還暦勇者? 異世界転移する 4
「まあ、その特殊事象については分かりましたが」
私は更に質問を続けた。
「この部屋の中と外の状況について教えて下さい」
「はい。ですが、その前にもう少しお二人の現状に
ついて説明させて下さい」
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我々の現状については、概ね次の通りだった。
1.例の特殊事象により我々は常に行動を共にする
必要が生じたため咲良くんの転生は不可能に
なり、女神達は転移の方法を模索した。
本来、死体や魂は転移させることが出来ない。
唯一の方法は咲良くんの魂を誰かに憑依させ
転移させることだが、問題は転移には女神達の
上位神である創造神の転移認定が必要だった。
2.一方私は、転移認定こそ受けてはいるものの
咲良くんと同一行動の条件があるため単独の
転移が出来なかった。
そこで、私に咲良くんの魂を憑依させて転移
することになった。
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「以上の様に、咲良さんは信晴さんの(心の)中に
常に存在していて念話で会話が出来るのです」
(ん?待てよ)ここで一つの矛盾が生じる。
「ですが、この部屋で咲良くんは実体化している、
これは何故ですか?」
「それは、この部屋がシェルターになっているから
なのです。この世界は、人族・亜人族が各々に国を
造り栄えていますが、一方では魔族の勢力も大きく
危険な世界なのです」
「ですから、お二方が安心できるシェルターを作り
部屋の中のみ咲良さんを実体化出来る様にしました」
それを聞いた咲良くんは、大泣きしながら画面に向い
「女神ざばぁ、あじがどうごらいまずぅ」と何度も、
何度も意味不明な言葉で礼を言っていた。
「では、私が部屋にいる時のみ咲良くんは実体化して
外に出ると私の意識化に入るのですね」と念押し確認
すると女神は大きく頷き、更に付け加えた。
「そうです、そして信晴さんが入る全ての個室が咲良
さんの部屋になるのでトイレも例外ではありません」
「他の人が入って来たらどうなりますか」
「その場合は、元々の部屋に戻るので大丈夫ですよ」
(部屋の施錠は必須だな、でも鍵付きの部屋なんて
この世界にあるのかな?)
「部屋については分かりました。次に外の状況・・・
つまり、この世界について教えて下さい」
いよいよ、私の質問は佳境に入った。