9章
今日も会社に行く。
あれから1か月が経っていた。さすがに対応が遅すぎる。部長に直接聞いてみるしかない。
会社に入ってすぐに部長のデスクに向かった。
「部長、アレってどうなってますか」
すると部長はこうつぶやいた。
「アレってなんだ」
その瞬間、私の頭の中が真っ白になった。何を言っているんだ。
半ば連れ出すように部長を会議室に入れる。
「どういうことですか⁉」
あくまで小声で叫ぶと部長がこう言った。
「鷹橋くんのことは許してはならない」
その当然の言葉にうんうんと頷く。
「しかし彼は上の人のお気に入りなのだ」
その瞬間、彼のことを思い出した。
『先輩や上層部にはいい顔をしている』
彼がそのような態度をとっていたのはこのためだったのか。
「しかしそれだけならまだ部長の力で…」
「俺は所詮部長だ。上には逆らえないよ」
そんなことを言われたら何も言えない。しかし、言わないとならない。
「本当に…それだけですか……?」
部長の顔が火にあぶられた蝋のように歪んだ。
「どういう…ことかな?」
「そういえば鷹橋はしいちゃんのこともいじめていますよ」
「…なんでいま出雲さんのことが話題に出るのかな?
「さぁ。わからないですね」
本当は復讐班の録音に密会の会話が残っていただけだが。
「なんだ。気づいていたか。そうさ。僕は出雲椎の異父兄妹さ」
やっぱりか。なにかただならぬ関係だとは思っていたが、兄妹だったのか。
「俺のことはどうなってもいい。でも、あの子だけは守って…あげたいんだ…」
部長の気持ちはとてもわかる。だから。
「ならなおさら一緒に戦いましょ。私は鷹橋と、部長は上と」
ゆっくりと頷いた部長の顔は涙を浮かべた、優しい顔をしていた。




