【プロットタイプ】お人形さん、綺麗だよね
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
上手い回答が出来ない人間なので、感想欄閉じてます。
これは読者様の問題ではなく、私の問題。
詳しく知りたい方は代表作の『作品と作者の注意点』に書いてあります。
注意事項2
人をラブドールに例えるの、瑠衣にとっては最大の賛美。
人に愛される為に作られた完全なる造形。
其れがこれだから。
色香四号。ラブドール。人に対して恋人として作られた人形。だからこそ、人とよく似た、非常に美しい顔形をしている。当たり前だ。その様に作られたものなのだから。
――色香四号の様だ。
これは俺にとっての最大の賛称である。が、妹はその言葉が受け入れられないらしく、大抵顔を顰めて俺の発言を咎める。
――性具に例えられて喜ぶ女性は居ないと思う。女性に対して使っちゃ駄目だよ。失礼だから。
性具に例える事への嫌悪感もあるだろう。だがその根底にあるのは、人形に対する恐怖が見え隠れしていた。
俺の家族は妹を除いて人形愛好家である。だが其れは特殊な事例。世間一般に受け入れられる趣味かと言われれば決してそんな事はない。俺達が外れ者で、妹が正しい。だから高校時代、創作の為とは言え、人形を持ち込む事を躊躇っていた。
悪戯で落書きや破壊をされたら両親に顔向け出来ないから。俺達と同じ様にとても大切にしていたから。流石にそんなリスクを犯せなかった。
そんな考えを持ちながら、創作部の見学に来た。
――あれは?
俺の視線の先には少女が持ち運ぶ様なサイズの人形があった。華やかなロリータを纏った其れはどうやらフランス人形の様だ。
――うちは創作部だからね。何か創作をしていれば活動と見なされるんだ。あっちは人形とか、その服を作るチーム。君、物書き専門って言ってたけど、興味あるの?
其れを聞いてから俺は本入部の紙を書き、翌日には幸江一号を持ち寄った。
此処なら安全に幸江一号を任せられるだろう。間違っても体に落書きをされたり、手荒な真似をされる事は無いだろう。そう思い、幸江一号の体を片手に創作をしていた。
――ねぇ、このマネキンちゃん、貴方の所有物?
書いている最中にそんな声を掛けられた。ただの冷やかしやら、からかいの一部だろうと無視をする事にした。
――聞こえてる? 高校生でマネキン買うの、大変じゃない?
執拗いな。お前には関係ないだろ。
――……でもマネキンって洋服着せてなんぼじゃない? 何か着せてあげなきゃ可哀想。
此処で漸く顔を上げた。目の前には夕陽に照らされて赤銅に輝く長髪の女がいた。そいつはそっと幸江一号の顔に触れ、愛撫でもする様に指先を滑らせた。
その哀れみの瞳と指遣いから、此奴は俺と同胞だと感じた。
――俺は男である故に、女の事は何一つ分からない。其れを補う為のマネキンだ。分かったら黙ってろ。
――へぇ、君、お人形さん好きなんだねぇ!! お人形さん、やっぱり綺麗だよね。私は両親の事もあって、よく知らないけど!!
こんな会話があったことを覚えている。大した会話では無かったのかも知れない。けれども数少ない印象に残った会話であった。
「あ、色香四号だ」
帰宅するなりリビングの床に臀を付けるラブドールを見て、同居人は足早に近寄って来た。其れから顔を近付けて、色香四号の様態を深く観察する。まるで骨董品の鑑定でも行う様に、丁重かつ丁寧に。
暫く観察を行って満足したのか、距離を置くとくるりと此方を振り向いた。
「そうそうそう、帰ってくる時さぁ、色気があってお肌綺麗なお姉さんとすれ違ったんよ。……その人には、褒め言葉にならないかも知れないけど、愛される為の人形、色香四号ばりに綺麗だったよ」
――こんなのが良いなんて気持ち悪い!!
幼子故の鮮烈な拒絶だった。
――性具に例えられて喜ぶ女性なんていないよ。
大人の気遣いが混ざった言い方だった。
別にお前が無理して好きになる必要なんかない。お前の言うことは間違ってはいない。だがその言葉に、少なからず傷付いたのだろう。他でもない、俺と同じ日に生まれた妹に言われた事で。
――お人形さん、やっぱり綺麗だよね。
裏表のない無邪気な賞賛だった。
――愛される為の人形、色香四号ばりに綺麗だったよ。
人形に対する敬意を感じる言い方だった。
まさかお前に傷を癒されるとはな。
「色香四号は今日も綺麗だね」
どっかで書いたんですけど、瑠衣の妹、麗衣は人形に恐怖心を持ってます。
※【プロットタイプ】夜に這う でしたね。
これ、幼稚園に通ってる時からそう。『気持ち悪い!!』と叫んだのもその時の事。
でも血を分けた一番身近な半身に、全否定されたのは、流石の瑠衣でも傷になってそう。
他の人間相手に言われたところで
『このマネキンやたら喋るなー』程度なんで。
ただそれで幸江一号が傷付けられたら、自分にも責任あるから最初は躊躇ってました。
瑠衣は賢い子なので、自分が変人、外れ者である事は分かってると思います。
だからこれから先、家族以外に理解されることは無い。そう思っていた時に『綺麗だね』と言ってくれたのが鏡花。
妹に全否定されてちょっと負い目を感じていた趣味に、光を与えたのが鏡花です。
だからその事に深く感謝してそう。
ラブドール家に置いてあっても怒らないしね。普通に乗ってくれる狂人だからね。
それはそれとして瑠衣は人形大好きです。
中でもラブドールは性行為を目的に、人に好まれそう完全なる造形、と考えているので、『当たり前に美しい』から『賛美さえ蛇足になる』という感想を持ってます。
だから『色香四号』に称える時は『この人、本当に綺麗だね』という意味。
まぁコミュ障だから言葉が足りず、麗衣に咎められているんですが。