を持つ彼女は、次代の魔界盟主像の或る意味、スタンダードだつた...



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈年金の話主治醫がしてをるが我はバイクに乘れりやそれで良し 平手みき〉



【ⅳ】


 何しろ、彼女の住むアパートの大家からして、【魔】に染まつてゐる。こんこん、とドアをノックしたかと思ふと、こんな話をする。

「カンテラの魔手から店子を護る為、アパートを改築します」これには涙坐、困り果てゝしまつた。大家の云ふ通り大家・宅に世話(改築の間)になつたのでは、何を吹き込まれるか分かつたもんぢやない。


 彼女は部屋を飛び出、神田川の流れをぢつと眺めてゐた。と、其処を白虎、タロウの散歩で、じろさんが通り掛かる。白虎は流石に涙坐の事が良く分かるのだ、がおつ、と哭きじろさんの顔を見る。



【ⅴ】


 じろさん、涙坐に事情を訊いた。斯く斯くしかじかで、と涙坐、正直に話をした。じろさん「それは、捨て置けないなあ」

 で、彼女は、カンテラ事務所に当分厄介になる、と決まつた。辞表まで出したカンテラ事務所(魔界へのスパイとして雇用されてゐたのである)。だが皆優しい。彼女の心の目が開いた。



【ⅵ】


「わたしが惡かつたのです。カンテラさんには助けて貰つたのに、それを理解してゐなかつた」‐「もう魔界に戻るのは懲りごりなんだね?」‐「はい」


 彼女の再雇用が決まつた。そしてカンテラ、獨りアパート大家を斬つて來た。のつけから冒頭の言葉に叛するが、これは行きがゝり上止むを得ない。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈蝸牛干乾びて死ぬそれも夏 涙次〉



 さて、カンテラ一味、本來のフォーメイションに戻つた。涙坐がどんなくノ一振りを魅せるかは、また今後の作者の課題としやう。そんぢやまた。アデュー!!


 

 尚、前回のカンテラと涙坐との絡みは、前シリーズの第197話に詳しい、ご參照あれ。


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